第五十話 二つの空気
21時に短編「漏洩の噂」が上がります。主人公章だったのに影の薄いイリスがバッチリ主人公です。まあ、主人公っても、バッドエンドなんですけどね。
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グラディウス宰相家の応接間。
冬の午後の光が大きな窓から差し込み、
室内には落ち着いた温かな空気が流れていた。
今日は――
宰相家でいつもの懇親会が開かれていた。
だが、
いつもの顔ぶれではない。
ロゼッタ。
カイゼル。
そしてセリア。
そこに――
宰相家の長女、
クラウディア・グラディウス。
そして次女で、先日ヴァルグレイ家の嫡男ローガンと婚約した
マルティナも参加していた。
⸻
クラウディアが優雅に微笑む。
「ロゼッタ様」
少し首を傾げる。
「妹になるのに、私たちと懇親しないのはいけないわ」
マルティナも続けた。
「魔力暴走の心配もなくなったのなら」
にこりと笑う。
「私たちともお茶会をしましょう」
ちらりと弟を見る。
「カイゼルはいつもしているから、今日は遠慮して」
カイゼルは肩をすくめた。
ロゼッタは慌てて言う。
「え。え……」
クラウディアは楽しそうに言った。
「ロゼッタ様は、まだ九歳なのに
魔法の授業を受けているんですってね」
マルティナは興味津々だった。
「すごいわ」
少し困ったように笑う。
「私は去年からなの、
風魔法だけでも魔力制御が大変で……」
ロゼッタの方へ身を乗り出す。
「何かコツとかある?」
ロゼッタは完全に囲まれていた。
「えっと……」
助けを求めるようにカイゼルを見る。
だが――
カイゼルは知らん顔をして紅茶を飲んでいる。
⸻
その少し離れた場所。
カイゼルはいつの間にか
壁際へ避難していた。
その隣にセリアが立つ。
カイゼルとセリアは
完全に蚊帳の外だった。
セリアは小声で言う。
「カイゼル様」
カイゼルは視線を向ける。
「なんだ」
セリアは声を潜めた。
「先日のお披露目会で
また転生者を見つけました」
カイゼルの眉が動いた。
「……誰だ」
セリアは答える。
「イリス・ベルフォード伯爵令嬢です」
カイゼルは目を見開いた。
「え?」
セリアは続ける。
「イリス様を助けたかったので」
少し言いにくそうにする。
「ロゼッタお嬢様、カミラ様、イリス様の前で
転生者だと名乗りました」
カイゼルは固まった。
そして低い声で言う。
「……何故」
セリアは小さく答える。
「イリス様は女王派です」
肩をすくめる。
「顔を合わせる機会も簡単にはないので……
つい」
カイゼルは額を押さえた。
「はあ……」
そして言った。
「この世界で転生者だとバレたら
どうなると思う」
セリアは首を傾げる。
「わかりません」
少し考える。
「狂ったと思われるぐらいしか」
カイゼルは即座に言った。
「狂ったと思われたらまだいい」
静かな声。
「未来視だと勘違いされたら
王家に飼い殺しだ」
セリアの顔が少し青くなる。
カイゼルは続けた。
「ロゼッタが転生者だと知っているのは?」
セリアは答える。
「私たちと
イリス様と
カミラ様だけです」
カイゼルは言った。
「これきりにしてくれ」
少し強い声。
「ロゼッタとお前が転生者だとバレるのはまずい」
セリアは素直に頷いた。
「はい」
カイゼルはため息をついた。
「……俺も人のことは言えない」
セリアが見る。
カイゼルは苦笑した。
「大人に命令しすぎて目立っていたらしい」
少し肩をすくめる。
「ディルクに転生者だとバレた」
セリアは驚いた。
「ヴァルグレイ家の三男
王太子のお友達候補の?」
「ああ」
カイゼルは言った。
「ディルクも転生者だと名乗ってきた」
セリアは思わず言った。
「ええ」
少し困った顔になる。
「流石に多くないですか?」
カイゼルは首を振った。
「確かに多い」
静かに言う。
「理由はわからない」
少し考える。
「だが――」
カイゼルはセリアを見た。
「転生者だとバレるのは
お互い気をつけよう」
セリアは頷いた。
「はい」
⸻
グラディウス宰相家の応接間には
二つの空気が流れていた。
一つは――
クラウディア、マルティナ、ロゼッタの
魔法談義で賑やかな空気。
もう一つは――
カイゼルとセリアの
やってしまったという反省の空気だった。
21時に短編「漏洩の噂」が上がります。主人公章だったのに影の薄いイリスがバッチリ主人公です。まあ、主人公っても、バッドエンドなんですけどね。
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