↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生しても居候  作者: ソワル
第一章
7/17

7話 反省しない男

 音は波だ。空気を波のように動かすことで、音というものは伝わる。

 詳しく言うと他にも要素は色々あるんだろうが、これぐらい理解しておけばいいだろう。


 空気か。そういえば「何か」も空気とほぼ同じもののような気がするんだよな。どちらも空間を満たしているのだし。


 そう考えたら次にやるべきことが見えた気がする。「何か」で音波を拾えないだろうか。


 今度は音波について詳しく調べなきゃならないな。忙しいが、それが妙に嬉しい。


 調べた結果、音波には三つの要素があるのが分かった。ていうか俺の記憶は本当に雑学だらけだ。しかもそれらを使う機会があるのだから、人生は何があるか分かったものじゃない。


 …そういや俺、今一体何生なんだろう?

 確実に人生ではないな。


 必要な知識は、高校に習うもので間に合ったので、今回はそこまで必要なかった。


 とにかくだ。音は、高さ、強さ、そして音色という要素で構成されている。


 音波の振動数が多くなれば、音は高くなり、振幅が大きくなれば、音は大きくなる。ここまでは基本だ。中学で習った。


 そして、一番重要で一番理解しにくいのが音色だ。

 音の高さが同じで、音の強さが同じでも、音色が違えば音が全く違うものになる。例えば、トランペットとピアノで同じ強さのドを出すと、聞かなくても分かるくらい異なる音になる。恐らく、発音も音色によって変わる筈だ。そうだと思いたい。


 ここで、大きな問題が発生する。どれだけ音波をかき集めたところで、今の俺では音として変換出来ないのだ。

 ややこしいが、要するに俺は音をただの記号としてしか見れないということだ。

 どの形の音波が、どの音を表すのかを一から確認していかなければならない。


 舌の形で音を記憶し、それを音波と一致させていく作業。正直言えば、あの記憶力と記憶の完全再現がなければ、やろうとも思わない作戦だ。


 でも成功させてみせる。手に入れられる情報が、視覚からだけでは外の様子がほぼ分からないし、それにそろそろ会話が恋しくなってきた。本当に静かすぎるのだ。これまでうるさいと思っていた町の喧騒でさえも今は恋しい。

 こちらから話しかけられないかもしれないけれど、受動的でもいいから言葉を聞きたい。


 よし、そうと決まれば早速実験だ。

 先ずは、宿主の口の中に「何か」を忍び込ませる。彼女は今の所、基本的に母音しか出せないから最初の実験としては、最適だ。

 よし、出来た。


 次にこれに合わせて出てくる音波を捕まえる。

 ここでまた問題が発生する。

 音波を見つけるには、空気の振動を探し当てねばならない。これが至難の技だった。

 そもそも空気の振動っていうのがよく分からない。目に見えないものだし。


 これか?あっ、あれか!

 …違った


 と、悪戦苦闘している間にいつの間にか夜になっていた。ほぼ一日試しているのに、全然要領を掴めない。


 諦めかけたその時、俺の灰色の脳細胞がひらめいた!

 空気の振動だけじゃなくて、「何か」そのものも音によって振動するんじゃないか、と。


 思い立ったらすぐ行動!今度は音波を探すのではなく、「何か」を完全に静止させ、勝手に動き始めるのを待ってみる。


 少し時間が経った。動きは、ない。

 相変わらず、脳内に『あーーっ』という声が響くだけだ。どうやら小鳥が、窓の外に留まったみたいだ。変な鳥だ。水色と黒のストライプで彩られた羽毛で覆われている。

 小さな手が、そいつに向かって、伸ばされていた。


 不意に、小鳥がくちばしを開いた。すると、窓辺にある「何か」に小さな振動を感じる。

 ん?もしかして鳴いているのか?

