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またまた猫又、以下潜り。  作者: ネコヌコニャンコ


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第九話

久しぶりの投稿になりました。続きです。


 …っ、っく、マズイ、いつまでもこの数でこられると流石にキツい。


 数瞬ですら止まることを許さないというほどに、相手の攻撃が次々と飛んでくる。


 それはどれも足や首、腕や頭といった、一回でも貰えば致命傷になりうるところしか狙ってきていない。


 せめて、どこの位置に誰かがいるのかってのが分かればもう少し楽に対処でき……


 その刹那、こめかみの辺りスレスレを鎌の切先が回転しながら通り過ぎた。遅れて鋭い痛みが走る。


 ちっ、早々にけりをつけないとこっちが不利になるだけ!


「中々いい動きですね。しかし気になっているでしょう?武器がすぐ近くにくるまで知覚できないことを。」


 またしても部屋全体に響くような声が聞こえる。


「そりゃっ、気になるっ…けどっ!今の状況じゃっ…話も、聞けない…でしょっ!!」


 スレスレでかわすので精一杯。悠長に話を聞く余裕はない。


「聞けないのならそれはそれで結構。こちらは約束通りに勝手にお話しいたしますので。」


 あぁ!?こいつ、話すとか言っといて聞かせる気ないとか終わってるんだけど!


 ただえさえ武器たちにも神経割かないといけないのに、話を聞きながらって……だって気になるでしょ!聞かなきゃ損だよ!


「では、まずあなたにとって、とても有益な情報を。私たちが身につけている装備は全て、妖家の認識を完全阻害するものです。その場にいても見つけられないどころか、存在そのものを認知できないものです。」


 存在そのものを認知できない…!??なにそれチートでも使って……ってあぶなっ!?


 またしても喉元を狙ったナイフが飛んできて、上体を逸らす感じで無理やり避けることになった。腰がちょっと悲鳴あげてる。


 妖家の認識を封じる装備って…そんなの完全に対策できないじゃん!!


 ってことは、2人がなんの抵抗もなく連れ去られたのも、そもそも何をされてるのか認識できていなかったからってこと?


「おっと、よそ見はいけませんよ。」


 その声と同時、左腕に果物ナイフが突き刺さる。数瞬遅れて、燃えるように熱い痛みが腕を伝って認識された。


 初めて感じる激烈な痛みに、思わずうずくまって泣き叫びそうになる。だが、そんなことをすれば滅多刺しにされてしまう。


 すぐにそれを引き抜く。幸い、大きい血管に刺さったわけじゃないみたい。


 痛みから涙が流れそうになるけど、歯を食いしばってそれを辛うじて抑え、次の攻撃の方向と位置を冷静に確認する。


 右に頭から足にかけて数本、左からは顔を狙ったのが一本。


 それら全てをバク転をしながら避け、その動きに合わせて、避けきれない分を弾ききる。


「ふむ、先ほどよりも動きが良くなった…背水の陣というものか、肉体設計がそうなのか……」


 男が興奮した様子で呟くような声が聞こえたが、今それを聞いていられる余裕はない。


 次の攻撃が来るまでの瞬間を逃さず、ポーチから一つ飴を取り出し、包装ごとそれを噛み砕いて飲み込む。


 喉に包装のガサガサした感じが残るけどもうそれは仕方ない。


 少し視界がクリアに感じられたところで、またしても刃物が飛来する。


「それでは、次の報酬と参りましょうか。この状況の打破方法についてです。あなたは妖家としてはいわば半端者。ギリギリでこちらの攻撃を避けられていられるのもそのおかげです。」


 少し熱に浮かされたような声で語る男の声に、更に苛立ちを隠せないながらも、どことなく納得する。今度は脇腹を鎌が掠める。痛みはあるけど、腕に比べれば大したことない。


 あの鎌、回転してるくせに軸がブレブレだから動きが予測しにくいんだけど!!


