表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乙女ゲームのバッドエンド絵師、ゲーム世界に転生する 〜バッドエンドしかない世界で、運命を捨てる〜  作者: SUN3
最終章 いじめ、三連続

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/96

第七十四話 池での溺死

5時30分と17時の2回更新しています。

よろしくお願いします。


本日も読んでいただきありがとうございます。

もし楽しんでいただけましたら、ブックマークや下の★から評価をいただけると励みになります。




春――。


魔法学院。


入学からしばらくが過ぎ、日常はゆっくりと形を整え始めていた。


だがその中で――


一人だけ、流れに乗れていない少女がいた。



教室。


ざわめきの中で、突然その声は響いた。


「『――勉強ばかりで、世間を知らないなんて』」


ピンク色の髪の少女。


リゼットが、まっすぐにカイゼルを見て言った。


「『真の政治家になれっこないわ!』」


空気が止まる。


カイゼルが、間の抜けた声を出した。


「……は?」


ロゼッタの目が細くなる。


「あなた」


ゆっくりと立ち上がる。


「ゲームを知っているわね」


一歩踏み出す。


「転生者?」


そのまま、カイゼルの腕に絡みつく。


「だとしても――」


はっきりと言い切った。


「カイゼルは渡さないわ」


カイゼルは完全に固まっていた。


「……ゲームのセリフなのか?」


ぽつりと呟く。


「びっくりした……」


ロゼッタは顔を寄せる。


「カイゼル」


小さく、しかし強く。


「絶対、私以外見ちゃダメ」


カイゼルの顔が一気に赤くなる。


「な、何を言ってるんだ!」


そのままロゼッタの手を引き、


半ば逃げるように教室を出ていった。



残された空気。


セリアが、ゆっくりとリゼットに視線を向ける。


「……そこのピンク色の髪の人」


静かな声。


「ゲームの追従なんて、しない方がいいですよ」


一歩近づく。


「“ライトオブクラウン”は」


わずかに目を細める。


「バッドエンドばかりのゲームです」


リゼットの瞳が揺れた。


「……え?」


セリアは淡々と続ける。


「知らないんですか?」


その一言で――


リゼットの顔色が変わる。


「……バッドエンド、ばかり?」


次の瞬間。


リゼットは、弾かれたように教室を飛び出した。



廊下を走りながら。


リゼットの頭の中は、ぐるぐると回っていた。


(そんなの……聞いてない)


同人誌。


綺麗な絵。


幸せそうな結末。


そればかりを集めていた。


(……本家)


やっていない。


見てもいない。


実況動画すら――


(……見てない。知らない)


足が止まりそうになる。


だが、止まれない。



その日。


リゼットは、動いた。



中庭。


最初に声をかけたのは――


エヴァルトだった。


「『――本当の愛って、分かりますか?』」


震える声を抑えながら言う。


「『教科書にも、載っていません』」


エヴァルトが、ゆっくりと振り向いた。


「……興味深い」


その目は、まるで研究対象を見るようだった。


次の瞬間。


赤い手袋の手が、リゼットの腕を掴む。


「え?」


魔力が――抜かれる。


「何処のスパイだ?」


低い声。


「答えろ」


握る力が強まる。


「でなければ――魔力の枯渇で死ぬぞ」


リゼットの背筋が凍る。


「っ……!」


必死に腕を振り払う。


手袋がズレた。


隙間ができた。


そのまま、逃げた。


走りながら、理解する。


(……やばい)


息が乱れる。


(エヴァルト、やばい)


ゲームと違う。


いや――


ゲーム通りなのかもしれない。



次に声をかけたのは――


ディルクだった。


「『あなたの献身的な忠誠は、皆が認めています』」


必死に言葉を繋ぐ。


「『でも、あなた個人の気持ちは――』」


ディルクは、途中で言葉を切った。


「……君か」


冷静な声。


「カイゼルにちょっかいをかけたピンク髪」


リゼットの体が固まる。


「ロゼッタが泣いていたぞ」


その一言が、重く落ちる。


「……え?」


ディルクはため息をついた。


「今は時期が悪い」


静かに言う。


「国王派、女王派、中立派――全部が不安定だ」


視線を外す。


「引っ掻き回すのはやめてくれ」


それだけ言って、去っていった。


(……違う)


リゼットの中で、何かが崩れていく。


(こんなの……違う)



最後に。


リゼットは、ゲームに出てこない男を選んだ。


レオニード。


「……あの」


声が震える。


「お友達に、なりたくて……」


レオニードは一瞬だけ考えた。


「難しいな」


あっさりと言う。


「港湾伯爵は国王派だろう?」


軽く肩をすくめる。


「まあ、気にはかけておくよ」


それだけだった。


だが――


周囲の視線が突き刺さる。


女王派の取り巻きたち。


露骨な敵意。


リゼットは、逃げた。



気がつけば――


裏庭。


池のそば。


(……どうすればいいの)


その瞬間。


水面が、揺れた。


次の瞬間――


水柱が立ち上がる。


「え?」


足が、引かれる。


「きゃっ――!」


水の中へ。



その様子を。


セリアとロゼッタは、見ていた。


ゲームのイジメで池で溺死があったので、


見張っていたのだ。


「……来た」


ロゼッタが呟く。


「今、助けるわ」


バングルを外す。


水が、逆流する。


池の流れが歪む。


リゼットの体が、水面へと引き上げられる。



セリアがすぐに駆け寄る。


光が、包む。


「吐いてください」


胸を押す。


「っ……げほっ!」


水を吐き出す。


呼吸が戻る。


「……大丈夫ですか」


リゼットは、震えながら頷いた。


「……だいじょうぶ……」


ロゼッタが見下ろす。


「ゲームに詳しくなさそうね」


冷静な声だった。


「再現はやめた方がいいわよ」


セリアも続ける。


「すぐ、バッドエンドになります」


リゼットは、必死に言った。


「……私は」


震える声。


「誰かを攻略しないといけないの」


ロゼッタは、少しだけ目を細めた。


「そう」


一歩引く。


「私は忠告したわ」


そして、背を向ける。


「もう助けないから」


歩き出す。


「行きましょう、セリア」


セリアは、一瞬だけリゼットを見る。


「……はい」


そのまま、後を追った。



一人残されたリゼット。


ずぶ濡れのまま。


その場に崩れ落ちる。


「……っ……」


声にならない。


涙だけが、溢れてくる。


(帰れない)


(どうすればいいの)


春の空は、変わらず明るかった。



5時30分と17時の2回更新しています。

よろしくお願いします。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

もし楽しんでいただけましたら、ブックマークや評価をいただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
検索用タグ 乙女ゲーム、悪役令嬢、バッドエンド、ハッピーエンド、異世界転生、魔法、貴族社会、主人公最弱スタート、孤児主人公、バッドエンド回避、男爵令嬢、宰相の息子、転生者、コメディ、会話多め、転生者同盟 異世界転生 乙女ゲーム 悪役令嬢 学園 魔法 群像劇 政治 貴族社会 中央集権 政略結婚 バッドエンド シリアス ダーク 転生者複数 女主人公 人間ドラマ 成長
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