第十八話 家格の合わないお茶会
5時30分と17時の2回更新しています。
よろしくお願いします。
本日も読んでいただきありがとうございます。
もし楽しんでいただけましたら、ブックマークや下の★から評価をいただけると励みになります。
カイゼルは情報を集めていた。
エーデル男爵家のお茶会のあとすぐだ。
宰相家の書斎。
机の上には社交界の予定表と招待状。
カイゼルは静かに言った。
「ノルディア子爵家の出席したお茶会を全部出せ」
家令は驚いた顔をした。
「カイゼル様……?」
カイゼルは視線を上げない。
「全部だ」
家令は慌てて資料を並べた。
カイゼルはそれを見ていた。
(やはり)
自分の予想は当たっていた。
ノルディア子爵家は――
無理をして社交界に入り込んでいる。
本来なら出席できないような高位貴族のお茶会に、強引に顔を出していた。
しかも必ず娘を連れている。
カミラ・ノルディア。
「ジャガイモの流通を提案した才女」
そんな触れ込みで紹介されている。
興味を持つ貴族も多い。
カイゼルは小さく呟いた。
「なるほど」
そして一つの結論に至った。
(ラウレンツ男爵家に嫁ぐことはなさそうだ)
ノルディア子爵は野心家。
商人男爵では満足しない。
ならば――
もっと上を狙う。
カイゼルは社交予定を指でなぞった。
そして一つを見つける。
「……レーヴェン侯爵家」
魔導具で有名な名門侯爵家。
中立派。
高位貴族が多く集まる。
ノルディア子爵家が出てもおかしくない。
カイゼルは決めた。
「ここだ」
⸻
レーヴェン侯爵家の応接室。
広い部屋。
豪華な調度品。
テーブルには紅茶と菓子。
貴婦人たちがおしゃべりをしている。
カイゼルはその光景を眺めていた。
ノルディア子爵夫人がいた。
少し落ち着かない様子で座っている。
どうやらこのお茶会は――
格が高すぎたらしい。
(無理をしているな)
カイゼルは静かに部屋を見渡した。
自分がここにいる理由。
それは少しだけ特別だった。
カイゼルは保護者を伴っていない。
婚約者の決まった者は、同年代のお茶会に保護者抜きに顔を出すことがある。
今回はそれを理由にした。
ただし――
招待状を受けているのが普通だ。
今回は自分から参加を頼んだ。
少しイレギュラーだった。
だが不自然ではない。
本当に不自然なのは。
(ロゼッタだ)
ロゼッタは魔力暴走がある。
社交に出られない。
だから今ここにはいない。
カイゼルは小さく息を吐いた。
そして見つけた。
黒髪ボブ。
灰色の瞳。
メガネ。
カミラ・ノルディア。
カイゼルは近づいた。
「少しいいか」
カミラは驚いた。
「え、か、カイゼル様?」
そして慌てて頭を下げた。
「は、はい、喜んで」
二人は人の少ない場所へ移動した。
カイゼルはすぐ言った。
「時間がない」
カミラは緊張している。
カイゼルは続けた。
「転生者だな?」
カミラの目が大きく開いた。
カイゼルは言った。
「俺も転生者だ」
沈黙。
カミラは混乱していた。
「え……?」
カイゼルは聞いた。
「ライトオブクラウンというゲームを知っているか」
カミラはゆっくり頷いた。
「はい……」
少し苦笑する。
「前世で後輩に勧められて」
そして自嘲した。
「すぐ死んで、あまり面白いとは思いませんでした」
カイゼルは言った。
「安心しろ」
真顔で続けた。
「あれはクソゲーだ」
カミラは思わず笑いそうになった。
カイゼルは続ける。
「なぜ俺に固執している」
カミラは少し困った顔をした。
「本人を前にして言うのは失礼ですが……」
小さく言った。
「時間がないので言います」
カイゼルは黙って聞く。
カミラは言った。
「主人公との心中エンドのCGがとても綺麗で
あの、入水自殺のCG。
ハア」
少し恥ずかしそうに言う。
「それが印象に残っていて、どうしても実物と繋がりたくて」
カイゼルはものすごく嫌そうな顔をした。
カミラは続ける。
「クソゲーでしたけど、
そのCGが見られたので良作だと思いました」
カイゼルはさらにすごく嫌そうなものを見る目でカミラをみた。
「……お前」
一拍おいて、
そして真顔に戻って言った。
「このままだと王弟殿下に嫁いで殺されるぞ」
カミラは固まった。
「……え?」
カイゼルは言った。
「警告したからな
後は自分でなんとかしろ」
カミラは完全に混乱していた。
「え……?」
カイゼルは続けた。
「婚約するなら王弟殿下以外にしろ、
父親をコントロールしろ、
カミラ専用バッドエンドは王弟殿下だ」
カミラは呟いた。
「私専用バッドエンド……」
カイゼルは言った。
「ライトプレーヤーだったんだな」
カミラは苦笑した。
「本当に少し触っただけで
私専用バッドエンド」
そして真面目な顔になる。
「わかりました
王弟殿下は避けます」
カイゼルは頷いた。
「俺ができるのは警告くらいだ、すまない」
そして言った。
「戻ろう、長く二人でいると勘繰られる」
カミラは頷いた。
「はい」
⸻
その後。
カイゼルはノルディア子爵家の動きを監視していた。
しばらくして報告が来た。
「カミラ様の婚約が決まりました」
カイゼルは聞いた。
「相手は」
家臣が答える。
「ラウレンツ男爵家です」
カイゼルは眉を上げた。
「……理由は」
「娘の強い希望とのことです」
カイゼルはしばらく黙っていた。
そして小さく呟いた。
「ゲーム通りにしなくてもよかったのに」
5時30分と17時の2回更新しています。
よろしくお願いします。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
もし楽しんでいただけましたら、ブックマークや評価をいただけると励みになります。