「あなたの力、まだ使ってないものがあるでしょう?それを使ってみたらどうです?」


 男にそんなことを言われ、私はヘルメットの存在を思い出す。でも、使ったところで、視界が狭くなるし、むしろ状況が悪化するのでは…?


 だが、よく考えると少なくとも頭は守れるのか。ならっ…!


 私は避けた瞬間の1番警戒してて無防備な時間を使い、手のひらを頭の上から顎にかけてスライドする。


 視界が一気に狭くなり、自分の呼気が耳元まで聞こえる。


 周りを見渡すと、前面しか見えなくなった分、私に対して5メートルくらい離れた位置で武器を持つ奴らの気配に気がついた。それより少し離れた位置で、先ほどの男が変わらない様子で座っている。


 そいつらは、私が移動するたびにちょっとずつ場所を変えてて、絶対に私の認知できる範囲内に入ってこないようにしているみたい。


 なるほどね、妖家の力を持つ人なら見えない攻撃でも、妖家の力じゃないものを使えば見えるようになるってわけね。


 ついでに、体が軽く感じた。多分さっきよりも速く動ける。


 ……っていうか、なんであの男はあんな助言になることを………


 って、考えてる時間ない!次の攻撃が来る!


 私は、周りを取り囲む奴らが投げてきたナイフの一本を上に蹴り飛ばして掴み、その刀身に飛来する刃物をぶつけて撃ち落とす。でも、後ろからのナイフが足首に当たった。


 ……危なかったぁ〜。この靴じゃなきゃ足やられてたっ!!


 敵のナイフを持ったまま、周りを取り囲む奴らに向けて駆け出す。


 そいつらは目元がサングラスで隠されて見えないが、口角が上がっていて何が面白いのか、ニヤニヤしている。


 そのまま、右手に持つナイフを一閃。両腕と胴体を切った。


 すると、そいつは床に崩れるようにして力無く倒れ込み、口から涎を垂らし、放心状態になっている。


 足先で軽く蹴ってみるけど、なんの抵抗もない。


 やっぱり、このナイフの効果は本当だったみたい。だったら!あとは同じことをするだけ!


 味方が近くにいるからなのか、武器を投げるのを躊躇い始めた、サングラスどもを蹴散らすようにナイフで切っていく。


「あなたが部屋を訪れてから4分30秒経過。想定以上に見えているようですね。ではもう一つ。先ほどあなたが上で戦った人間……いや、実験台は我々の研究の賜物です。まぁ、今回も実験失敗だったようですが。」


 味方がやられているというのに、もはや何も動ずる様子はなく淡々と、またしても情報を渡してくる。


 実験?失敗?よくわかんないけど、今はサングラス軍団を倒して…!


