第三話 襲来
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それから――
セリアは無駄に一ヶ月過ごした。
特に何も変わらない。
孤児院の掃除。
洗濯。
食事当番。
裏庭の掃除。
そして夜になると、布団の中で未来を考える。
結論はいつも同じだった。
「……詰んでる」
そもそもセリアは孤児だ。
孤児院を出る手段がない。
勝手に出て行けばどうなるか。
想像は簡単だった。
野垂れ死ぬ。
人攫い。
奴隷。
ろくでもない未来しか思い浮かばない。
セリアは天井を見上げて呟いた。
「人生ハードモードすぎる……」
そして。
セリアはもう一つの事実に気付いて落ち込んでいた。
「……なんで私、
バッドエンド担当だったんだろ」
セリアの前世の仕事。
ゲームのイラストレーター。
担当は――
バッドエンドCG。
つまり。
死ぬ絵。
絶望する絵。
破滅する絵。
そういうものばかり描いていた。
セリアは布団の中で頭を抱える。
「シナリオ担当だったら……
回避ルート考えられたかもしれないのに……」
しかし現実は残酷だ。
セリアは死に方だけ異常に詳しい。
回避方法は知らない。
セリアは何とか現代知識で生き延びられないかも考えた。
料理。
衛生。
保存方法。
いろいろ思いつく。
しかし。
「そんなのどこで覚えたの?」
シスターは笑うだけだった。
孤児の子供の話など。
まともに聞く人はいない。
さらに。
セリアはあることを試した。
光魔法。
治療。
それを――
できなくなったふり。
魔法が使えないなら。
学院に行かなくていい。
そう思った。
結果。
年上の子供たちに殴られた。
「なんで治さないの!」
「さぼるな!」
「使えるくせに!」
セリアは地面に倒れながら思った。
「……失敗した」
孤児院では。
役に立つ子供は。
使われる。
役に立たない子供は。
殴られる。
セリアはぼんやり空を見た。
「……人生詰みすぎ」
そんなある日だった。
孤児院の前で。
ガラガラと車輪の音。
馬車の音が止まった。
立派な紋章のついた馬車。
孤児院の子供たちは一斉に窓を見る。
「貴族?」
「なんで?」
その瞬間。
孤児院の門が勢いよく開いた。
そして。
小さな少女が怒鳴った。
「ピンク髪の光魔法が使える少女を出しなさい!」
孤児院の空気が凍りついた。
そこに立っていたのは。
赤茶色の髪。
琥珀色の瞳。
まだ八歳ほどの少女。
しかし。
目つきは。
完全に。
貴族のそれだった。
セリアは一目で分かった。
心臓が止まりそうになる。
(……うそ
まじで?)
セリアは震えながら思った。
あの顔。
あの髪。
あの瞳。
前世で。
何度も描いた。
忘れるはずがない。
ロゼッタ。
攻略対象の一人。
宰相の息子。
その――
政略婚約者。
そして。
セリアは知っている。
主人公のハッピーエンドのあと
流れる
悪役令嬢のバッドエンド
ロゼッタのバッドエンドを。
セリアは前世で。
ロゼッタの『魔力令嬢の実験室』エンドのCGを描いた。
窓のない実験室。
数値を示した冷たい機械。
鎖で繋がれた手足。
謎の装置が心臓に張り付いている。
泣き崩れる少女。
あれは。
確かに。
この顔だった。
歳は主人公と同じ、それなら八歳のはずだ。
しかし。
間違いない。
ロゼッタだ。
セリアは思った。
(ちょっと待って)
(ちょっと待って)
(ちょっと待って)
そして。
心の中で絶叫した。
まだ学園に入学してないのに!
宰相の息子を攻略してないのに!
婚約者に狙われるって!!
セリアは涙目で思った。
(酷いーーー!!)
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