第二十一話
続きです。
ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべて、こちらの回答を待つ狐火先生。何が面白いのか、どんどん酒を煽ってる。
「いや、さっきの話の続きしないんですか?」
「さっきの話、か……今は雅爪が席を外しておるんじゃ、一旦止めておくのがよかろう。あやつにも忘れていることがあるやも知れぬしな。」
……まぁ確かに。おじいちゃんも話を聞くべきではあるのか……
「それで?海莉や、好きな男子はおらぬのか?」
聞くのが楽しみとでもいうような、物好きでゲスな顔をしている。下世話な話しがしたいだけなのだろう。
というか、彩奈と雪愛の視線が怖すぎる。なんというか、ものすごい圧を感じるんだけども。
「好きな男子かぁ……特にいないね。あんまり関わりもないし。」
それとなくって感じで言ってみたが、それがダメだったみたい。
「ねぇ、『特に』ってことはさ、もしかしたらちょっとでも気がある男子がいるってこと?ボク一筋じゃなかったの!?」
いやそもそも一筋どころか、別に付き合ってるってわけでもないし。
というか、なんで雪愛は「そーだそーだ」って感じで頷いてるの???同じこと考えてた?もしかして。
すると、彩奈は何を思ったのか、席を立ち私の後ろに立つ。
「ねぇねぇ海莉ちゃん、もしも好きな人がいるなら教えてね?その時はちゃんと手伝うからさっ♪」
彩奈が何もなしにこんなことを言うのは珍しい。というか、急な心変わりすぎて怖いんだけど。
「えっと、何か企んでない?」
何となく後ろを向けないままきくと、彩奈はむしろ明るい声で答える。
「企んでないよ!ちゃんと海莉ちゃんを惑わす原因を排除する手伝いするだけだからね!」
どこかドヤ顔が見えてきそうな感じの声質だ。
………え、普通に言ってること怖いんだけど。何が怖いって本当に彩奈ならやりかねないところ。
彩奈は私に回してる腕に力を込めて抱きしめる形にする。
「ボクが海莉ちゃんを守ってあげるからね。だからずっと一緒。」
耳元で囁かれ、色んな意味で背筋がゾワっとした。
なんで好きな男子がいないかって聞かれただけなのに、こんなことに……って、なんか彩奈の息荒くない?
彩奈の方を見ると、頬が紅潮していて、はぁはぁと、なぜか息を切らしている感じだった。
まさかと思い、雪愛はポケーっとしている様子で、目の焦点が不安定だ。
「雪愛?彩奈?様子が変だよ?どうしたの?」
少しだけ嫌な予感がよぎって思わず二人にきく。
「ん〜?ご主人様が増えてる〜。やった〜。」
若干左右に揺れつつ、どこか滑舌が回らない感じで雪愛。
「海莉ちゃんを離したくないだけだよ〜。」
と、抱きしめてる感触を確かめるように、目を瞑ってさらにギュッと私を抱きしめる彩奈。
やっぱり、改めて考えると2人の様子がおかしい。なんだか夢心地というか、少し意識が浮いてるというか……
なんとなく2人がこうなった犯人がわかった気がする。
昨日の私の熱の件も考えると、何かしらの力で2人をこんなふうにすることもできるはず。
「狐火先生、2人に何したの?」
狐火先生は食べる手を止め、私を見る。その目は何かを探るかのように、薄く細められた。
「ふむ、やはり海莉にはあまり効果がないか。直接でないとなおのことか。」
何か意味ありげなことを呟く狐火先生。
「効果がないってどういうこと?」
思わず聞くと、狐火先生はお酒の入ったジョッキを持って一口飲み、それを静かに置いてから口を開いた。
「ちょうどいいタイミングじゃ、雅爪の奴が帰ってくるまで少し我の能力について教えてやろうではないか。」
狐火先生は尻尾をゆらりと動かし、それぞれを指を立てるように一本一本立てていく。
「我の家系は見ての通り九尾じゃ。諸事情で今は尻尾が8本だが。」
狐火先生は惜しそうな顔で、尻尾の付け根あたりをさする。