 残りの数は5人。端から切り崩してる感じだからちょうどよく固まってくれている。なら、あとは簡単。


 5人のすぐそばを縫うように駆け抜け、1度目。さらにもう1度、2度駆け抜け、3度目のナイフの攻撃を全員に当てた。


 全員が倒れ、ようやく一息つく。上がった息を整えるように、深く息を吸って呼吸を繰り返す。


 その間、男は何かをするでもなく、ただ私の方をじっと見つめてきているだけだ。


「……それで?あなたは何もしてこないわけ?」


 息がようやく整ったところで、男に話しかける。


「ここまで約6分ですか。これからの成長が楽しみですね。」


 なんか、ちょっと親目線みたいなことを言ってきてるんだけど。え、怖っ。というか無視してるし。こっちの質問。


 少し肩の力が抜けたところで、腕がズクズクとした痛みが、まるで今思い出したかのように感じられた。


 ポーチから飴をもう一個取り出して食べる。ちゃんと包装を剥がしてね。食べにくいな。ヘルメットあると。


「ところで、あなたは今疑問に思ってることが様々あるでしょう。最後に何か一つだけお答えいたしますよ。」


 なんとかして、口に飴を放り込もうとしている隙に男が話しかけてきた。


「そりゃ、たくさんあるに決まってるじゃん。今からでもあんたから聞き出したいんだけど。」


 腕と頬の痛みは治った。こいつの姿も見える。最悪、殴ってでもこいつに吐かせる。


「おっと、私に暴力的なことは控えた方がいいですよ。私の装備だけ特別製でしてね。下手に触れれば手が焼け爛れますよ。」


 え、え…あ、なんかの薬品でも塗ってる感じ?ここ研究施設っぽいしなくはないんだろうけど……


 仕方ない。大人しくこの男の条件飲むしかないか。


 2人の居場所…はもう、この次の部屋ってことはわかってる。


 私だけなんであれらを察知できたか…についても、私が妖家以外の力を持っているからってので間違いなくて……


 じゃあ、この男の目的……いや、絶対にそれよりも大事なことがあるはず。


「そんなに深く考えなくていいですよ。学校の先生に質問するみたいに。」


 色々と考えてる私にそう声をかけてくる男。あれ?思ってたよりいい奴?


 というか、学校の先生か……


「聞きたいんだけど、佐古田って、あれどうなったの?あんたたちが回収したんでしょ?助かる余地があるよね?」


 ふと頭に浮かんだ疑問を投げかけると、男は私を馬鹿にしたかのようにフッと鼻で笑った。


「たしかに回収したのは私たちですが、あの状況で助けられるほど、私たちの技術は進んでいませんよ。私たちはできて、精々喉に詰まらせた食べ物を取り出す程度。心肺蘇生の手段はありません。」


 …………。


「もちろんご安心を。あれはただの実験対象ですので。あちらにも副作用のリスクを説明したのですが、何かの欲に駆られたんでしょうねぇ。二つ返事で被検体役を引き受けてくれましたよ。」


 ………………。


「もちろん、回収した死体についてもこちらで有効活用するのでご安心を。我々の研究の良き資料となるでしょう。」


 …………………。


 気がつくと、男の眼前に左手に持ったナイフを突きつけていた。


「危ない危ない。怪我してしまえば今後に支障が出ますね。それに、ナイフなら眉間を狙うのではなく、お腹か喉か心臓を狙うべきですよ。」


 男はポケットから何かを取り出し、それのピンを抜く。すると、白い煙が発生し、それが消えると男の姿も無くなっていた。



 ……落ち着け。落ち着け私。



 普段より速く強く鼓動する心臓を抑えるようにゆっくり深呼吸する。



 ここでキレても奴らの思うツボ。



 周りに何の敵意がないことも確認して。



 佐古田は私からしたら最悪だけど、あんなのは胸糞悪い。



 思考が反芻してしまうのを抑えるため、ヘルメットを脱ぎ、パーカーのフードも取る。



 しかも奴らはなんとも思ってないどころか、喜んでる。



 右手のナイフをベルトのホルスターにしまい、左手のナイフは、他の武器の近くに置いておく。



 仇を取るわけではないけど、これ以上佐古田みたいな被害者を増やさないために何とかしないと。



 次の部屋に繋がる扉に手をかけて。



 まぁ、私の一時の正義感だけでどうにかなる問題でもないけど。絶対にこいつらは許せない。人の命を軽く扱う奴らなんて。



 向こう側を警戒しながら、ゆっくりと扉を開く。



 私1人で無理ならみんなと協力しよう。いつか、私の友達やその家族に手が行き届いてしまう前に。


 絶対、あの時のことを繰り返さないように。頭の片隅で、上品な金色の髪が揺れた。




久しぶりの投稿になりました。書きたいくせに展開案がいくつも思いついて、優柔不断でいるうちに、私事情で忙しくなっておりました。(言い訳)


次の投稿も未定ですが、自分でもこの後の展開書きたくなっているので、早めに投稿できたらなと。


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