第五話 孤児院脱出
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セリアは着の身着のまま孤児院から出された。
荷物は何もない。
思い出の品もない。
確かに孤児院では個人のものが持てない、だがセリアは思った。
(これはさすがに酷くない?)
孤児院の門はすぐ後ろで閉じられた。
振り返っても、誰も見送りには来ていない。
セリアは少しだけ肩を落とした。
(これはさすがに酷く無い?)
孤児のセリアにはすべてだった場所だったのに。
セリアはそのままロゼッタと執事――爺やと呼ばれていた初老の男性と一緒に馬車に乗った。
馬車の中は広く、柔らかい座席にクッションが並んでいる。
孤児院では見たこともない豪華さだった。
ロゼッタはすぐに爺やの隣に座り、嬉しそうに体を寄せた。
「爺や!」
「はい、お嬢様」
ロゼッタは満面の笑みだった。
「かっこよかった!
交渉上手!
ありがとう!」
そして、少しだけ身を乗り出す。
「すごく欲しかったの、
私が使えない光魔法が使える子が」
爺やは柔らかく微笑んだ。
「お嬢様のためなら、お安い御用でございます」
セリアは二人のやりとりを、怯えながら見ていた。
(この子、本当に八歳?)
見た目は確かに八歳だ。
小柄な体。
幼い顔。
だが。
発言が不穏すぎる。
(光魔法の子が欲しかったって、どういう意味?)
馬車はしばらく走り、やがて大きな屋敷の門をくぐった。
ロゼッタの家だ。
馬車が止まる。
扉が開かれる。
ロゼッタはすぐに立ち上がった。
「私は部屋に戻るわ」
そう言って二階へ上がっていく。
爺やはセリアを見た。
「ついてきなさい」
セリアは黙って後を追う。
屋敷の奥。
使用人の部屋が並ぶ場所だった。
爺やは立ち止まった。
「お前、名前は?」
「セリアです」
「セリア」
爺やは淡々と言った。
「お前はロゼッタお嬢様の小間使いだ、
八歳なら分別はつくだろうが、
盗みをするな、
この家で見聞きしたことを外で話すな」
そして少しだけ声を和らげた。
「それを守っていれば、この家は悪い場所ではない、
三食出る、
身体も清潔にできる」
セリアは小さく頷いた。
(孤児院よりは、だいぶマシかもしれない)
セリアは渡された小間使いの服に着替えた。
少し大きいが、孤児院の服よりずっと綺麗だった。
そしてロゼッタの部屋へ向かう。
扉をノックする。
「入りなさい」
セリアは扉を開けた。
ロゼッタは椅子に座っていた。
セリアは頭を下げる。
「セリアです、本日からよろしくお願いします」
ロゼッタはじっとセリアを見た。
そしてぽつりと言った。
「……八歳にしてはちゃんとしてるのね」
セリアは思った。
(お前は八歳で人身売買するとんでもないやつだけどな、
ていうか、
自分が使えない光魔法の子が欲しかったって、
どういう理由?)
セリアは内心でため息をつく。
(お気軽に人を買えるって、
貴族って、さいてい、
貴族って、さいてい、
貴族って、さいてい)
そのときだった。
ロゼッタがぼそりと言った。
「ピンク髪で赤目、
名前はプレーヤーが任意につけるから分からないけど、
光魔法が使える」
ロゼッタはセリアを見た。
「全部あってる」
そして満足そうに言った。
「この子が主人公のはず」
セリアの心臓が止まりそうになった。
ロゼッタは腕を組み、満足そうに頷く。
「これでフラグは絶対に立たなくなった」
そしてロゼッタは万歳をした、
「ばんざーい、
私はゲームから解放された」
セリアは固まっていた。
(え、今、ゲームって言った?)
ロゼッタはセリアの顔を見て、少しだけ首をかしげた。
「あ、あなたには関係あるようで」
ロゼッタは不敵に笑った。
「全く関係無い話よ」
八歳児なのに大人の仕草。
セリアの背中に冷たい汗が流れた。
(……この子、転生者だ)
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