第八話 口出し
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月に一度。
ロゼッタお嬢様とカイゼル・グラディウスは、婚約者同士の親睦を深めるためのお茶会を開いている。
今回はエーデル男爵家で行われた。
セリアも小間使いとして後ろに控えることになった。
カイゼル・グラディウス。
宰相の息子。
濃い青黒の髪を襟元で整えて切り揃え、色素の薄い銀色の瞳をしている。
その瞳と一瞬だけ目が合った。
(怖)
セリアはすぐに視線を下げた。
その目は、八歳の子供のものではない。
まるで人の値踏みをする大人の目だった。
お茶会は始まった。
しかし。
親睦とは名ばかりだった。
グラディウス宰相家の護衛がすぐ後ろに立ち、
ロゼッタの後ろには爺やがいる。
完全に監視状態だ。
二人の会話も、まったく進まない。
「今日は良い天気ですね」
「ええ、秋らしい陽気です」
「最近は寒暖差が激しいですね」
「体調にはお気をつけください」
そして。
「ご家族はお元気ですか」
「ええ、変わりなく」
完全に貴族の定型挨拶だった。
(これ意味あるの?)
セリアは思い切って口を出した。
「ここは若いお二人でお話をさせては」
カイゼルがすぐに突っ込んだ。
「お前が一番若いだろう」
セリアは口を閉じた。
しかし年齢は同じだ。
ロゼッタ八歳。
カイゼル八歳。
セリアも八歳。
だが。
孤児院育ちで栄養不足のセリアは一番貧相で幼く見える。
カイゼルは護衛を見た。
「確かに、こう近くで聞かれていては監視されているみたいで肩が凝る、
下がってくれ」
そしてセリアを指した。
「小間使いは話し相手になるだろうからここにいろ」
護衛が何か言いかけた。
しかし爺やが静かに口を開いた。
「ロゼッタお嬢様が魔力暴走をしたのは四年も前、
ここは親睦を優先しませんか」
護衛はなおも何か言いかけた。
だがカイゼルが言った。
「何かあったら責任は僕が取る、
下がれ」
沈黙。
やがて護衛は頭を下げた。
爺やとともに部屋の外へ下がる。
扉が閉まった。
部屋には三人だけが残った。
静かになった。
カイゼルが言う。
「単刀直入に聞く」
銀の瞳がロゼッタを見る。
「ピンク髪で光魔法の使い手を手に入れたがった理由は何だ、
特別な子供には見えない」
ロゼッタが肩をすくめた。
「やっぱり爺やはあなたに情報を流してるのね」
カイゼルは首を振る。
「勘違いするな、
お前を守るためだ、
グラディウス家が一番お前を欲している」
ロゼッタは少し眉をひそめた。
「私の四属性と高魔力量が欲しいだけでしょう」
カイゼルは顔をしかめた。
「そんな言い方をするな」
空気が少し重くなった。
セリアが割って入る。
「まあまあ、
せっかく三人だけになったんだから、もう少し建設的な話し合いをしましょう」
カイゼルがセリアを見る。
「お前、歳の割に難しい言葉を知っているな、
孤児院出身とは思えない」
セリアは肩をすくめた。
「あなたもね、
高等教育受けたって言っても、弁が立ちすぎる、八歳に見えない」
カイゼルの目が細くなる。
「何が言いたい」
セリアは言った。
「豚骨ラーメン」
沈黙。
カイゼルが固まった。
「……は?」
セリアは舌打ちした。
「ちっ。違ったか」
カイゼルが慌てて言う。
「待て、
豚骨ラーメンの意味は分かる、
お前、転生者か」
そして首を傾げる。
「なんで豚骨ラーメン?
脈絡なさすぎてびっくりしたわ」
セリアは言った。
「私の好物なんです」
そして続けた。
「ロゼッタお嬢様が私を雇ったのは、
ゲームのバッドエンド回避のためです」
カイゼルが小さく息を吐いた。
「ゲーム?」
そして頷いた。
「やはりあのライクラに転生したのか」
セリアは目を丸くした。
「乙女ゲームなのに知ってるんですね」
カイゼルは顔をしかめた。
「元カノがカイゼルの大ファンだった、
話を合わせるために男性キャラクターの情報を中心に集めた」
そして吐き捨てる。
「あのクソゲー」
カイゼルは机を軽く叩いた。
「俺のルートは何だ、
主人公と心中したり、
想いが伝わらないと毒殺したり、
ならず者を雇って暗殺させたり、
しかも真実の愛エンドでは家督を従兄弟に譲る」
深いため息。
「何だよそれ」
カイゼルは苛立っていた。
「俺は家を継ぐために、
すごい勉強をして、
大変な思いをしてるのに、
恋して全部捨てる?
そんな馬鹿なことするわけないだろ」
セリアは頷いた。
「確かに、
恋して全部捨てるって馬鹿みたい」
カイゼルはロゼッタを見た。
そして言った。
「ロゼッタ、
結婚してくれ」
ロゼッタが瞬きをする。
カイゼルは真面目だった。
「政略結婚で愛はないかもしれない、
だが、
大切にする」
ロゼッタは少し沈黙した。
そして言った。
「嘘でもいいから、
これから愛を育てていこうとか言ってほしい」
セリアは思わず言ってしまった。
「それってホストの営業トークみたい」
カイゼルは思わず吹き出した。
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