第五十四話 最後の帳簿
21時に短編「最後の帳簿」が上がります。恋愛するアルベルトなんて想像できなかったのですが何とか捻り出しました。ちゃんとバッドエンドです。
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背後から声がした。
「六番目の花嫁?」
二人はびくっと振り向いた。
そこには、栗色のウェーブした髪、金茶色の目の少年が立っていた。
ロゼッタが警戒した声で言う。
「なんなんですか?」
セリアはその顔を見て、息を呑んだ。
「アルベルト!」
頭の中に、ひとつの場面がよみがえる。
『最後の帳簿』エンド
巨大な金庫。
床一面に積まれた金貨。
その中央で、男女が首を吊っている。
アルベルト・ラウレンツと、ゲームの主人公。
二人は金に囲まれながら死んでいた。
財産も、権力も、全てを手に入れる事が出来るのに、商家の嫡男が最後に選んだのは――
愛する者との心中。
来世で結ばれることを誓って。
それは、物語の中でも特に印象的な結末だった。
(アルベルト……)
セリアの背中に冷たい汗が流れた。
アルベルトはにこりと笑った。
「よく知ってるね」
軽く礼をする。
「僕はアルベルト。ラウレンツ男爵家の長男だよ」
そしてロゼッタを見た。
「そちらは、エーデル男爵家のロゼッタ嬢だね」
少し首を傾げる。
「君たちは転生者?」
ロゼッタは一瞬固まった。
そして口を開く。
「と、と、と、豚骨ラーメン?」
アルベルトは即答した。
「背脂マシマシが好きだよ」
ロゼッタはセリアを振り向く。
「セリア、こちら豚骨ラーメン、背脂マシマシの方よ」
セリアは真顔で頷いた。
「転生者に間違いないですね」
アルベルトは少し呆れた顔をした。
「なんなの、その確認方法」
セリアは静かに言った。
「私は魔法学院には行きません。あなたの邪魔はしません」
アルベルトの笑顔が少しだけ変わる。
「それが確認できたら良かったんだ」
そして淡々と言った。
「約束を違えたら、死んでもらう」
セリアは小さく悲鳴を上げた。
「ひえ」
ロゼッタがすぐに前に出る。
「セリアは私の大切な侍女よ。勝手な事はさせないわ」
アルベルトはロゼッタを見つめる。
少しだけ興味深そうに。
「ロゼッタ、君はゲームの内容を知らないのか?」
ロゼッタは腕を組んだ。
「ゲームの内容にならないように色々してきたわ」
少し顎を上げる。
「未来は変えられる」
アルベルトは小さく笑った。
「まあ、それが本当か観察させてもらうよ」
それだけ言うと、くるりと背を向けた。
そのまま人混みの中へ消えていく。
ロゼッタはため息をついた。
「なんなの、あの子」
セリアはまだ少し震えていた。
「怖い人です……」
ダンスホールの中央では、結婚式が続いていた。
王弟コンラートと、エレオノーラ・ヴァルテンベルク。
二人は祝福の拍手に包まれている。
光り輝くシャンデリア。
鏡に反射する無数の光。
誰もが笑顔で祝福していた。
セリアはその光景を見ながら、静かに思った。
(どうか……)
(ゲーム通りになりませんように)
六番目の花嫁まで、犠牲が出ないことを祈った。
⸻
三ヶ月後。
王都に衝撃が走った。
王弟妃エレオノーラが、病気療養のため避暑地へ向かう途中、
馬車の事故で命を落としたという知らせだった。
貴族街は騒然となった。
あまりにも突然の死だった。
セリアはその知らせを聞き、胸が冷たくなった。
(病気……)
(本当に?)
ふと、嫌な考えが浮かぶ。
(毒……?)
春の光が、窓から静かに差し込んでいた。
21時に短編「最後の帳簿」が上がります。恋愛するアルベルトなんて想像できなかったのですが何とか捻り出しました。ちゃんとバッドエンドです。
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