 俺は、意識全てをそこに動員する。音波だと、思われる空気の振動を見逃さない為に。


 段々と、感じる振動が増えてきた。意識を集中させると、ついさっきまで感じることの出来なかった空気の動きが見えてくる。


 おぉ、この世はこれほどまでの情報に満ち溢れていたのですか!


 喜びで口調が変になってしまったが、やっと音波の形を捉えることが出来た。喉の形の方は、部屋の外だったので確認出来なかったが、鳥の喉の形を見ても、何も理解できやしないだろう。


 そう、俺が歓喜の声を(脳内で)漏らしているうちにも、感じる振動は段々多くなっていく。しかもかなり複雑な形も増えてきた。


 あれ?多すぎやしないだろうか。いつの間にか、意識を埋め尽くす勢いで感知できる音波が増えている。


『あばばばばばばばば!』


 やばい!一気に大量の情報が頭に流れ込む。それらは止まる素振りを見せず、俺の意識を蝕みはじめた。そして、それは鋭い痛みへと変わる。

 なんで、こんな量の音波があるんだ。


 流れ込む情報の中に、目を引くものあった。俺からは、見えない筈の景色。

 それは、赤ちゃんの顔だ。


 何故彼女の顔が見えるのか?


 そうだ、失念していた。簡単なことだ、空気を伝わる波は音波だけじゃない。


 遂に、堪えきれない痛みが俺の意識を襲う。


 こんなこと、前もあったな。

 俺は薄れゆく意識の中で、そんなことを思った。




 ------------




 ココハWhere?ワタシハWho?


 そんなバカなことを考えながら、意識が覚醒する。やけにデジャブを感じる。気のせいだと思いたかったが、今の俺の完璧な記憶力はそれを許さない。


 どうやら前回と同じく、無茶をしすぎたようだ。無茶をしている自覚は無かったんだが。まぁ、これからは無茶しないように注意しよう。


 三度目の正直と言うし、次回はないだろう。

 無茶なんてもうしない。


 二度あることは、三度ある?なにそれ、美味しいの?


 大きな犠牲を払ったが、見返りを得ることは出来た。

 少し情報を整理しよう。


 先ず、音波だ。色々な雑音もあるが、一応小鳥の鳴き声と赤ちゃんの声の音波の形は、記憶できた。痛みで余裕がなかった時でも、ちゃんと感じたことは記憶できている。おまけに、喉形も完璧に記憶されている。本当に便利だな、これ。


 今の所、「あ」と「う」の音くらいしか分からないが、十分すぎる収穫だ。


 次に、その他諸々の〇〇波だな。決して、エロい仙人が野菜の惑星から来た人に伝授したものではない。

 唯一理解出来たのが、光波だ。その他の空気中の波は、全て存在は知っているが理解出来ないものばかりだ。γ線とか紫外線とかだろう。


 つまり空気を伝っている波全てをキャッチした訳だ。頭がパンクして、意識を失うのも無理はない。


 さっき見た赤ちゃんの顔を思い浮かべる。髪は母親譲りなんだろう、彼女と同じく光を反射しないブラックホールのような色をしている。

 ただ、目の色が違った。明け方の空のような深い藍色をしている。

 まだ一歳にも満たないのに、知性の光が星のように瞬いている。将来は、絶対母親に似て、綺麗になるだろう。


 やっと自分で外の世界を見れるようになった。


 これはものすごく便利だ。光がある場所だったら、360度どこでも見渡せることになる。それこそ、普通は鏡が無いと見えない自分の顔だって直接見ることが出来る。

 音波と違って、ちゃんと映像として感受できたのは、視覚だけは持っていたことが原因なのかもしれない。


 問題は、あの大量の情報流入をどうやって制御するかだな。本当は、音波だけを見つけるはずだったのだ。光波の発見はラッキーだったが、他の波は正直言って邪魔なだけだ。ラジオやWi-Fiなんて、この世界には無さそうだしな。


 ここら辺は、追々考えないといけないな。

 ただ実験は一応成功したし、一日の収穫としては、十分すぎる。

 今日は、もう休もう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。