「その諸事情っていうのは?」
「……まぁ、いずれ話す。10年前の事件と関わりがあるものであるからの。」
やっぱり十年前。あの時......一体何があったの?いい加減知りたいんだけど。記憶の抜けているところは特に。
「まぁ、雅爪が来るまでの少しの間じゃ。今少し聞くのは我慢してくれぇい。」
私の表情から何を考えているのか多少読み取ったのか、若干とうずうずとしてきた私をまぁまぁとなだめる。おじいちゃんはどこに行ってるんだか。
「さて、我の能力の話だったな。我の能力は合計九つ。お察しの通り、尻尾の数の分じゃ。」
いや普通に多くない?能力が複数ってだけでかなり力の幅が増えるけど。
「うち二本分がそこの二人に作用しているわけじゃ。基本的には実力的に弱い相手全員に効くのだが......どういうわけか海莉、お主だけ効きが弱いのじゃ。」
そんなこと言われても......私だってその理由を知れるわけじゃないし。
「それで?その二本にはどんな力があるわけ?」
若干胡散臭さを感じてきた。流石に九個も能力があるわけない。だって、彩奈でさえちゃんと能力として数えられるのは三個なわけで。
「まず一本。これは、この姿を出すと必ず避けられないものなんじゃが......己が三大欲求の強化......じゃ。」
気恥ずかしいのか、少し目をそらして頬を赤らめながらつぶやく狐火先生。不覚にもかわいらしいと感じた。
「三大欲求のことはもちろんしておるだろうが、我は中でも睡眠欲以外の二つが強くなるたちでな、飯なら何とかなるが、もう片方が厄介なものになるんじゃ......」
まぁつまり性欲なるものがあふれてしまうと。なるほどね、さっきおじいちゃんを誘ってた感じだったのはそのせいなのね。
「我はある一定の許容を超えると、自分でも抑えられなくなることがあるのじゃ。じゃから、今ここで抑えられなくなれば貴様らを襲うやもしれぬ。」
......え?まじ?この場合って早く逃げたほうがいいタイプ?
「安心しなさい。今は酒でごまかしておる。少なくとも、君たちが寝るまでは問題ないわ。」
逆に言えば、寝た後が大変なことになるってこと?
......そういうことか。おじいちゃんがお酒で酔わせて早く寝させようとしてたのは、その対応が大変だから、対応しないといけない状況を避けようとしてたのか。
でも待てよ......?
「え待って。ってことはさ、おじいちゃんがいなかったらそこら辺の人を捕まえたりするの?」
思わずふと沸いた疑問を口にしてしまった。でも、さっきの言い分だと誰でもいいみたいに聞こえたんだけどね。
狐火先生を見ると、ムッとした表情になっていた。あ、さすがに質問の内容が失礼すぎたか。
「馬鹿を言うな。我は誰にでも尻を振るような安い女ではない。それに、交わりを図る相手は雅爪しかおらぬ。いなければ自分で『処理』もしておる。なんなら試してみるか?」
「いやぁ、お断りしときます。」
即座に断ると、なぜか狐火先生は残念そうな顔をした。おいこら仮にも教師だろって。なんでそんな生々しいもんを話して誘ってるんだ。おかしいだろう。
「......まぁいい。この話はここまでじゃ。話は戻るが、二人に作用しているもう一個の能力の話だったな?」
どことなく重い雰囲気を感じるその様子に、私はごくりと唾を飲み込んで、片手間にいなり寿司を......って、きれいさっぱり無くなってる!?唐揚げも、巻き寿司もない!
落としたか!?とか、ありえないことを考えつつも、思わず周囲を見渡す。すると、リスのごとく頬っぺたをパンパンに膨らませた雪愛がいた。幸福の絶頂とでもいうようなとろけた表情で味わっている。
犯人は発見したけど、戻ってくるわけでもないからおとなしくあきらめよう。あんまり食べれてないけど。
ふと、上を見るとどこか目の潤んだ彩奈がこちらをじっと見つめてきていた。そして彩奈は唐突に顔を近づけ......
