第三十一話 従兄弟のお茶会
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ロゼッタの父、ハインリッヒ・エーデル男爵は机に向かっていた。
兄であるクラウス・エーデル伯爵へ手紙を書いている。
娘の正式なお茶会デビューを快諾してくれたことへの礼状だ。
ハインリッヒは筆を置き、深く息をついた。
「今まで何度も誘ってくれたんだけどな」
向かいに座る妻、マルガレーテが穏やかに微笑む。
「ええ」
ハインリッヒは少し困った顔で言った。
「でも子供に“爺やから離れるな”なんて言えないだろう、
余計に惨めな思いをさせるんじゃないかって断ってたんだ」
マルガレーテは優しく言う。
「今回は魔力制御装置のバングルがあるわ、
多少、爺やが離れていても大丈夫」
そして嬉しそうに続けた。
「お庭で走り回れるわ、ロゼッタちゃん」
ハインリッヒは何度も頷いた。
「うんうん」
マルガレーテは幸せそうに言う。
「私たちのかわいいロゼッタちゃん」
⸻
爺やの部屋。
ロゼッタの隣の部屋で、本来は客室として使われる豪華な部屋だった。
セリアの部屋とは比べものにならない。
爺やとセリアが向かい合って座っていた。
「セリア」
爺やが言う。
「エーデル伯爵――つまり男爵様の兄上のところでお茶会が開かれます、
セリアも参加することになりました、
もちろんロゼッタお嬢様の付き添いです」
セリアは背筋を伸ばした。
「はい」
爺やは続ける。
「あちらは伯爵家、
侍女でも男爵家の次女三女が来ます、
失礼のないように」
セリアは思った。
(使用人にも貴族がいるのか!すげえ!)
爺やはさらに言う。
「ロゼッタお嬢様の従兄弟が三人おられる、
長男フリードリヒ様、十二歳、
次男マティアス様、十一歳、
長女エミリア様、九歳、
失礼のないように」
セリアは慌てて言った。
「メモ取っていいですか?」
爺やは微笑んだ。
「はい、いいですよ」
セリアは真剣に書き込む。
「ありがとうございます」
爺やは少し声を落とした。
「セリアは賢いから言っておこう」
セリアは顔を上げる。
「ロゼッタお嬢様は宰相家へ嫁ぐ、
そうなると、この男爵家は後継がいなくなる、
だから本家である伯爵家の次男、マティアス様がこの家を継ぐ」
セリアは思った。
(お家問題大変だ……)
爺やは続ける。
「このことはロゼッタお嬢様はまだ知らない」
「え?」
セリアは驚いた。
「お嬢様に聞かれるか、十四歳になるまで内緒にすることになっている」
「なぜ……私に?」
爺やは穏やかに答えた。
「もしロゼッタお嬢様が宰相家へ結婚する時に
お前を連れて行かなかった場合、
セリアはマティアス様に仕えることになる
だから、間違っても喧嘩しないように」
セリアは慌てて言った。
「しません!、
話しかけられることなんてないでしょうし」
爺やは頷いた。
「確かに」
⸻
数日後。
エーデル伯爵家。
男爵の兄の屋敷である。
広い庭園でガーデンパーティ形式のお茶会が開かれていた。
ロゼッタは少し緊張しながらも嬉しそうだった。
「カミラ様に恩義を盾に無理やり開かれたお茶会とは違うの!
ご招待を受けたお茶会なの!」
少し誇らしそうに言う。
「たとえ従兄弟の家でも!
初めてのお茶会。頑張るわ」
セリアは笑う。
「ガーデンパーティですし、
子供は遊んでるだけでいいみたいですよ」
ロゼッタは困った顔になる。
「遊ぶって……どうするの?」
セリアは首を傾げる。
「え?」
ロゼッタは小さく言った。
「この身体になってから、同年代と遊んだことがないから……
わからない」
セリアは胸が少し痛んだ。
「エミリア様は同い年です、
おしゃべりしてみては?」
ロゼッタは小さく拳を握る。
「がんばる」
(魔力暴走が怖くて従兄弟とも遊べなかったのか)
セリアは思った。
(かわいそうだな……)
⸻
セリアは侍女たちが控えている場所へ向かった。
「エーデル男爵家の侍女見習いセリアです、
よろしくお願いします」
侍女たちは優しく迎えてくれた。
「かわいい子ね」
「頑張ってね」
すぐに打ち解ける。
話題は自然とエーデル男爵――つまりセリアの主人の話になった。
(同じエーデル家だからややこしいな)
セリアは思う。
侍女の一人が言った。
「男爵様にお子様が一人な理由、知ってる?」
別の侍女が首を傾げる。
「偶然じゃないの?」
侍女は小声で言った。
「ロゼッタお嬢様が魔力暴走で傷をつけてしまわないように、
諦めてしまったのよ」
「あら……」
「でも本家の伯爵様には御二男もいらっしゃる、
だからちょうどいいって」
セリアは思った。
(なるほど……
元々いいご主人だと思っていたけど、
さらにいい人だ)
すると別の侍女が言った。
「そういえば最近、妙な宗教が流行ってるらしいわ」
「宗教?」
「セイント・サーキット教団っていうんですって」
セリアは思わず耳をそばだてた。
「未来が見えるとか、救われるとか、
寄付すると幸運が来るらしいわよ、
庶民の間で広まってるって聞いたわ」
侍女が声を潜める。
「未来が見える子供がいるとかいう噂もあるらしいわ、
王家に連れていかれないように、
隠してるらしいわよ」
セリアは思った。
(未来視……?
カイゼル様が言っていた……
かなりやばい宗教じゃない?)
⸻
その頃。
ロゼッタは従兄弟たちの前に立っていた。
「本日はお招きありがとうございます」
長男フリードリヒが優雅に頭を下げる。
「ようこそおいでくださいました、
ゆっくりしていってください」
次男マティアスは笑った。
「久しぶり!
爺やいなくても大丈夫になってよかったな!
遊ぼうぜ!」
するとエミリアが言う。
「ダメよ、
マティアスは乱暴だから、
わたしとおしゃべりしましょう」
マティアスは不満そうに言った。
「ちぇっ!
じゃあボードゲームしよう」
ロゼッタは少し驚いた。
(あれ?)
怖がられていない。
気を遣われてもいない。
マティアスはもうボードゲームを並べ始めている。
ロゼッタは思った。
(あれ?
なんとかなるかも)
小さく笑った。
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