第三十二話 初めての遊び
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庭園には澄んだ秋の光が降り注いでいた。
少しひんやりとした風が庭を抜けていく。
ガーデンパーティのテーブルから少し離れた場所で、子供たちは集まっていた。
マティアスが勢いよく箱を開ける。
「よし!これやろう!」
中から出てきたのはボードゲームだった。
フリードリヒが静かに言う。
「待てマティアス。ロゼッタは初めてかもしれない」
エミリアも頷いた。
「ルール説明してあげないと」
マティアスは少し面倒そうに頭を掻いた。
「えー……簡単だよ」
ロゼッタは小さく頭を下げる。
「よろしくお願いします」
三人は少し驚いた顔をしたが、すぐに笑った。
フリードリヒが駒を並べる。
「では始めよう」
ゲームが始まった。
だがすぐに問題が起きる。
マティアスが言った。
「ここ二回動かしていいよな!」
フリードリヒが即座に言う。
「ダメだ」
エミリアも言う。
「ズルよ」
マティアスは不満そうだ。
「えー!」
その様子を見て、ロゼッタは思わず笑ってしまった。
小さな笑いだった。
だが三人は気にしない。
マティアスはすぐに言う。
「ロゼッタの番!」
ロゼッタは少し戸惑いながら駒を動かした。
ゲームは意外と盛り上がった。
マティアスは大声で悔しがり、
エミリアは楽しそうに笑い、
フリードリヒは静かに進行していた。
ロゼッタは思った。
(楽しい……)
気づけば自然に笑っていた。
ゲームが終わると、エミリアが聞いた。
「ロゼッタは普段なにしてるの?」
ロゼッタは少し考えて答える。
「魔力制御の練習です」
マティアスが驚く。
「遊ばないの?」
ロゼッタは小さく言った。
「遊んだことがなくて……」
少しだけ沈黙が流れた。
だがエミリアはすぐに笑った。
「じゃあ今日はいっぱい遊びましょう」
ロゼッタは驚く。
「え?」
エミリアは当たり前のように言った。
「だってお茶会だもの」
マティアスが言う。
「じゃあ次!」
「かくれんぼ!」
フリードリヒが苦笑する。
「庭は広いぞ」
マティアスは胸を張った。
「それがいいんだよ!」
ロゼッタは少し不安そうだった。
「かくれんぼ……?」
エミリアが優しく言う。
「大丈夫。簡単よ」
ロゼッタは小さく頷いた。
「やってみる」
子供たちは庭のあちこちへ散らばった。
落ち葉がさらりと風に舞う
ロゼッタも走り出す。
その瞬間。
腕のバングルがかすかに光った。
魔力がふわりと空気に溶ける。
マティアスが振り向いた。
「おお!」
ロゼッタは慌てる。
「風魔法を使っちゃった!」
だがエミリアは驚いた顔で言った。
「すごい、魔法使えるんだ……」
エミリアは目を輝かせていた。
ロゼッタは固まった。
今まで魔力を見て言われた言葉は
「危ない」
「怖い」
そればかりだった。
「すごい」
と言われたのは初めてだった。
ロゼッタは小さく言った。
「……ありがとう」
遠くからその様子を見ていたセリアはほっとしていた。
(よかった、
ちゃんと遊べてる)
庭のあちこちで、子供たちの笑い声が響いている。
ロゼッタが笑っていた。
セリアは思った。
(よかった、
本当に、
普通の子供みたいに遊べてる)
侍女たちの方から声が聞こえた。
「そういえば最近、教団の人が伯爵領にも来てるらしいわ」
セリアの耳が動く。
「寄付を求めてるとか」
「未来が見える子供がいるって話も」
別の侍女が肩をすくめる。
「でも仕方ないんじゃない?
最近は物価も上がってるし、
戦争はしてないけど、世の中ずっと不穏だもの、
不安な人はすがりたくなるわ」
セリアは黙って聞いていた。
(やっぱり……
広まってる)
セリアは前世の日本を思い出した。
テレビで見たニュース。
カルト宗教。
信者から金を集める教団。
家庭が壊れた話。
社会問題になっていた。
(同じだ……
カルト教団が庶民から金を巻き上げる)
しかも今この世界では――
カイゼルが言っていた。
セイント・サーキット教団は女王派の資金源。
そして、
(レーヴェン侯爵家まで食い込んでる)
セリアは背筋が少し寒くなった。
(相当やばいんじゃないか)
しかもこの国は平和ではない。
戦争をしていないだけ。
地方領主と王家の力関係はいつ崩れてもおかしくない。
国の空気はどこか重い。
まるで。
(終末観……)
不安な時代。
先の見えない社会。
そんな時、人は救いを求める。
(だからカルトが広がる、
逃げ場になるんだ)
セリアは庭の方を見た。
子供たちの笑い声が、澄んだ秋の庭に広がっていた。
その中心で、
ロゼッタが笑っていた。
「楽しい!」
ロゼッタは初めてそう言った。
セリアは小さく微笑んだ。
ロゼッタの楽しいお茶会は、まだ続いていた。
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