第十章 始まり
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秋のある日。
エーデル男爵家――応接室。
窓の外では、色づき始めた木々が静かに揺れていた。
柔らかな光が差し込み、室内は落ち着いた空気に包まれている。
その中で――
エーデル男爵夫人マルガレーテは、ゆったりとソファに座り、向かいに立つセリアに視線を向けていた。
「セリア」
穏やかな声だった。
「明日は王女様のお茶会よ」
一拍置く。
「ロゼッタと、あなたも連れて行きます」
セリアは背筋を伸ばした。
「はい」
短く、しっかりと答える。
マルガレーテは小さく微笑んだ。
「王城に行くのは二週間ぶりね」
だが、その笑みはすぐにわずかに陰る。
「……クラウディア様が式を終えたばかりだもの」
窓の外に視線を向ける。
「どうしても、思い出してしまうわ」
その言葉に、セリアは一瞬だけ黙った。
クラウディアの姿。
白い煌びやかな衣装。
あの日の、あの光景。
胸の奥に、静かに浮かび上がる。
それでも――
セリアは顔を上げた。
「クラウディア様は」
ゆっくりと言う。
「覚悟を決めていらっしゃいました」
迷いのない声だった。
「きっと……大丈夫です」
マルガレーテは、しばらくセリアを見つめていた。
そして、ふっと息を吐く。
「そうね」
小さく頷く。
「あなたの言う通りだわ」
少しだけ、表情が柔らいだ。
「ロゼッタも、きっと同じことを言うでしょうね」
その言葉に、セリアはわずかに微笑む。
応接室に、静かな時間が流れた。
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