第二十七話 接触
21時に短編「最愛の生け贄」を上げます。
婚約者を奪われた悪役令嬢のバッドエンドをお楽しみください。
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カイゼルは帰りの馬車の中で考えていた。
レーヴェン侯爵家。
中立派の中心。
その家が――
カルト教団に傾倒している。
これはまずい。
王国には現在、三つの派閥がある。
一つ。
グラディウス家――宰相家。
カイゼルの家が属する国王派。
二つ。
レーヴェン侯爵家を中心とする中立派。
そして三つ。
女王を輩出した名門。
ヘリオドール侯爵家の女王派。
今の勢力は――
女王派がわずかに有利。
しかし国王派は次の時代を見据えて動いている。
王太子の婚約問題。
そこに国王派をねじ込み、
次の時代では国王派が覇権を握る。
その計画だった。
だが。
もし。
中立派の要であるレーヴェン侯爵家が瓦解すれば。
派閥は再編される。
国内は混乱する。
外国が付け入る隙になる。
最悪の場合――
女王派が一気に勢力を伸ばす。
カイゼルは小さく呟いた。
「カルトの教祖の名前だけでも明らかにしたい」
だが。
ティアナに接触するのは難しい。
ロゼッタを故意に傷つけようとした令嬢。
そんな人物をお茶会に呼ぶことはできない。
かと言って。
派閥の違うカイゼルが会いに行くのも目立ちすぎる。
カイゼルはしばらく黙っていた。
そして言った。
「……いや、
できるか」
馬車を止めさせた。
カイゼルは再び花束を買った。
今度は――
無難な花束だった。
「レーヴェン侯爵家へ」
馬車は方向を変えた。
⸻
レーヴェン侯爵家。
カイゼルは玄関で執事に告げた。
「僕の婚約者がティアナ嬢に怪我をさせたと聞いた、
見舞いに来た」
そして続ける。
「直接謝らせてほしい」
執事は少し困惑した。
カイゼルはさらに言った。
「ティアナ嬢に伝えてくれ、
ライクラの件で話があると、
ティアナ嬢も会う気になるはずだ」
そして一言。
「早く」
九歳児の言葉とは言え、宰相家嫡男の言葉だ無視できない。
執事は気圧されたように頷いた。
近くのメイドに命じる、ティアナお嬢様に取り継ぐようにと。
カイゼルは念を押した。
「ライクラだぞ、
忘れるな」
⸻
カイゼルは応接室に通された。
しばらくして。
ティアナが入ってくる。
後ろには護衛騎士。
つまり――
監視付き。
ティアナは言った。
「お久しぶりです
カイゼル様」
そして小さく聞いた。
「……あの
ライクラって
ライトオブクラウンの事ですか?」
カイゼルは答えない。
そして――
日本語で言った。
『日本語を覚えているか?』
ティアナの目が見開かれる。
そして日本語で返す。
『ええ、大丈夫です』
カイゼルは短く言った。
『君がお茶会に復帰できるまで
これが最後の会合になるだろう
だから手短に言う』
少し間を置く。
『ゲームの主人公は僕が確保している
安心してほしい』
ティアナは息を呑んだ。
『本当に?』
そして顔を覆った。
『ああ……なんてこと、
本当なら嬉しい』
そして言う。
『ロゼッタさんに……なんてことをしたのかしら』
カイゼルは答えた。
『お茶会に出られるようになったら直接謝ればいい、
ロゼッタは気にしていない』
少し間を置く。
『むしろ君を心配していた』
ティアナは驚いた。
『……本当に?』
カイゼルは言った。
『それより本題だ、
カルト教団の方が問題だ、
何か知っているか』
ティアナは少し迷った。
そして小さく言った。
『お父様が……教祖を家に何度か呼んでいるの、
それでゲームのバッドエンドを確信したのよ』
カイゼル
『教団名は?』
ティアナ
『セイント・サーキット、
教祖は、
マクシミリアン・ヴォン・レイ』
その瞬間。
護衛騎士が咳払いをした。
「……会話を報告する義務があります」
空気が変わる。
カイゼルはすぐに話を切り替えた。
「失礼した、
僕の婚約者が怪我をさせてすまなかった」
ティアナは頭を下げた。
「私が悪いんです。
ごめんなさい、
二度としません」
カイゼルは立ち上がった。
「では。
またお茶会で会おう」
⸻
カイゼルは宰相家に戻った。
すぐに父の執務室へ向かう。
「父上、相談があります」
グラディウス宰相は書類から目を上げた。
「なんだ」
カイゼルは言った。
「レーヴェン侯爵が、
大変危険な宗教に傾倒しています」
宰相の目が細くなる。
「情報元は?」
カイゼル
「娘のティアナ嬢です、
今日、直接会って確認しました」
そして言った。
「教団名はセイント・サーキット。
教祖はマクシミリアン・ヴォン・レイ」
宰相は少し考えた。
「聞いたことはある。
未来視の時間魔法を使う男だと噂されている」
そして頷いた。
「なるほど、
レーヴェン侯爵に近づいていたのか」
そして息子を見る。
「それで、
相談とは?」
カイゼルは迷わなかった。
「その教団、
潰せませんか」
少し間を置く。
「何年かかっても構いません」
宰相は小さく笑った。
「お前は物騒なことを言う」
しかしすぐ真顔になる。
「だが、
放っておけないのも確かだ」
机を指で叩いた。
「中立派の要が外れれば、
国は混乱する」
そして言った。
「任せておけ」
カイゼルは小さく息を吐いた。
少しだけ――
安心した。
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