第二十四話 研究員と販売員
お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが
魔力令嬢の実験室
六番目の花嫁
以上、2篇の短編あげました。
婚約者を奪われたらおこる悪役令嬢のバッドエンドをお楽しみください
5時30分と17時の2回更新しています。
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エーデル男爵家の応接室。
騒ぎの後。
レーヴェン侯爵夫人は何度も頭を下げていた。
「本当にごめんなさい。
人を傷つけるなんて……
この子、今までこんな事をしたことがなかったの」
ティアナは黙ったまま座っている。
腕はすでに治っている。
しかし暗い目で
腕を見つめている。
爺やは静かに言った。
「この件はエーデル男爵に報告いたします」
侯爵夫人は頷いた。
「ええ。
もちろんです。
ちゃんと話し合いましょう」
そして娘を見る。
「ティアナちゃん、
大丈夫?
痛いところはない?」
少し声を強くした。
「どうしてこんなことをしたの?」
ティアナは答えなかった。
ただ目を逸らした。
⸻
その様子を見ながら。
セリアは思った。
(怖かった)
もし。
魔力制御装置がなかったら。
確実に死んでいた。
ロゼッタも。
自分も。
セリアは深く息を吐いた。
そして。
近くにいた研究員に声をかけた。
今回来ていた販売員は一人。
前回は二人だった。
口が軽い方と。
口が硬い方。
今日は――
口が硬い方。
だから。
ダメ元で研究員に聞いた。
「ティアナお嬢様は……」
少し声を落とす。
「破滅願望をお持ちで?」
研究員は目を丸くした。
「え?」
そして苦笑した。
「初対面でもそう思うかい」
少し肩をすくめる。
「まあ、さっきの行動を見たらそう思うか」
研究員は小さくため息をついた。
「四兄弟の末っ子でね、
甘やかされて育った子のはずなんだけど……
最近は自暴自棄なんだ」
セリアは黙って聞く。
研究員は続けた。
「魔法研究に没頭してる時は普通なんだよ。
でも、
淑女教育とか、
社交とか、
そういうのは全部どうでもいいって感じで」
セリアは言った。
「あなた、
ティアナお嬢様のこと心配しているんですね」
研究員は少し照れた。
「娘と同い年なんだ、
だから……勝手に親近感が湧いてしまって」
そして小さく言った。
「なんであんなに自暴自棄なんだろうな」
セリアは思った。
(この人、本当に心配してる)
その時。
二人の横に販売員が近づいてきた。
販売員が言った。
「ティアナお嬢様が自暴自棄になった理由、
一つ聞いたことがあります」
研究員が振り向く。
「なんだ?」
販売員は声を落とした。
「婚約者です。
伯爵家嫡男のエヴァルト様」
セリアは耳を澄ました。
販売員は続けた。
「光魔法を研究しているらしいんです」
研究員が首をかしげる。
「それが?」
販売員は肩をすくめた。
「理由はわからないんですが、
子供達だけで集まった時に、
ティアナお嬢様が、
何度も詰め寄ったらしいんです」
研究員
「詰め寄った?」
販売員は頷く。
「光魔法を使えない人間が光魔法を研究するのはおかしいって、
何度も、
何度も」
研究員は腕を組んだ。
「……なるほど」
販売員は続けた。
「でもエヴァルト様は全然気にしなかったらしい、
それで、
そのうちティアナお嬢様は諦めて、
自暴自棄になっていった」
研究員は言った。
「詳しいな」
販売員は苦笑した。
「妻が本家の侍女なんですよ。
それに、
僕にも子供がいて、
心配になるんです」
少し遠くを見る。
「侯爵夫人が甘やかすのも分かる」
セリアは言った。
「お二人とも、
優しい人ですね」
二人は少し照れた。
その時。
セリアは素早くメモを書いた。
紙を折る。
そして販売員に渡した。
「もし、渡せるなら、
ティアナお嬢様に渡してください」
販売員は紙を見る。
そこには書かれていた。
『豚骨ラーメンがわかるなら、
エーデル男爵家のセリアまで手紙をください』
販売員は笑った。
「ご褒美狙い?」
セリアはにっこり笑った。
「はい、そんなところです」
販売員は少し考えた。
そして頷いた。
「豚骨ラーメン、僕の知らないものを強請るのか。
でも
あんな深い傷を治したんだ、
それくらいはいいか、
妻に渡すように言っておくよ」
セリアは頭を下げた。
「ありがとうございます」
⸻
結局。
手袋型魔導具は却下された。
理由は二つ。
片腕に百二十個の魔石ボタン。
可愛くない。
そして。
成長するたびに新調が必要。
その結果。
ロゼッタは――
ごついバングル型の魔導具を
四つ。
買うことになった。
正直、可愛くないが
仕方ない、
値段。
そして
安全性がすでに証明されていること。
が理由だ。
⸻
ロゼッタの部屋。
セリアとロゼッタ。
二人きり。
セリアが言った。
「ティアナのエンド覚えてます?」
ロゼッタは目を見開いた。
「あ!ゲームの登場人物じゃない!
早く言いなさいよ!」
セリアは呆れた。
「気づいてなかったんかーい」
エセ関西弁で突っ込んだ。
ロゼッタは腕を組んだ。
「あの子のエンドも悲惨よ、
脂ぎったおっさんにいいようにされる。
最低のエンド」
セリアは頷いた。
「ゲームでは魔導科首席のエヴァルト、
ティアナの婚約者ですけど
光魔法研究に傾倒しているらしいです」
ロゼッタは顔をしかめた。
「なにそれ、
地雷じゃない、
魔導学園で主人公に攻略されやすそう」
ロゼッタは少し考える。
「もしも、
転生者で、
セリアがここに居るの知らなかったら
死にたくなるわ」
セリアは言った。
「そう、
それ、
自暴自棄、
たぶん転生者です」
ロゼッタは聞いた。
「どうするの?」
セリアは答えた。
「ブラフ打ちました」
ロゼッタは目を細めた。
「また、
豚骨ラーメンとか言ったんじゃないでしょうね」
セリアは驚いた。
「なんでわかったんですか?」
ロゼッタは呆れた。
「やめなさいよ、
普通に転生者って言ってあげなさいよ」
セリアは首を振る。
「嫌ですよ、
気が狂ったと思われます」
そして言った。
「豚骨ラーメンくらいがちょうどいいんです、
誤魔化せますし」
ロゼッタはため息をついた。
「ほんと変な合言葉」
⸻
翌日。
エーデル男爵家に一通の手紙が届いた。
男爵宛ではない。
ロゼッタ宛でもない。
宛名は――
セリア。
差出人は。
レーヴェン侯爵家。
ティアナ・レーヴェン。
手紙には一言だけ。
「どっちかと言うと味噌ラーメン派」
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