第十六話 疲れ切ったお嬢様
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ロゼッタは疲れ切っていた。
初めてのお茶会。
予想外の質問攻め。
しかも――
全部カイゼルのこと。
そしてさらに。
セリアからもたらされた衝撃の情報。
カミラが転生者。
ロゼッタはソファに沈み込んだ。
「びっくりしたわ……」
セリアはロゼッタの隣で紅茶を淹れようとしている。
ロゼッタは続けた。
「転生者って聞いてびっくりしたけど……」
少し考える。
「それがどうかした?」
セリアは眉を上げた。
ロゼッタは言った。
「私のバッドエンドには関係ないし」
そして結論を出した。
「放置しましょう」
セリアはため息をついた。
「お茶会でカイゼル様のこと質問攻めにされたんでしょう?」
ロゼッタはむっとする。
「されたけど」
セリアは言った。
「カイゼル様狙いでは?」
ロゼッタは即答した。
「ないない」
セリアは首をかしげる。
ロゼッタは腕を組んだ。
「孤児院では知らないかもしれないけど」
少し誇らしげに言う。
「貴族の間では有名な話なの、
四属性持ちで高魔力の私、
それ狙いで宰相家が政略結婚したって」
セリアは静かに聞いていた。
ロゼッタは続ける。
「つまりね、
貴族の間では有名なの、
この婚約」
そして言い切った。
「入る隙間ないの」
セリアは少し考えた。
「政略婚約が有名なんでしょう?」
ロゼッタは頷く。
セリアは言う。
「なら逆に、
学生の自由恋愛期間狙いとか」
ロゼッタは固まった。
「ちょっと」
沈黙。
「……いや、
ないない!」
顔を赤くして言った。
「だって!
私のこと大切にするって言ったもん!」
セリアはすぐ謝った。
「ごめんなさい」
そして真顔になる。
「でも、グイグイ近づいてくるカミラが不気味なのは確かです」
ロゼッタは腕を組んだ。
「そうね」
しばらく考えてから言った。
「いいこと考えた」
セリアは嫌な予感がした。
ロゼッタは言う。
「カミラに手紙を書く」
セリアは目を細めた。
ロゼッタは続ける。
「それをあなたが届ける」
セリアは言った。
「無理です」
ロゼッタは聞こえなかったふりをする。
「手紙の返事をもらってくるように言うの、
そして手紙には日本語で」
セリアは顔をしかめた。
ロゼッタは楽しそうに言う。
「お前が転生者だと知っているぞ、
狙いは何だ、
使いの者に全部話せ」
セリアは言った。
「爺やが検閲します」
ロゼッタは得意げに言う。
「だから日本語なのよ」
セリアは冷静だった。
「だから、
意味不明な文字が書かれてたら、
爺やが許可出しません」
ロゼッタは固まった。
セリアはさらに言う。
「それに、
私は小間使いです、
お茶会にも出られないのに、
子爵家にお使いなんて、
無理があります」
ロゼッタは不満そうに言った。
「なによ!
否定ばっかり!」
そして怒る。
「何か代案出しなさいよ!
社会人なら言われたでしょう!」
セリアは落ち着いて言った。
「カイゼル様に手紙を書きましょう」
ロゼッタは止まった。
セリアは続ける。
「男爵家が借りを作った家から、
あなたのことを執拗に聞かれました、
カイゼル様のことだから大丈夫だと思うけれど、
ノルディア子爵家のカミラに気をつけてください」
ロゼッタは少し黙った。
「……そうか」
小さく呟く。
「カイゼル様を頼るのか」
そして背もたれに沈んだ。
「しんどい……疲れた……」
セリアは黙っていた。
ロゼッタはため息をつく。
「でも、こういうのは、
早い方がいいもんね」
そして立ち上がった。
「今から書く」
⸻
ロゼッタは机に向かった。
そして――
カイゼルへ手紙を書いた。
内容は。
ほとんど。
ラブレターだった。
「いつも勉強お疲れ様です。
体調は大丈夫でしょうか。
次のお茶会を楽しみにしています」
そんな文章が続く。
そして最後に。
少しだけ。
「ノルディア子爵家のカミラ様が、
あなたのことをとても気にされていました。
カイゼル様のことだから大丈夫だと思いますが、
少しだけ気をつけてください」
そう書かれていた。
爺やはそれを検閲した。
そして――
少し赤くなった。
「……お嬢様、
これは」
ロゼッタは言った。
「普通の手紙よ!」
爺やは静かに言った。
「……そうですね」
⸻
それから数日後。
月に一度の。
カイゼルとの懇親会の日が来た。
本来なら。
今回は。
宰相家で行われる予定だった。
しかし。
エーデル男爵家で行われる事になった。
懇親会のすり合わせの手紙にはこう書かれていた。
「今回の懇親会、
ぜひ、
エーデル男爵家で行いたい」
カイゼルの署名だった。
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