第十一話 誕生日プレゼント
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ロゼッタは紅茶カップのなかのスプーンをくるくると回しながら、ふと思い出したように言った。
「爺やのこと、まだよく知らないでしょう」
セリアは頷いた。
確かに。
爺やは厳しい。
だが同時に、どこか優しい。
ただの執事ではないことは感じていた。
ロゼッタは少し得意そうに言う。
「爺やね、魔力は高くないけど四属性持ちなの」
セリアは目を丸くした。
「四属性ってそんなにいるんですか」
ロゼッタは即座に首を振る。
「いないわよ」
そして当たり前のように言う。
「宰相家が大金払って雇ってるの」
セリアは思わずつぶやいた。
「四属性ってお金がかかるんですね……」
ロゼッタは苦笑した。
「この家も結構お金かかってるわよ、
魔力暴走対策で防御結界とか張ってるし、
魔導具もたくさんあるし、
家計は大変みたい」
セリアは少し納得した。
(そりゃ借金するわ)
ロゼッタは遠い目をした。
「爺やはね、
私が物心つく前から側にいるの、
だから……」
少しだけ笑う。
「育ての親みたいなものよ」
セリアは静かに聞いていた。
ロゼッタは続ける。
「私ね、三歳まで魔力暴走がひどかったの、
屋敷の窓とか壁とか、何回も壊したっけ」
セリアは思わず想像してしまう。
三歳児が魔法暴走。
そりゃ屋敷も壊れる。
ロゼッタは続けた。
「それでね、
爺やが言ったの」
『何かご褒美をあげますから、頑張ってください』
セリアは相槌を打って先を促した。
ロゼッタは肩をすくめた。
「私、生まれたときから前世の記憶あったから、
だからすぐ決めたの」
セリアは聞く。
「何をですか?」
ロゼッタは当然のように答えた。
「ご褒美にゲームの主人公をねだったの」
セリアは思わず声を上げた。
「人間を欲しいってよくオッケーしましたね」
ロゼッタは笑った。
「私ね、もともと欲のない子だったの
おもちゃも服も興味なかったし」
少し間を置く。
「欲しがったのは主人公だけ」
そしてロゼッタはセリアを指差した。
「それがあなた、
孤児院にいる、
ピンク髪で、
光魔法が使える女の子」
セリアは苦笑した。
「よっぽどゲームが怖かったんですね」
ロゼッタは真顔で言った。
「怖かったわよ、
だって、
ゲームでカイゼル様が攻略されたら、
うち没落確定だったもの、
カイゼルと主人公が心中したら契約白紙で没落。
両親がならず者を雇えば、それをネタに脅され続けて没落。
普通に結ばれても――私は実験室に売られる。『魔力令嬢の実験室』エンド。」
セリアは思わずため息を吐いた。
ロゼッタは続けた。
「私、結構プレイしてたの、
だから詳しいの」
少し胸を張る。
「もしかしたらあなたより詳しいかも」
セリアは肩をすくめた。
「私はバッドエンド担当なので、
シナリオとかフラグはあやふやなんですよ」
ロゼッタは少し笑った。
そして静かに言う。
「それでね、
四歳になって、
やっと魔力暴走が止まったの、
だから、
セリアを側に置けるようになった」
セリアは小さく頭を下げた。
「ありがとうございます」
ロゼッタは照れくさそうに笑う。
「四年間探したらしいわ、
孤児院を何軒も回って、
王都の孤児院は全部調べたって。」
そして少し誇らしそうに言った。
「毎年のお誕生日プレゼント、
我慢して、
セリアをプレゼントしてもらったの」
セリアは少しだけ言葉に詰まった。
そしてぽつりと言う。
「……高いプレゼントですね」
ロゼッタは笑った。
「そうね、
金貨三袋だもの」
そして楽しそうに言った。
「でも、ちゃんと当たりだったでしょ?」
セリアは少し考えてから答えた。
「……今のところは」
ロゼッタはくすっと笑った。
「何よそれ」
だがセリアは思う。
(この子、本気で人生を賭けて、
私を探してたんだ)
それは少しだけ重い。
でも。
悪い気はしなかった。
――少なくとも、
私はこの子を裏切れないと思った。
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