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乙女ゲームのバッドエンド絵師、ゲーム世界に転生する 〜バッドエンドしかない世界で、運命を捨てる〜  作者: SUN3
解けない死の術式

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第三十八話 静かな舌戦

5時30分と17時の2回更新しています。

よろしくお願いします。


本日も読んでいただきありがとうございます。

もし楽しんでいただけましたら、ブックマークや下の★から評価をいただけると励みになります。




冬も深まったある日。


エーデル伯爵家ではお茶会が開かれていた。


表向きは子供たちの交流会。


だが実際には――


ロゼッタ・エーデルのお披露目会だった。


エーデル伯爵家の応接間は広く、豪華だった。


伯爵家としては珍しいほどの豊かさがある。


エーデル伯爵家は豪農の家系だった。


広い領地から豊かな作物が取れ、多くの税を集めることができる。


そのため私兵も抱えており、地方ではかなりの影響力を持っていた。


今回のお茶会は、エーデル伯爵家の三兄弟の友人たちを中心に招かれている。


子爵家、男爵家。


いずれも国王派の家ばかりだった。


――のはずだった。


だが。


二人だけ、明らかに異質な客がいた。


シュトラール伯爵夫人。


そしてその息子、エヴァルト・シュトラール。


女王派の家である。


中立派の重鎮、レーヴェン侯爵の紹介状を使い、半ば強引に参加を申し込んできたのだった。


応接間ではエーデル伯爵夫人が笑顔で迎えていた。


表情は穏やかだが、空気は張り詰めている。


国王派の地方有力者。


対するは女王派の魔導研究院。


立場は完全に対立していた。


だが社交の場で争うわけにはいかない。


シュトラール伯爵夫人は、柔らかな声で言った。


「今日は無理を言っての参加、ごめんなさいね」


優雅に頭を下げる。


「お茶会に出席を許してくださって助かりましたわ」


エーデル伯爵夫人はにこやかに答えた。


「とんでもないことです


 王国魔導研究院のご家門をお招きできるなんて光栄ですわ」


少し微笑む。


「レーヴェン侯爵夫人からも、よろしくと言われておりますし」


その言葉の奥には


――断れない紹介状だった


という意味が隠れていた。


その時。


エヴァルトが母の袖を引いた。


「母上」


シュトラール伯爵夫人は頷いた。


「そうね」


そして紹介する。


「こちらは息子のエヴァルトです」


エヴァルトは静かに一礼した。


シュトラール伯爵夫人は続ける。


「この子、光魔法の研究に夢中でして」


優しく笑う。


「今日、来ているはずのエーデル男爵家には光魔法の才能を持つ少女がいると聞いているの


 もしお会いできたら嬉しいのだけれど」


エーデル伯爵夫人は頷いた。


「ああ、エヴァルト君


 光魔法研究に傾倒している秀才ね」


少し感心したように言う。


「十歳で論文を書いたと聞いています


 有名なあなたに会えて光栄です」


そう言うと、振り向いた。


「マルガレーテ」


エーデル男爵夫人を呼ぶ。


「こちらがシュトラール伯爵夫人


 それと、光魔法研究で有名なエヴァルト君よ」


マルガレーテは優雅に礼をした。


「はじめまして


 エーデル男爵家のマルガレーテです


 お会いできて光栄です」


シュトラール伯爵夫人は微笑む。


「農業で革新的な作物を作られているとか


 お話はかねがね伺っていますわ」


エヴァルトがまた小さく声をかけた。


「母上」


シュトラール伯爵夫人は苦笑した。


「ごめんなさいね


 うちの子、光魔法に傾倒していまして」


そして言った。


「あなたの家の使用人に光魔法を使える少女がいると聞いたの


 もしよければ、今度お会いさせていただけないかしら」


マルガレーテは少し驚いたが、すぐに答えた。


「今日、連れてきていますわ」


そして言う。


「挨拶させましょう」


振り返った。


「爺や、セリアを呼んで」


だがエヴァルトは静かに言った。


「僕から伺います


 少し話を聞くだけです」


そう言って一礼する。


エヴァルトは爺やに案内され、侍女たちの控え室へ向かった。



その頃。


ロゼッタは何も知らなかった。


エーデル伯爵家の三兄弟と、その友人たちと一緒にボードゲームをしている。


マティアスが駒を動かした。


「王手!」


対戦相手の子供が叫ぶ。


「反則だ!」


他の子も叫ぶ。


「そんな動きしない!」


ロゼッタが笑う。


「マティアスったら」


マティアスは慌てて言った。


「ま、間違えた!


 わざとじゃない!」


エミリアがくすくす笑う。


「負けず嫌いだからしょうがないわね」


子供たちの笑い声が部屋に広がった。



その頃。


侍女の控え室。


セリアは紅茶の準備をしている侍女達に混じって、働いていた。


そこへ爺やが入ってきた。


「セリア」


「はい?」


爺やは少し困った顔で言った。


「客人がお前に会いたいそうだ」


セリアは首を傾げた。


「私に?」


爺やは答える。


「王国魔導研究院


 シュトラール伯爵家の御子息だ」


その名前を聞いた瞬間。


セリアの背筋に冷たいものが走った。


(エヴァルト……)


カイゼルのメモが頭に浮かぶ。


――主人公セリアを探している


(うそでしょ


 こんなところで)


爺やの後ろ。


そこに立っていたのは――


エヴァルト・シュトラールだった。


その紫の瞳が、まっすぐセリアを見ていた。





5時30分と17時の2回更新しています。

よろしくお願いします。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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