第五十一話 四属性と光魔法
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春の風が、エーデル男爵邸の庭をやわらかく揺らしていた。
ジャガイモの作付けの間、領地に戻っていたハインリヒ・エーデル男爵も帰ってきて、屋敷は久しぶりに賑やかだった。
今日はロゼッタの誕生日である。
十歳になったのだ。
食堂には小さなパーティの席が用意されていた。
ハインリヒ・エーデル男爵、
マルガレーテ・エーデル男爵夫人、
ロゼッタ、
爺や、
セリア、
侍女長、
料理長
その他の使用人。
家族と使用人だけの、ささやかな祝いだった。
ハインリヒが笑顔で言った。
「おめでとう、ロゼッタちゃん」
マルガレーテも優しく微笑む。
「十歳のお誕生日おめでとう、ロゼッタちゃん」
ロゼッタは次々にプレゼントを渡されながら、嬉しそうに言った。
「ありがとう、お父様、お母様」
ハインリヒはふっと笑う。
「午後から、国土正教に魔力審査を受けに行こうね」
ロゼッタは少し不思議そうな顔をした。
「私の魔力は四属性で高魔力って、もうわかってますよ?」
マルガレーテが紅茶を口にしながら答える。
「貴族の習慣なの。それに正式な届になるから、受けなければいけないのよ」
そしてハインリヒがセリアの方を見る。
「セリア、お前も魔力審査を受けてもらう」
セリアは姿勢を正した。
「はい?」
「国土正教にお墨付きをもらった光魔法使いになってもらうためだ」
マルガレーテが続ける。
「今のままでも役に立っているけど、お墨付きをもらうと連れて行ける場所が増えるの。よろしくね、セリア」
セリアは深く頭を下げた。
「はい、かしこまりました」
(教会の認定か……)
セリアは少しだけ胸がざわついた。
光魔法を教えてくれているシスターの話では、光魔法は教会が強く管理していた。
だが、自分はエーデル男爵家の一員。
逃げる理由はない。
⸻
午後。
国土正教の大教会は、町の中心にそびえていた。
白い石で作られた巨大な建物。
高い天井、色鮮やかなステンドグラス。
静かな空気が満ちている。
司教とシスターが迎えた。
教会の中央には、台座があり、その上に透明な水晶が置かれていた。
司教がゆっくりと話す。
「ロゼッタさん。バングルを外してください。そして、この水晶の上に手を置き、力を注ぎ込んでください。ゆっくりですよ」
ロゼッタは頷いた。
バングルを外し、水晶の上に手を置く。
そして、魔力を流す。
瞬間。
水晶が輝いた。
赤。
青。
緑。
黄色。
四つの色の光が溢れ出す。
光は徐々に強くなり、教会の壁を照らした。
司教が目を細める。
「もう、よろしい」
ロゼッタが手を離す。
司教は厳かに言った。
「ロゼッタ様は間違いなく、四属性で高魔力です。教会が認定して登録いたします」
ハインリヒは満足そうに頷いた。
そのとき、横にいたシスターが口を開く。
「司教様。もう一人、十歳になる女の子がいます」
司教は視線を向けた。
「よろしい。続けて測りましょう。名前は?」
セリアは少し緊張して答えた。
「セリアです」
そのとき、後ろから小さな声が聞こえた。
爺やだった。
「セリア、出身の孤児院が苗字になるので、セリア・ローゼンが本名ですよ」
セリアは一瞬固まった。
(え?)
知らなかった。
ゲームでは名前しかなかった。
「セリア・ローゼンです」
司教が少し眉を上げる。
「ほう、孤児院出身かい。まあ、よろしい。ロゼッタ様のを見ていただろう。この水晶に手を置いて、ゆっくり力を注ぎ込んでください」
「はい」
セリアは水晶に手を置いた。
魔力を流す。
次の瞬間。
水晶が、眩く白く輝いた。
まるで太陽のような光だった。
教会の中が真っ白に染まる。
シスターが息を呑む。
司教の顔が変わった。
「これは……!」
光が収まり、セリアは手を離す。
司教は真剣な顔で言った。
「この子は孤児院出身ですね」
ハインリヒが頷く。
「そうだ」
司教は続けた。
「元の孤児院……いや、私どもで育てなければいけない」
空気が変わった。
ハインリヒが眉をひそめる。
「はい?」
司教は真顔で言う。
「これほどまでに才能のある光魔法使いを、あなた方が育てられるとは思えない」
セリアの胸が冷えた。
司教はさらに言う。
「私達に預けなさい。それに元々は孤児院出身だったのでしょう?違法な方法で手に入れたのでは無いですか?」
ハインリヒの表情が一瞬で変わった。
「そんなわけないでしょう」
司教は引かない。
「この才能を男爵家で腐らせてはいけない。国民に還元すべきです」
次の瞬間。
ハインリヒの声が低くなった。
「僕を男爵だと侮ってもらっては困る」
教会の空気が凍る。
「エーデル伯爵の弟だぞ。わかっているのか」
司教が言葉に詰まる。
「しかし……」
ハインリヒは一歩前に出た。
「娘は宰相嫡男に嫁ぐ」
そしてセリアを見た。
「光魔法使いは花嫁道具の一部だ」
静かに言い放つ。
「引くつもりはない」
長い沈黙。
やがて司教は視線を落とした。
「……大事に育ててください」
ハインリヒは肩をすくめる。
「言われなくても」
セリアはその会話を黙って聞いていた。
(花嫁道具、か)
少しだけ苦笑する。
だが同時に思った。
(守ってくれたんだ)
エーデル男爵家は、確かに自分を家族として扱っている。
教会を出ると、春の光が眩しかった。
ロゼッタが笑う。
「セリア、すごかったわね」
セリアは肩をすくめた。
「ロゼッタ様の四属性の方がすごいですよ」
ロゼッタは楽しそうに笑った。
春の風が吹く。
セリアは空を見上げた。
(この家に来て、本当に良かった)
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