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乙女ゲームのバッドエンド絵師、ゲーム世界に転生する 〜バッドエンドしかない世界で、運命を捨てる〜  作者: SUN3
不慮の寵姫

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第六十九話 不慮の寵姫

5時30分と17時の2回更新しています。

よろしくお願いします。


本日も読んでいただきありがとうございます。

もし楽しんでいただけましたら、ブックマークや下の★から評価をいただけると励みになります。




初冬のある日。


王城――ダンスホール。


高い天井と、壁一面の鏡。


豪奢な空間には、柔らかな光が反射し、貴族たちの華やかな衣装を一層引き立てていた。


ここは――


クラウディアの婚約お披露目会が開かれた場所。


そして今日。


王太子レオンハルト・アルヴェリアと、アデリーナ・ヴァルツェン公爵令嬢の婚約発表式が行われるはずだった。


だが――


「……遅いわね」


ロゼッタが小さく呟く。


隣に立つセリアは、周囲を見回した。


「気にしすぎではありませんか?」


少し笑う。


「進行が遅れているだけですよ」


だが、ロゼッタは首を傾げたままだった。


「でも……」


そのとき。


一人の侍従が、足早に近づいてきた。


「エーデル男爵家のロゼッタ様ですね」


ロゼッタは頷く。


「はい」


侍従はすぐに続けた。


「侍女のセリアを、お貸しいただけませんか」


「え?」


ロゼッタは驚く。


「何があったのですか?」


侍従は声を落とした。


「王家専属侍女アンネが、呼んでおります」


その一言で、空気が変わる。


セリアが一歩前に出た。


「……ロゼッタお嬢様、行きたいです」


ロゼッタは一瞬迷ったが、すぐに頷いた。


「分かりました」


そして、はっきりと言う。


「私も行きます」


その後ろで、爺やも静かに一礼した。


「私もお供いたします」



王城――ダンスホール控え室。


そこは先ほどまでの華やかさとは打って変わって、慌ただしい空間だった。


人が行き交い、低い声が飛び交う。


緊張と焦りが混ざった空気。


「セリア!」


アンネがこちらに気づき、駆け寄ってきた。


「よく来てくれたわ」


セリアはすぐに頭を下げる。


「どうされましたか」


その答えは、すぐに目に入った。


椅子に座るアデリーナ。


顔色は悪く、脂汗を浮かべている。


それでも、必死に姿勢を保っていた。


セリアはアデリーナの専用バッドエンドを思い出した、


『不慮の寵姫』エンド、


女王に事故死させられる。青白い顔が想起させる。


「……転んでしまって」


アデリーナが短く言う。


アンネが続けた。


「階段から突き落とされたのよ」


その言葉に、ロゼッタの息が止まる。


「足の骨は確実に折れている」


アンネの声は冷静だった。


「頭も打っているはず……本当は動かしたくない」


アデリーナは、静かに首を振った。


「今日は……大事にしたくないの」


息を整えながら言う。


「無事に婚約発表式を行いたいの」


その瞳は、まっすぐだった。


「……なんとかならない?」


ロゼッタが一歩前に出る。


「そのお気持ち……分かります」


小さく、しかしはっきりと言った。


「ここで失敗したと見られるのは、つらいですもの」


アンネがセリアを見る。


「セリア」


その声には、迷いがなかった。


「お願い」


一歩近づく。


「あなたの全力の光魔法を使って」


そして、低く付け加えた。


「頭は後から症状が出ることもある……本当はそれが怖いの」


セリアは、深く頷いた。


「……分かりました」


そして、静かに言う。


「皆さん、目を閉じてください」


一瞬、空気が止まる。


そして――


光が弾けた。



まばゆい閃光が、部屋を満たす。


温かく、優しい光。


それはただの魔法ではない。


「……終わりました」


セリアが息を整えながら言った。


アデリーナがゆっくりと足を動かす。


「……痛く、ない?」


驚きが、そのまま声になった。


立ち上がる。


「すごい……」


思わず笑みがこぼれる。


「全然、痛くないわ」


侍女がすぐに動く。


「お化粧を直しましょう」


「靴も替えます」


部屋の空気が一気に動き出す。


止まっていた時間が、再び流れ始めた。



やがて――


ダンスホール。


拍手の中。


レオンハルトとアデリーナが並んで立っていた。


何事もなかったかのように。


堂々と。


美しく。


その姿は、誰の目にも完璧だった。



少し離れた場所。


ロゼッタとセリアは、その光景を見つめていた。


「……よかった」


ロゼッタが小さく言う。


セリアも頷いた。


「はい」


二人の視線の先。


レオンハルトとアデリーナは、穏やかに見つめ合っている。


幸せそうに。


まるで、何も問題などなかったかのように。


セリアは、ほんの一瞬だけ目を伏せた。


(突き落とされた……)


その事実は、消えていない。


それでも――


「……無事でよかったです」


そう言うしかなかった。


ロゼッタも、静かに頷く。


「ええ」


冬の気配が近づく中。


ダンスホールは、祝福の空気に包まれていた。


けれどその裏で――


見えない何かは、確かに動き続けていた。

5時30分と17時の2回更新しています。

よろしくお願いします。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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