第五十九話 転生者のお茶会
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王城――王太子の応接間。
高い天井と大きな窓を持つ広い部屋だった。
春の日差しが差し込み、白い壁と金の装飾が柔らかく光っている。
部屋の周囲には、数人の使用人が静かに控えていた。
今日、この部屋では
子供達だけのお茶会が開かれている。
大人達は隣の部屋で別のお茶会をしていた。
そして、この場に集められたのは――
派閥を越え、階級を越えた十三人だった。
転生者のお茶会だった。
国王派
レオンハルト・アルヴェリア王太子
カイゼル・グラディウス宰相嫡男
アデリーナ・ヴァルツェン公爵令嬢
ロゼッタ・エーデル男爵令嬢
セリア・ローゼン(エーデル男爵家の侍女)
女王派
レオニード・ヘリオドール侯爵子息
エヴァルト・シュトラール伯爵嫡男
イリス・ベルフォード伯爵令嬢
中立派
フェリクス・レーベン侯爵子息
ティアナ・レーベン侯爵令嬢
ディルク・ヴァルグレイ伯爵子息
カミラ・ノルディア子爵令嬢
アルベルト・ラウレンツ男爵嫡男
十三人の転生者が、一つの部屋に集まっていた。
セリアは王太子を見て、王太子の心中エンド『王冠放棄』を思い出していた。
すべてを管理された男が最後に個として選んだ唯一の自由。
来世に結ばれることを確信して、お互いに毒杯を飲ませ合う。
恍惚とした、見つめ合う二人。
(あれも、大概ひどいエンドだった。今の王太子は自由そうだけど?どうかな?)
その場で、レオンハルト王太子が口を開いた。
「今日は忙しい中、集まってくれてありがとう」
ゆっくりと周囲を見回す。
「控えている使用人は事情を知っている
だから安心して、意見を聞かせてほしい」
少しの沈黙のあと、カイゼルが言った。
「みんなは『ライクラ』というゲームを知っているのか?」
するとレオニードが肩をすくめた。
「全く知らない人を聞くほうがいいんじゃないか?」
カミラが手を挙げた。
「私はちょっとだけプレーしただけです
ほとんど分かりません」
レオンハルトも頷いた。
「妹がプレーしていた」
少し苦笑する。
「妹が薄い本を買い集めていたが、僕はよく分からない」
カイゼルも続けた。
「僕も男子キャラクターの情報しか知らない
こっちに来てから、ロゼッタやセリアに教えてもらったことの方が多い」
レオンハルトはふと思い出したように言った。
「そういえば
ロゼッタ嬢のところの侍女、セリアがゲームの主人公なんだろう?」
セリアがびくっとする。
レオンハルトは軽く笑った。
「もうゲームに囚われなくてもいいんじゃないかな」
するとアデリーナが言った。
「この国を良くするために
転生者が送られたという事ですね」
レオンハルトは窓の外を見ながら言った。
「日本みたいに
治安が良くて、人々が飢えていない国を作れるだろうか?」
レオニードがすぐに言った。
「識字率を上げるのはどうでしょう」
アデリーナが頷く。
「いいわね
識字率が上がれば、庶民の生活の質も上がるはず」
だがカイゼルは首を振った。
「地方貴族は豪農と変わらない
生活するので精一杯だ
魔法学院も嫡男は無料だが、次男以下、女子も有料だ。
だから貴族全員が入れるわけでも無い。
そんな中で庶民に教育をする予算はない」
レオニードは眉をしかめた。
「いつも出来ない理由ばかり並べ立てる
国王派は!」
カイゼルは冷静に返す。
「理想ばかり語って実行できない
女王派よりましだ」
レオニードの声が強くなる。
「理想を語って何が悪い!
理想すら抱けない無能が!」
一瞬。
部屋の空気が凍った。
誰も、すぐには言葉を返さない。
カップを持つ手が止まる。
使用人の一人が、わずかに顔を伏せた。
その沈黙を破ったのは――
レオンハルトだった。
「……言い過ぎだよ、レオニード」
穏やかな声だったが、温度は低かった。
カイゼルも言い返した。
「僕だって日本人だった!
中世が中央集権に向かう歴史的事実は知っている!
だが、無理に中央集権にすれば軋轢が生まれる
国王派は辺境伯と港湾都市をなんとかまとめている
反発を受けて内戦になれば、被害は大きくなる」
そこへアルベルトが口を挟んだ。
「中立派も一枚岩じゃないよ
レーベン侯爵みたいに国に忠誠を誓う商人もいる
でも港湾都市の商人は利益のある国にすぐ移る」
肩をすくめる。
「物流が止まったら、首都は干からびるよ?」
少し笑った。
「僕は出来るだけこの国にいたいな
なんせ生まれた国だし」
エヴァルトが静かに言う。
「女王派とて内戦を望んでいるわけではない
だが他国から国を守るには
貴族ごとに軍を率いる無駄を無くし、国を整備すべきだ
その結果、治安も良くなり庶民の生活も向上する」
レオニードが強く頷いた。
「中央集権は、いつか必ずやらねばならない」
カイゼルはすぐに言う。
「だから辺境伯と港湾都市が黙っていないと言っている」
カミラが首を傾げた。
「利益があれば
辺境伯も港湾都市も黙るんじゃない?」
少し考えて言う。
「でも、その利益が思いつかないわ」
ティアナが小さく言った。
「ヨーロッパの中世が終わったのって新大陸発見よね。
新大陸の蹂躙とかで豊かになるのは……」
顔をしかめる。
「気分が悪いわね」
エヴァルトは腕を組んだ。
「魔法が石油みたいに便利な道具ならいいんだけどな
水道水の代わりとか
クーラーの代わりとか
魔法陣に画期的な発明があれば、世界は変わるかもしれない」
カイゼルは呆れた顔をした。
「現実逃避するなよ」
レオニードが言った。
「何もしないのは、死んだのと同じだ」
応接間の空気が重くなる。
転生者達は皆、黙り込んだ。
結局――
現実路線の国王派と
理想主義の女王派。
議論は平行線のまま終わった。
春の日差しが、静かに窓から差し込んでいた。
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