第四十九話 中立派の騎士伯爵
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翌月。
王都に一つの知らせが広がった。
ヴァルグレイ騎士伯爵家の次男――
ハルトが、
女王派の名門、
ベルフォード伯爵家へ
婿入りすることが発表された。
婚約のお披露目会から
まだ間もない。
王都の貴族たちは
その話題で持ちきりだった。
⸻
宰相家の執務室。
重厚な机の前に
宰相と、その息子カイゼルが向かい合っていた
カイゼルは腕を組みながら言った。
「やられましたね」
少し苦い顔だった。
「うちと政略婚約を結んで
国王派に近づくと思っていました」
宰相は静かに頷く。
「次男を
宮廷伯爵の入り婿に入れるとはな」
カイゼルは少し笑う。
「ベルフォード伯爵家は
ただの宮廷伯爵ではありません」
少し声を落とす。
「外交を裏で仕切っている家です」
窓の外を見た。
「そんな家に次男をつけられる。
向こうは大喜びでしょう」
宰相は指を組んだ。
「ヴァルグレイ伯爵も
ただの騎士伯爵ではない」
少し間を置く。
「国王派と女王派
両方に顔を立てた」
小さく息を吐く。
「見事な均衡だ」
カイゼルは黙った。
そして思った。
(派閥争いは
簡単じゃない)
⸻
数日後。
王城のお茶会。
母親たちは
すでに盛り上がっていた。
話題は当然――
ヴァルグレイ家の
二つの婚約だった。
「まあ大胆ですこと」
「見事な政治手腕ですわ」
「流石ヴァルグレイ伯爵」
貴婦人たちの声が
次々と上がる。
一方で――
子供たちは
早々に庭へ追い出されていた。
⸻
庭。
まだ冬の空気が残っている。
だが
空気の奥に
少しだけ春の気配があった。
カイゼルは
ディルクに声をかけた。
「ヴァルグレイ家は食えないな」
肩をすくめる。
「うちと婚約しておいて
女王派とも婚約するとは」
ディルクは少し笑った。
「失恋した僕に言うことが
政治の愚痴って」
呆れた顔をする。
「酷いやつだ」
カイゼルは少し気まずそうに言う。
「……すまない」
ディルクは空を見上げた。
「ハルト兄上は
僕より二つ年上だ」
静かに続ける。
「頭もいい」
少し笑う。
「きっと
イリス嬢を幸せにしてくださる」
カイゼルは言った。
「元気出せ」
そのとき。
後ろから声がした。
「どうした?」
振り向く。
エヴァルトだった。
「ディルクが元気なさそうだな」
少し首を傾げる。
「腹でも痛いのか?」
ディルクは言った。
「失恋だ」
エヴァルトは一瞬固まった。
そして咳払いする。
「……失礼した」
少し笑う。
「話を聞いてやろうか?
僕は口が硬いぞ」
ディルクは首を振った。
「いや、いい」
少し笑う。
「それより」
剣を構える。
「打ち合いに付き合え」
エヴァルトは目を細めた。
「いいよ」
肩を回す。
「三本勝負」
そして続けた。
「一本でも僕が取ったら
僕の勝ちのハンデ戦なら」
ディルクが笑う。
「容赦がない」
剣を構える。
「いいだろう」
真剣な顔になる。
「三本とも取ってやる」
二人は向かい合った。
木剣が構えられる。
冬の空の下。
まだ冷たい風が吹いている。
だが
その中に
確かに
春の気配が混じっていた。
そして――
庭には
子供たちの笑い声が
いつまでも響いていた。
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