「んっ!?」
私の唇に自分の唇を重ねてきた。それ以上はなく、ただ重ねただけであるものの、まるで自分のものだとでもいうように、私の顎を両手で支えてキスを続けてくる。
「ふっふ、やはり効いているようだな。」
なにやら誇らしげに腕を組んでいる狐火先生。一人で納得してないで説明して!視線で訴えると、わかったとでもいうような、嬉しそうなため息をついた。
「これは、さっき言っていなかった、我のもう一本の能力。催眠、あるいは魅了じゃ。」
催眠?魅了?え、そんなことしてきてたの?こっわ......いざとなったら何も逆らえなくなるじゃん。
「安心しろ。我が使う分には悪用はしない。現に、そこの二人にかかっているのは、今の我の感覚、あるいは能力を模倣させるだけの物じゃ。」
「んんぅっ...ぷはぁっ!ええと?つまり、狐火先生の寄っている状態と、三大欲求を強化する能力が二人にかかってるってわけ?」
「まぁ、端的に言えばそういうことじゃな。三大欲求のうち、どれが一番強くなるかは本人たち次第じゃが。」
なるほどそういうこと。なんとなく二人の様子がおかしかったのはそういうタネがあったわけね。
「なんでそんなことしたの?」
......よく考えてみれば、こんなことをする理由がない。何か企んでるのか、ヒプターみたいに私たちの何かを測っているのか、どちらかは分からないけど、でないとつじつまが合わない。
「ふむ、いい質問じゃの。相手の思考を疑う。中々できることではない。」
なんか褒められた。じゃあ、なに?なんかテストしてたみたいなことを言い出し......っ!?
気が付くと、イスを後ろに倒され、床にあおむけの状態になっていた。その上から床に手をついて、私に覆いかぶさるように彩奈が重なってくる。
「ふふっ海莉ちゃん、今夜はちょっと朝まであそぼ?」
そういって私の胸に抱きつき、頬ずりまでする。その間、体はがっしりと捕まれ、簡単に振りほどけそうにない。加えて、椅子のせいで足が上がっており、どうやってもこの状態じゃ動けなかった。
すると、抵抗できないのをいいことにか、彩奈が私の服のボタンをプチプチと外していった。
「海莉ちゃん、ボクと一緒に踏み越えちゃお?」
耳元でささやいて、私の服の内に手を滑り込ませてくる。そしてまるで慣れた手つきで下着をはぎ取ってきた。
「んふふぅ、海莉ちゃんの下着ってちょっとだけ見栄張ってていいよね。」
私の下着をじっと見つめながら恍惚とした表情で語る彩奈。ぞっとすると同時、イラっともきた。だが今は我慢する。狐火先生のせいでこうなったわけだし。
「さ、海莉ちゃんにはボクのをあげるから。」
そんなこと言って、彩奈は自らの下着......それもパンツを脱ぎ、私の顔に乗せる。
「ちょっ、彩奈?流石にそれはダメだよ?倫理的とか以前に、今さっきまではいてたものを顔に乗っけるのは.......」
「ん?普通でしょ?なんならボクは海莉ちゃんのパンツは食べれるよ?」
何言ってんだこいつ。というか、さすがに剥がして!地味に彩奈の体温が残っててホカホカとしてるのがヤダ!脱がされるのはまだ許せるとしても、これは無理!!
頭を左右に振ってようやく剥がすと、なにやら手をワキワキと動かしている彩奈が。
「海莉ちゃんのパンがフワフワか確かめてあげる~。」
わけわからんこと言って私の腰に手を当てる。
「ひぅっ。」
つい声が出てしまった。くすぐったかったせいだ。ちょっと恥ずかしい......
そして、どこか嬉しそうな表情をした彩奈を止めるため、パンツの端にかかっているその手を全力で止めにかかる。
「ちょっと、マジで脱がさないで!お願いだから!ってか力つよっ!?というか狐火先生!彩奈を止めて!」
体制不利な上、いつもの倍くらい力の強い彩奈に勝てず、思わず狐火先生に助けを求める。
しかし、狐火先生はこちらの様子をまじまじと覗きながらお酒を飲んでおり、先ほどの質問の回答をした。
「海莉、我が二人に模倣させたのは、こういうイチャイチャを見たかったからじゃ!!」
力強い声が響く。呆気に取られている間に、彩奈に下の布を奪取された。
......おじいちゃんと同タイプなのかぁ.........味方はここにいない。結局うなだれる私だった。
そのそばでは、嬉しそうに私のパンツをポケットにしまう様子が見えたが、まぁ何もなかった。いいね?
続きかきました。終盤辺りは脳を焼きながらの深夜テンションですので、まぁ、そういう雰囲気だと思っていただければ。あとついでに、この前ビュー数が1000超えまして、それほど読んでくださっている皆さんに感謝です。僕の書いてる作品を読んでくださりありがとうございます。
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