素敵なお呼ばれ1
「いらっしゃい、アマリア嬢。歓迎するよ」
数日後、馬車から降りたアマリアを笑顔で迎えたのはフレイディだった。
御付きに手を取られて馬車の階段を降りたアマリアに近付いてきて、紳士的な仕草で胸に手を当て、軽く頭を下げた。
「ありがとうございます、レノスブル様。お招きありがとうございます」
アマリアも、今日ばかりは慎ましく、スカートを持ち上げて礼をした。
今日はお呼ばれなので、一番上等なドレスを着てきた。
すみれのような可憐な薄紫色のドレスは、瞳の色と同じなだけによく似合っているはずだ。
今日はレノスブル領、レノスブル家の宮廷へお招きを受けていた。
アマリアの暮らすエヴァーレ家の建物だって豪華だ。
『屋敷』と呼べるクオリティだが、なにしろレノスブル家は更に上の爵位を持つ身分。
経済力など桁違いに上だろう。
家も『屋敷』では勿体ないほどの豪華さで、アマリアは「王様の暮らす宮殿のようだわ」と内心思ったくらいだ。
そんなレノスブル家のある領は、エヴァーレ領からは割合距離があり、馬車でも四時間近くかかる。
午前中に出てきたが、もう正午はとっくに過ぎてしまっていた。
しかしそれも仕方がない。
レノスブル領は伯爵が治めている領地だけあって、広大だ。
アマリアが目の前の建物に感心しているうちに、フレイディはそちらを指し示した。
「さぁ、行こう。長旅で疲れただろう。まずはお茶でも飲んでおくれ」
アマリアにとって魅力的なお誘いだった。
馬車にだいぶ長く揺られてきて多少くたびれている。
喉も渇いたし、お腹も空いた。
ランチにはもう遅いけれど、お茶菓子くらいならあるかもしれない。
少しお腹の足しになるだろう。
「はい、ではお言葉に甘えまして」
アマリアはにこっと笑って、フレイディについていった。
「いらっしゃいませ」
「いらっしゃいませ」
宮廷に入ると、使用人がずらりと並んでアマリアを出迎えた。
身分の高い家ではこうあるもの、と知識としては知っていたものの、実際に自分がこんな歓迎を受けるのは初めてだ。
アマリアはだいぶ戸惑ってしまった。
「お、お邪魔いたします!」
なんと答えたものかしばし悩んでしまい、やっと言った声は少々高くなってしまった。
慣れていないのが全開で、気恥ずかしくなってしまう。
そのアマリアを見て、フレイディはどこか楽しそうに笑った。
「気を張らなくていいよ。今日はきみが賓客だ。なにしろこちらから食事にお招きしたのだからね」
笑われたのにまた恥ずかしくなったものの、そう言ってもらえるのは有難い。
それにフレイディは身分が下の存在、しかも女子に対してもとても丁寧だ。
そう扱ってもらえるのが単純に嬉しいと思う。
「勿体ないことでございます」
心から言い、使用人たちが並ぶ間を歩いて奥へ連れられる。




