表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/128

小さな反省2

 でもアマリアは、ため息だけで終わらせておいた。


 散々、責めた。


 向こうからも散々、謝られた。


 償ってくれるとも言われた。


 レオンに悪気なんてなかったのだし、これ以上怒るのも大人げない。


 だからもうやめよう、とアマリアは気持ちを切り替えることにした。


 完全に駄目になってしまったわけではないから、不幸中の幸いだわ。


 元々、あまりうじうじするような性格でもないのだ。


 アマリアはそう自分に言い聞かせ、ブラシを置いた。


 髪も綺麗に整ったし、もう寝ようと思う。


 メイドがいる間にもう大体の寝支度は整っていたので、あとは手洗いを済ませたりするだけだ。


 十分も経たないうちにベッドに潜り込んだ。


 今日はなんだか疲れてしまった、と、ふーっと息が出た。


 灯かりを消して暗くなった部屋の中、ベッドについた天蓋のレースを見上げる。


 色々、波乱万丈だったけれど、と思って、ひとつだけ後悔したことがあった。


 被害を被ったのは確かだ。


 怒っても当然だった。


 でも……あんなふうに睨みつける必要はなかったのではないか。


 今更ながらそんなふうに思えてくる。


 睨みつけた先のフレイディの瞳を思い出した。


 美しい金色のそれは、おろおろしていた。


 突然のことに戸惑い、また悪いことをしたと思っている気持ちが溢れていた。


 とても素直な色をしていたといえる。


 ……言い方と態度が乱暴だったのは、謝らないといけないわ。


 アマリアはちょっと胸が痛むのを感じて、そう思った。


 フレイディの素直さを、なんとなく羨ましく思ってしまったのだ。


 レオンの仕出かした悪戯は突然で、予想外のことだっただろうに、即座に自分の非を認めて謝るのだ。


 伯爵家のご令息なのに、素直で優しい方なのね。


 そうも思った。


 身分ある人間は傲慢な性格になってもおかしくないものだ。


 それがフレイディにはまったくなく、アマリアはそこを好ましく感じたといえる。


 とにかく、明日、改めてレノスブル家から使いが来ることになっていた。


 フレイディ本人は流石に来ないだろうが、なにかしら『償い』を決めて、伝えに来てくれるはずだ。


 なにをしてくれるのかしら。


 新しい絵の具や画材を贈ってくれるとか?


 それとも、もっと立派なアトリエを建ててくれるとかかもしれないわ。


 それはちょっと嬉しいかも……。


 そんなことを考えている間に、アマリアは眠りに落ちていった。


 一日の疲れもあって、夢も見ずに、安らかな眠りの一夜だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