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第十三話 帰還


明日より、2回更新にします。

6時30分と17時、各一話


本日も読んでいただきありがとうございます。


もし楽しんでいただけましたら、ブックマークや下の★から評価をいただけると励みになります。




秋が過ぎ、冬が過ぎ、春になった。


ロゼッタお嬢様は九歳になった。


誕生日会は、爺やが率先して使用人一同で開かれた。


借金男爵家とはいえ、ロゼッタお嬢様にかかる教育費は宰相家持ちだ。


そのため屋敷の生活は、男爵家としてはかなり裕福だった。


もっとも――


その一部を少しだけ水増しして、使用人の待遇を良くしているのだが。


「これは秘密ですよ」


料理長が笑いながら言っていた。


そのおかげで、他の男爵家よりはずっと良い待遇らしい。


屋敷は穏やかな雰囲気に包まれていた。


ロゼッタお嬢様の教育も順調だった。


男爵家の令嬢とはいえ、将来は宰相家へ嫁ぐ。


家格としては侯爵家と同等の家だ。


そのため淑女教育はかなり厳しい。


礼儀作法。


舞踏。


会話。


歴史。


算術。


そして魔法。


ロゼッタお嬢様は四属性持ちなので、魔法の授業が四つある。


火。


水。


風。


土。


その授業はすべて爺やが担当していた。


魔法の出来はとても良いらしい。


四歳以降、魔力暴走は一度も起きていない。


ただし――


淑女教育は少し微妙だった。


まだ九歳なので仕方ない部分もあるが、どうしても集中力が続かないのだ。


ピアノの方も同じだ。


指がまだ小さい。


基本の練習曲が弾ける程度だった。


それでも家庭教師は


「十分優秀です」


と言っていた。


セリアは小間使いとして、できるだけお嬢様のそばにいた。


ピアノは一台しかないので練習はできない。


だが、それ以外の授業は見学を許されていた。


礼儀作法。


歴史。


算術。


最低限の教育は受けられている。


魔法の授業だけは、ほとんど参考にならなかった。


(光魔法だし、

 

 四属性とは全然違う)


そんな平和な日々が続いた。





誕生日からしばらく経ったある日。


エーデル男爵と男爵夫人が屋敷へ戻ってきた。


領地からの帰還だった。


玄関ホールでロゼッタお嬢様を見つけるなり――


男爵が叫んだ。


「私の天使、ロゼッタ!元気だったかい!」


男爵夫人も駆け寄る。


「ロゼッタ!顔を見せて、かわいいロゼッタ!」


次の瞬間。


三人は抱きしめ合った。


いや。


正確には。


ロゼッタお嬢様を取り合うように抱きしめ合っていた。


「お父様!お母様!」


セリアはその光景を少し離れた場所から見ていた。


(両親か、いいなぁ)




セリアは洗い場で雑用をしていた。


そうしたら、メイドたちの会話が聞こえてきた。


「男爵様が領地でなにを投資してたのか、知ってる?」


「何ですか?」


「ジャガイモよ」


セリアは思わず耳をそばだてた。


「ジャガイモってなに?」


別のメイドが首をかしげる。


「新種の芋類よ」


メイドが説明した。


「でも最初は評判悪かったの、


 葉っぱを食べて食中毒起こしたり、


 収穫した芋も保存が悪いと毒が出るし、


 めんどくさい作物なのよ」


「なにそれ、


 危ないじゃない」


メイドは肩をすくめた。


「でもね、


 収穫量がすごいの、


 栄養もある、


 それで――」


声をひそめた。


「ノルディア子爵家が現れたのよ」


セリアは息を止めた。


メイドは続ける。


「冷暗所付きの馬車、


 保存倉庫、


 流通経路、


 全部作ったの、


 さらにね、


 油で揚げると美味しいって宣伝までして」


別のメイドが目を丸くした。


「すごいじゃない」


「そうなの、


 流通と販売方法まで用意してくれたのよ、


 だから、男爵家は借金から解放されたって、


 みんな感謝してるわ」


セリアは思った。


(ジャガイモ……?)


そんな設定あったのか。


ライクラのディレクター、実はすごいやつなのか。


いや――


ジャガイモの事はどうでもいい。


今は


ノルディア子爵家が近づいてきた事だ。


(カミラ……)


セリアの背中に冷たいものが走った。


しばらくして、エーデル男爵家が落ち着きを取り戻した。


セリアはロゼッタお嬢様と二人きりになった。


ロゼッタは小さな声で言った。


「セリア、


 また手紙が来たわ」


セリアはすぐに理解した。


「カミラ・ノルディア子爵令嬢ですか?」


ロゼッタは頷いた。


「よくわかったわね。


お茶会のお誘いが届いたの」


セリアは静かに言った。


「……やっぱり」


ロゼッタは困った顔をした。


「今回は断れないわ」


セリアは苦笑した。


「ですよね」


ロゼッタはため息をつく。


「だって、


 エーデル男爵家の恩人だもの」


ノルディア子爵家。


ロゼッタは窓の外を見た。


「流通を整えてくれたの、


 領地の作物も買い取ってくれてる」


セリアは思った。


(これはもう、


 断れない)


ロゼッタは静かに言った。


「お茶会、


 行くしかないわね」


セリアは頷いた。


だが心の中では思っていた。


(カミラ、


 やっぱり動いてきた)


ノルディア子爵家が近づいてきたことに、


セリアはびびっていた。



明日より、2回更新にします。

6時30分と17時、各一話


ここまで読んでいただきありがとうございます。

もし楽しんでいただけましたら、ブックマークや評価をいただけると励みになります。

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