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第五十二話 王女の楽しいお茶会

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王城の応接室は、エーデル男爵邸の客間とは比べものにならないほど豪華だった。


高い天井には精巧な彫刻が施され、窓からは柔らかな陽光が差し込んでいる。

白い大理石の床には絨毯が敷かれ、磨き上げられた家具が整然と並んでいた。


王女エリザベートの応接間である。


その一角で、宰相夫人ヘレーネ・グラディウスと、エーデル男爵夫人マルガレーテ・エーデルが優雅にお茶を楽しんでいた。


ヘレーネが微笑む。


「王城の王女様の応接間は初めてかしら?」


マルガレーテは少し背筋を伸ばしながら答える。


「はい。奥様とは何回もお茶をさせてもらっていますけど、場所が変わると緊張しますね」


ヘレーネは軽く肩をすくめた。


「女王様は子供達と隔離されてるから、こちらには来ないわ」


マルガレーテは少し驚いたように言う。


「女王様は、夫である国王陛下や子供達と離れても、悲しくないのでしょうか?」


ヘレーネは一瞬だけ遠くを見るような目をした。


「女王様は実家といっしょに、中央集権を目指しているの。子供達の未来に必要だと信じているのよ」


紅茶を一口飲み、続ける。


「理想はいい。でもやり方が強引。国王陛下とは分かり合えないわ」


マルガレーテは静かに首を振った。


「主義主張のために子供と別れるなんて……私にはわかりません」


ヘレーネは少し苦笑した。


「私もよ」


二人はそれ以上言わず、静かに紅茶を口に運んだ。



同じ応接間の、少し離れた場所。


柔らかなソファに、少女たちが並んで座っていた。


王女エリザベート。

宰相家長女クラウディア。

宰相家次女マルティナ。

そしてロゼッタ。


ロゼッタは少し緊張した様子で背筋を伸ばしている。


「本日は、お、お招きありがとうございます」


エリザベートが楽しそうに笑った。


「ようこそロゼッタ様。楽しみにしてたのよ」


少し身を乗り出して言う。


「あのカイゼルをメロメロにしてるんですって?」


ロゼッタの顔が一気に赤くなる。


「な、仲良くさせてもらってます」


クラウディアが優しく笑った。


「ロゼッタ様、そんなに硬くならないで」


エリザベートが続ける。


「クラウディア達とは曽祖父母が同じなのよ。つまり、また従姉妹なの」


そしてロゼッタを見て言った。


「だから、あなたとも親戚になるのよ。気楽にして」


ロゼッタは少し困ったように笑った。


「それは、知ってるんです。知識と実地は違うと言うか……実際会うと、緊張します」


マルティナがくすっと笑う。


「エリザベートとは同い年だから、あなたの二歳上。そんなに変わらないわ」


クラウディアも頷いた。


「気楽にして」


ロゼッタは少し考えてから、頷いた。


「わかりました。お姉様がた」


少し空気が柔らかくなる。


ロゼッタは思い出したように言った。


「あの、私、先日、魔力審査を受けましたの」


三人が興味を示す。


「四属性だったので、四色の光が出て……とても綺麗でした」


クラウディアが目を輝かせた。


「それは、是非見たかったわ」


エリザベートも興味深そうに言う。


「高魔力なんでしょう?相当に光ったでしょうね」


そしてロゼッタの腕を見る。


「あ、バングルは魔力制御装置なのね」


ロゼッタの腕には四つのバングルがはめられていた。


エリザベートは感心したように言った。


「すごいわ。四つも」


ロゼッタは少し恥ずかしそうに微笑んだ。


少女たちのお茶会は、穏やかな笑い声の中で続いた。


王城の応接室には、春の光が柔らかく差し込んでいた。


お嬢様方のお茶会は、終始和やかな雰囲気のまま終わった。

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