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第四話 孤児

本日も読んでいただきありがとうございます。


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セリアは孤児院の院長室に呼ばれた。


重い木の扉の前で立ち止まる。


(嫌な予感しかしない)


中から院長の声が聞こえた。


「入りなさい」


セリアはおそるおそる扉を開けた。


院長室の中には六人いた。


院長。


シスター三人。


ロゼッタ。


そして――


初老の男性。


黒い燕尾服を着た、いかにも執事という雰囲気の人物だった。


院長はいつものようにニコニコしている。


しかしその笑顔は、どこか作り物のようだった。


院長はロゼッタに向かって言った。


「この子は優秀な光魔法の使い手で、


この孤児院から魔導学園に送り出す予定の


大事な子なんです」


セリアは心の中で叫んだ。


(何それ聞いてない!! 


そんな予定あった!?


わたし的には、適当な男爵の養子に出してもらっての、後ろ盾プリーズなんだけど!?)


セリアは青ざめる。


(院長が伏兵だったのかよ!!)


ロゼッタはセリアをじっと見ていた。


そして小さく頷く。


次の瞬間。


ロゼッタは隣の執事に向かって言った。


「爺や」


「はい、お嬢様」


ロゼッタは真剣な顔で言った。


「この子を連れて帰りたい」


そして。


ウルウルした目で見つめる。


「お願い」


執事は一瞬も迷わなかった。


「お任せください、お嬢様」


そして院長の机の前に歩み出る。


「院長」


穏やかな声だった。


「いくら寄付すれば連れて帰れますかな」


次の瞬間。


ドン。


机の上に袋が置かれた。


重たい音。


袋の口が少し開いていた。


中に見えるのは――


金貨。


院長の目が一瞬だけ光る。


院長は袋の中を確認する。


しかし。


すぐに袋を閉じた。


そしてにこやかに言った。


「我々の孤児院から魔導学園に生徒を出すのは


大変名誉な事なのでお断りします」


セリアは思った。


(そんなに!?


 そんなに大事な子なの!?


 ならもっと大事にしてー!!


 読み書き計算教えて!!)


セリアは知っている。


主人公の初期ステータス。


ボロカスである。


本当に酷い。


知力も魔力制御も低い。


孤児院の教育では限界があるのだ。


このまま学園に行けば。


ほぼ確実に。


死亡ルート。


そのときだった。


執事は何も言わず。


もう一つ。


金貨の袋を出した。


さらに。


もう一つ。


机の上に三つの袋が並ぶ。


執事は静かに言った。


「あまり欲をかくのはお薦めしません」


院長の笑顔が少し引きつる。


執事は続けた。


「そのピンク髪の少女が期待通り光魔法を成長させられるか、


 ここでは大した教育はできないでしょう」


院長の顔色が変わる。


執事は淡々と続けた。


「読み書きがせいぜい、


 進学しても卒業できないのでは、


 かえって汚点になりますよ」


院長の後ろに立っていたシスターたちが悔しそうな顔をする。


精一杯やっている。


孤児院の運営。


子供たちの世話。


しかし。


教育までは手が回らない。


シスターの中には。


字が読めない者もいる。


院長はしばらく黙っていた。


そして。


ゆっくりと言った。


「……寄付という形でしたら」


執事は軽く頭を下げた。


「感謝いたします」


こうして。


金貨三袋と引き換えに。


セリアは――


引き取られることになった。


セリアはぼんやりしていた。


(お買い上げされた)


いや。


違う。


寄付だ。


寄付。


寄付。


寄付。


(完全に人身売買では?)


セリアはロゼッタを見た。


ロゼッタは嬉しそうに執事に言った。


「ありがとう、爺や!」


まるで。


欲しかったぬいぐるみを買ってもらった子供のようだった。


セリアはぞくりとした。


人を。


一人。


買ったのに。


ロゼッタは笑っている。


八歳の子供。


確かに年相応に見える。


だが。


何かが違う。


セリアには分からなかった。


この少女が何を考えているのか。


それが分からないことが――


何より恐ろしかった。


セリアは小さく震えた。


(……怖い)


本能が告げていた。


この少女は。


危険だ。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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