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乙女ゲームのバッドエンド絵師、ゲーム世界に転生する 〜バッドエンドしかない世界で、運命を捨てる〜  作者: SUN3
最終章 いじめ、三連続

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第七十五話 魔法実験中に爆死

5時30分と17時の2回更新しています。

よろしくお願いします。


本日も読んでいただきありがとうございます。

もし楽しんでいただけましたら、ブックマークや下の★から評価をいただけると励みになります。




春――。


魔法学院の寮。


夜の帳が降り、廊下には静かな灯りだけが残っていた。


その中で――


一人の少女が、濡れたまま帰ってきた。



扉を開けた瞬間。


リゼットは足を止めた。


「……なぜ、アルベルト様がここに?」


部屋の中央。


椅子に腰掛けていたのは――


アルベルト・ラウレンツだった。


軽く手を挙げる。


「やあ」


いつも通りの軽い調子。


だが、その目は違った。


「僕、来年入学予定だったからさ」


肩をすくめる。


「知らなかったんだよ」


一拍。


「君が“ゲームの筋書き”をなぞってるなんて」


リゼットの体が強張る。


アルベルトは続けた。


「カイゼルから急ぎの手紙が来てね」


視線をまっすぐ向ける。


「リゼット――君、転生者なの?」


沈黙。


やがて、リゼットは小さく頷いた。


「……ええ」


そして、少しだけ驚いたように言う。


「アルベルト様も?」


アルベルトは笑った。


「そうだよ」


軽く言う。


「小さい頃からの知り合いなのにね」


少しだけ肩をすくめる。


「お互い、知らなかった」


そして――


表情が変わる。


「王太子やカイゼルも転生者だ」


さらりと言う。


「他にも、数人いる」


その言葉は、重かった。


「だから」


ゆっくりと告げる。


「ゲームの筋書きをなぞるのは、やめるんだ」


リゼットは、俯いた。


「……はい」


それ以上、何も言えなかった。


アルベルトは立ち上がる。


「じゃあね」


それだけ言って、部屋を出ていった。



静寂。


リゼットは、しばらく動けなかった。


やがて――


扉がノックされる。


「入るわよ」


クラリッサとルーカスが入ってきた。


クラリッサは腕を組み、にやりと笑う。


「国一番の豪商の後継が、直々に訪問?」


首を傾げる。


「やっぱり“主人公パワー”かしら?」


ルーカスが静かに制した。


「あまり冷やかすな」


視線をリゼットに向ける。


「何と言われた?」


リゼットは、ぽつりと答えた。


「……筋書きをなぞるのはやめろ、って」


ルーカスは眉をひそめた。


「……なるほど。忠告か。


 それより」


視線が下がる。


「お前、濡れてないか?」


リゼットは少しだけ苦笑した。


「池に引き摺り込まれたの」


ルーカスの顔色が変わる。


「池に!?」


一歩引く。


「……もういい」


短く言う。


「僕は外に出る。着替えろ」


そう言って、部屋を出ていった。



残されたクラリッサが、静かに近づく。


「誰にやられたの?」


リゼットは首を振る。


「分からない」


小さく言う。


「気づいたら、引きずり込まれてた」


そして――


ぽつりと呟いた。


「……死ぬかと思った」


クラリッサは一瞬だけ黙る。


だがすぐに、表情を戻した。


「で?」


冷静に言う。


「全員試したの?


 ゲームの筋書き」


リゼットは頷いた。


「フェリクス様以外は」


力なく笑う。


「全部、だめだったわ」


クラリッサはため息をつく。


「じゃあ、そこよ」


きっぱりと言う。


「中立派の雄。レーヴェン侯爵家」


一歩踏み込む。


「フェリクスは外す理由がない」


リゼットは顔を歪めた。


「……もうやめたい」


その言葉に。


クラリッサの目が、わずかに冷えた。


「だめよ」


静かな声。


「声だけでもかけなさい」


一拍。


「でないと――お父様たちに報告するわ」


リゼットの肩が震える。


「……分かった」


絞り出すように言った。


その瞬間――


「くしゅんっ」


小さなくしゃみ。


クラリッサはふっと笑った。


「お大事に」


軽く手を振る。


「風邪、ひかないようにね」



――その夜。


リゼットは、熱を出した。


三日間。


ベッドから起き上がれなかった。



数日後。


学院の中庭。


フェリクスとディルクが、並んで立っていた。


「剣道は両手で持つだろ?」


フェリクスが言う。


「この世界は片手剣が主流だ」


首を傾げる。


「不思議だと思わないか?」


ディルクは笑った。


「簡単だ」


肩を軽く叩く。


「日本の鎧は肩当てが盾代わりになる」


剣を持つ手を示す。


「こっちは盾を持つ。だから片手になる」


フェリクスは納得したように頷いた。


そのとき――


一人の少女が近づいてきた。


ピンクの髪。


リゼットだった。


「……あの」


少し緊張した声。


「フェリクス様」


頭を下げる。


「お会いできて光栄です」


フェリクスが振り向く。


「ああ」


軽く言う。


「噂のピンク髪の子か」


首を傾げる。


「名前は?」


ディルクが一歩前に出る。


「フェリクス」


低く言う。


だが、リゼットは答えた。


「リゼット・ノルドハーフェンです」


フェリクスは、じっと見つめた。


「……君も転生者?」


リゼットは一瞬固まる。


「え?」


フェリクスは肩をすくめた。


「違うのか?」


その言葉に。


リゼットは、慌てて言った。


「違いません!」


強く言う。


「転生者です」


その瞬間――


空気が少しだけ変わった。


フェリクスは、興味を示した。


「へえ」


口元が緩む。


「どこ出身?」


そこから――


会話は続いた。


前世の話。


仕事の話。


文化の違い。


二人は、自然と盛り上がる。


だが――


周囲は、静かだった。


中立派の中心。


レーヴェン侯爵家。


そこに近づく“異分子”。


誰もが、黙って見ていた。



その日の午後。


魔法制御装置の授業。


講師の声が響く。


「これは魔力暴走を止める装置だ」


一人一つ。


配られる小さな器具。


「手順通りに操作しなさい」


リゼットは、深呼吸した。


(大丈夫)


ボタンに触れる。


指で押す。


その瞬間――


閃光。


爆発。


「――っ!!」


熱。


痛み。


視界が揺れる。


「痛い……!」


手が焼ける。


顔が焼ける。


「痛い……痛い……!」


意識が遠のく。



目を覚ましたとき。


そこは、保健室だった。


包帯が、巻かれている。


手も。


顔も。


ぐるぐるに。


痛み止めを飲まされる。


だが――


効かない。


「……っ……」


歯を食いしばる。


涙が滲む。



しばらくして――


扉が開いた。


「……ピンク髪」


聞いたことのある声。


ロゼッタだった。


その後ろに、セリア。


5時30分と17時の2回更新しています。

よろしくお願いします。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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