表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乙女ゲームのバッドエンド絵師、ゲーム世界に転生する 〜バッドエンドしかない世界で、運命を捨てる〜  作者: SUN3
不慮の寵姫

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

83/96

第六十八話 王女の悲しいお茶会

5時30分と17時の2回更新しています。

よろしくお願いします。


本日も読んでいただきありがとうございます。

もし楽しんでいただけましたら、ブックマークや下の★から評価をいただけると励みになります。




王城――王女の応接間。


庭に面した大きな窓から、秋の日差しがやわらかく差し込んでいた。


淡い金色の光が、磨かれた床や上質な調度を静かに照らしている。


今日は王女のお茶会である。



部屋の一角。


ソファに向かい合って座っているのは、宰相夫人ヘレーネ・グラディウスと、エーデル男爵夫人マルガレーテ・エーデルだった。


ヘレーネが、静かに紅茶のカップを置く。


「クラウディアから手紙が来たわ」


マルガレーテはすぐに顔を上げた。


「まあ」


ヘレーネは小さく微笑む。


「元気で、辺境伯家の方々から可愛がられていると書いてあったの」


マルガレーテもほっとしたように頷いた。


「よろしかったですね」


だが、ヘレーネの微笑みは、どこか影を落としていた。


「……そうね」


小さく息を吐く。


「でも、あの子は弱音を吐かない子だから」


視線を少し落とす。


「どこまで本当のことを書いているのか、分からなくて困ってしまうの」


マルガレーテはしばらく黙っていたが、やがて穏やかに言った。


「クラウディア様は優秀ですもの」


静かな声だった。


「どこへ行かれても、きっときちんとお役目を果たされるのでしょう」


ヘレーネはかすかに笑った。


「そうね」


その笑みには誇りと、諦めと、寂しさが混じっていた。


「自慢の長女だったのよ」


少しだけ窓の外を見る。


「優秀すぎたのね」


その声は、ほとんど独り言のようだった。



同じ部屋の、少し離れた別のソファ。


そこには、王女エリザベート、宰相家次女マルティナ、ロゼッタ、そしてヴァルツェン侯爵令嬢アデリーナが座っていた。


最初に口を開いたのは、エリザベートだった。


「……クラウディアの代わりに、私が嫁ぐべきでした」


その一言に、マルティナがすぐに顔を上げた。


「言わないでください」


声は小さいが、強かった。


「お姉様の覚悟を、否定しないで」


エリザベートは少しだけ目を伏せた。


「……ごめんなさい」


ロゼッタは言葉を探してから、口を開いた。


「辺境伯の息子は……」


少し考えながら続ける。


「冷静で現実主義な上に、剣豪だと噂です」


ロゼッタは、マルティナの方を見た。


「きっと、クラウディアお姉さまと、うまくやります」


マルティナはすぐには答えなかった。


それでも、やがて小さく頷く。


「ええ」


自分に言い聞かせるように言った。


「クラウディアお姉様なら、きっとうまくやるわ」


アデリーナがふっと微笑む。


その笑みは、少しだけ冷たかった。


「女の子って、つまらないものですね」


三人が彼女を見る。


アデリーナは紅茶を見つめたまま言った。


「結婚すら、自由にできないのですもの」


エリザベートも苦く笑った。


「そうね」


少し肩を落とす。


「私も、誰に嫁ぐのかしら」


ロゼッタは素直に答えた。


「国王様が、きっと良い方を探してくださいます」


アデリーナはゆっくりと頷いた。


「私は、王太子殿下と内定しました」


その言葉に、場の空気が少し変わる。


アデリーナはまっすぐ前を見た。


「いい家庭を作れるよう、努力いたします」


それは、諦めにも似た決意だった。


少女たちの会話は、明るいお茶会の場には似つかわしくない、未来へのぼんやりとした不安に彩られていた。



一方その頃。


王城の侍女控え室。


セリアは、久しぶりに師匠と再会していた。


今はもう修道服ではなく、王家の侍女としての装いを身につけている。


だからもう、シスターではない。


アンネだった。


アンネはセリアを見るなり、柔らかく笑った。


「セリア、元気だった?」


セリアの顔もほころぶ。


「お久しぶりです。元気です」


アンネは懐かしそうに目を細めた。


「背が少し伸びたかしら」


セリアは少し照れた。


「そうでしょうか」


アンネは笑ったが、すぐに少し真面目な顔になる。


「王女様ね」


声を潜める。


「本気で、クラウディア様と代わるつもりだったのよ」


セリアは目を瞬かせた。


「本当に?」


「ええ」


アンネは頷く。


「でも、無理よね」


セリアは少し考えてから言った。


「王家の婚姻は切り札ですから」


小さく息を吐く。


「クラウディア様より、もっと難しい家に嫁ぐことになるのでは?」


アンネは肩をすくめた。


「そうね」


少し遠くを見る。


「カルメリア海商共和国か、グランヴァルト王国か」


そして、ぽつりと呟く。


「……私も国を越えるのかしら」


セリアは驚いて顔を上げた。


「師匠は、貴重な光魔法の使い手です」


少し強い口調になる。


「国から出されることは、ないでしょう?」


アンネは苦笑した。


「分からないわよ」


軽く言ったつもりなのに、その言葉は重かった。


「良い花嫁道具になるって、思われてるかもしれないもの」


セリアは言葉を失った。


胸の奥が、すうっと冷えていく。


クラウディアだけではない。


王女も、公爵令嬢も、そしてアンネも。


女の子たちは、みな誰かの都合で、どこかへ差し出される可能性がある。


その現実が、急に重くのしかかってきた。


セリアは、ただ悲しくなった。



王城の外では、秋の光が変わらず穏やかに降り注いでいた。


けれど少女たちの未来は、少しも穏やかではなかった。

5時30分と17時の2回更新しています。

よろしくお願いします。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

もし楽しんでいただけましたら、ブックマークや評価をいただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
検索用タグ 乙女ゲーム、悪役令嬢、バッドエンド、ハッピーエンド、異世界転生、魔法、貴族社会、主人公最弱スタート、孤児主人公、バッドエンド回避、男爵令嬢、宰相の息子、転生者、コメディ、会話多め、転生者同盟 異世界転生 乙女ゲーム 悪役令嬢 学園 魔法 群像劇 政治 貴族社会 中央集権 政略結婚 バッドエンド シリアス ダーク 転生者複数 女主人公 人間ドラマ 成長
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