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転生しても居候  作者: ソワル
第一章
9/17

9話 「何か」

魔法か。俺のイメージでは、魔女がケタケタ笑いながら、ほうきに乗ってあちらこちらを飛んでいる。時々かぼちゃを持っている魔女も居るようだ。完全にハロウィンです、はい。


 間違えた。もうちょっとファンタジーチックなイメージをしてみよう。


 二人の少年が向かい合っている。緊張が最大まで高まった瞬間、彼らは同時に詠唱を唱える!一人の炎、そしてもう一人の氷魔法がぶつかり合い、凄まじい爆発を起こす。それに乗じて姿をくらました一人の背後からの雷魔法!だが、それを予測していたかのように避けてみせるもう一人。彼らの戦いがクライマックスを迎えた時、不意に周囲は暗闇に飲まれる。そして現れたるは古の魔王。彼らの運命や、いかに!?次週、最終話。


 うん、ちょっと白熱しすぎた。纏めると、バトルしてみたいとかっこいいくらいだろうか?小学生みたいな感想だが、これは俺の素直な気持ちでもある。

 もっと素直に俺の気持ちを纏めると、「俺も魔法使いたい」だ。


 魔法を使ってみたい。

 これは誰でも思ってきたことじゃないだろうか?人間は誰でも、便利で不思議な能力を使いたいと思ったことはあるだろう。しかも、魔法だ。人の願いを叶えることができる魔法だ。試したくないなんて、誰が思ったりするだろうか。いや、ない。


 善は急げだ。思い立ったら吉日とも言う。とりあえずさっき見た魔法を使う瞬間の記憶を脳内再生してみる。だが何も分からない。ただ詠唱、魔法陣、発動という手順がありのまま見えるだけだ。もしかして、詠唱は必須だったりするのだろうか。とすれば、大問題だ。避けられぬ、に加えて動かせぬ障害になる。


 何故なら俺は喋れない。

 やめてくれ。お願いだ、どうか俺に魔法を使わせてください。まだ解決方法があれば、やる気が出たのに、どうにもならない理由で俺を阻むのは止めてくれ!


 いや、俺は絶対に魔法を使う方法を見つけてみせよう。俺と全国の某眼鏡をかけた魔法使いファンの夢を叶えるのだ。

 見つかるまで記憶を何十回でも見てやる。




 -----------------




 何百回か見た。やばい、何故だ。何度見ても、不思議現象が起きていることしか分からない。


 はぁ、ちょっと休憩しよう。

 既に完全に慣れてしまった「何か」の操作練習をする。今では、全体の8割程度なら同時に動かせるようになった。

 先ずは、お椀一杯分くらいから複雑な形を作り出す。ここから動かす量を段々増やしていく。そう、俺は経験を得て、学んだからな。無茶は禁物だ。

 ミニサイズの東京タワーやエッフェル塔、五重塔なんかも生成してみる。結構緻密な操作が必要になる。これでも上達してきているのだ。ただ、作るものが塔しか思い浮かばないのは、俺の想像力が乏しいのだろうか?


 なので、違うものも試してみる。思い浮かべるは、さっきの魔法陣だ。あれなら幾何学模様が多く重なっていたので、かなり複雑だった。良い練習になるはずだ。


 んん?なんだこれ?


 急に難易度が跳ね上がった。これまで素直に俺の言うことを聞いていた、「何か」が急に反抗し始める。少しずつ順番に作っても、端から崩れていくのだ。形が保てない。


 どうやら、魔法陣全体を同時に作らねばならないらしい。だが、難しい問題ならウェルカムだ。こういう難問ほど、解けた時嬉しい。昔から、応用問題が好きだった俺です。


 よし、行くぞ。

 記憶の完全再現で、頭の中に魔法陣の全体像を思い浮かべる。それをトレースしながら、魔法陣を描き始める。真ん中から作るのでもなく、端から作るのでもなく、全て同時に作り出す。

 かなりの集中力が必要だ。だが、こんなもの「何か」を全て動かした時に比べれば、屁の河童だ。


 大きな球の形をしていた「何か」が動く。それは俺のイメージ通りに、瞬時に魔法陣をかたどる。


 おぉ、できた。


 透明な「何か」が作り出す魔法陣は、ガラス細工でできた芸術品のようだ。外で作れたら、光を反射してキラキラと煌めくだろう。自分で言うのもなんだが、綺麗だ。 売ったら一部の人が高値で買ってくれそうな程。


 その幻想的で、まさに異世界という雰囲気に目を奪われる。そうだ、この形にも何か魔法を使えるヒントがあるかもしれない。


 ん?


 観察していると、不意に魔法陣が光った。ただそれだけだ。何か起こるわけでも、魔法が発動するわけでもなかった。そして、陽炎のように消えていく。

 これはどういうことだろう?もしかして結構正解に近づいていたりするのか?


 もしや?


 俺は、もう一度の記憶の魔法発動場面を見る。先ほどと違い、今度は「何か」の 動きに注意する。すると、魔法陣が「何か」で作られているのが分かった。しかも発動する前に、その魔法陣に再度、「何か」を流し込んでいる。


 やはりそうか、魔法のカギは「何か」だったのか。

 そうすると、「何か」にまつわる疑問が全て氷解する。


 ざっくり言ってしまうと、「何か」= 魔力、だろう。なんと最初の奇想天外な予想が正解だったとは。


 この世界では、なんと呼ばれているか見当もつかないが、魔力かマナか、はたまたゲームチックにMPか、恐らくどれかだろう。万能元素とか呼ばれているかもしれない。

 とりあえず魔力と呼ぶことにしよう。


 これは、朗報だ。紛れもないビッグニュースだ。何故なら俺は既に魔力をかなりスイスイ動かせる。


 と、いうことはだ。

 すごく簡単に魔法も使えちゃうんじゃないだろうか?


 未だ詠唱という問題は残っている。だが、俺の中でワクワクした気持ちが全ての疑問と心配を押しのけてしまった。


 詠唱は、あくまで補助的なもので、実は努力すれば無くても魔法は使える!

 と、希望的観測をしておこう。


 では使ってみようと、言いたいところだが、またもや問題が発生する。第二の人生は問題だらけだ。


 魔法って体内で発動していいのだろうか?忘れがちかもしれないが、俺の動かす魔力は「いうあ」の体が内包しているものだ。


 さっき見た魔法は、攻撃じゃなく、何かを綺麗にするためのものなので、恐らく大丈夫かもしれないが、あまり危険を冒したくない。ぶっちゃければ、さっき発動したような気もするけどそこはそれ。


 あと、たとえ発動できたとしても、はたから見れば、発動者は俺じゃなく「いうあ」だ。異世界の基準がどれくらいなのかは分からないが、それでも生後一ヶ月かそこらの赤子が、魔法を使えるのはおかしい気がする。気がするじゃなく、確実におかしい。


 ちゃんと見つからないように、時間を考えて使わないといけない。派手という程でもないが、あまり明かりがないこの世界では、あの光は目立つだろうしな。


 とりあえず、夜中になるまで待とう。動き始めるのは、それからでいい。

 ものすごく待ち遠しいな。


 そういえば、最初から魔力の感知をしておけば何百回も記憶を見なくてよかったような…

 俺の努力を返してください。


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