第十八話
続きです
リビングへと向かうと、そこには何かはわからないけど、艶々の白米に、焼き魚に納豆、小鉢に入ったオクラの和物、じゃがいもと玉ねぎ、わかめという最高に美味しそうな味噌汁が並べられていた。
まぁ、リビングはなんか広い会議室みたいなところで、すっごい洋風な装飾なんだけど。
「わぁ、朝からこんな豪勢な食事いいんですか!?」
彩奈が目を輝かせてニコニコしている、立ち姿の素晴らしいお爺さんに聞いた。
「もちろんですとも。しっかりお食べください。」
そう言って私たちを、椅子を引いて座らせてくれた。
「さぁ、お召し上がりください。」
目の前の鼻腔とお腹をくすぐる料理に、思わず笑みをこぼしてしまいそうになりながら箸を手に取った。
「ふんふんふ〜ん♪」
朝から美味しい食事を取れて上機嫌な彩奈が、鼻歌を歌いながら着替えている。
私も私で、先ほどの味を記憶の中で転がしながら思い出す。
あんまり比べるのは良くないけど、おじいちゃんのが優しい味だとしたら、こっちは上品な味だった。
素材本来の美味しさを活かすのがおじいちゃんの料理で、素材同士と調味料で調和の取れた料理がこっちだ。
どちらも甲乙つけ難く、とってもおいしかった。毎日食べたいとなるくらいには美味しかった。
そして、体育の時に毎度同じ空間で着替えているはずなのに、なぜかカーテンの向こうで隠れてコソコソと着替えている。
度々顔を覗かせては引っ込めるという謎の行動をして。
着替え終えて荷物を持つと、先ほどの物腰柔らかいお爺さんに案内されて車に乗せられた。
どうやら学校まで送迎してくれるらしい。
意外にも、その車は大人数が乗れるボックスカーで、花奈の家の雰囲気と少し似つかない気がした。
しかし、これにも理由があるようで、花奈の家では高級車も所有しているものの、送迎の度に騒がれたくないらしく、普通に公道を走っても注目されないような車にして欲しいと頼んだらしい。
「……そういえば、猫山様、狼崎様、花奈お嬢様は学校ではどのようなご様子で?」
車を走らせながら、気になっていたのかお爺さんがそんなことを聞いてきた。
「どんなって言われても…明るくていつも元気ですよ。周りを振り回すけど、人が嫌がるようなことはしない、そんな優しい子ですね。」
「うんうん、あと、猫と女の子が好きだから、海莉ちゃんによくちょっかいかけてるよね〜。」
「ちょっ、ちょっと彩奈ちゃん、それは言わない約束!」
恥ずかしがっているのか、頬を染めて小声で彩奈に注意(?)する。
しかし、運転席にも聞こえていたようで…
「ほっほっほっ、そうですか。それならよかった。お嬢様は世間知らずなところがございますからな。上手くやっていけているか少しばかり不安だったのですよ。」
「ちょっ、ちょっと爺ぃまで…!」
ニコニコで心底嬉しそうに話している。
「小さい頃から野良猫と同級生を追い回すほどヤンチャではございましたが…いやはや時が経つのが早いですな。本当の春を意識するお年頃になるとは。」
ゴフゥと、血反吐を吐き出すようなダメージを受けたように見える花奈は、顔がすでに限界なほどに真っ赤だった。
それを見て彩奈が吹き出す。そして私は、今朝の花奈の言葉を思い出してしまう。
殿方…ね。本当に気の迷いでなかったとしても、私はそれに応えられないというより、応えられるような器じゃない上に、ふさわしくもないからね。
残念だけど、花奈は諦めてもらうしか……
「そうそう、猫山様。雅爪様はお元気でしょうか。久しく顔を合わせておりませぬ故、近々顔合わせをしておきたいと思いまして。」
突然すぎない?なんか怪しさが溢れてるんだけど。いやいや、ただ単に昔の知り合いってだけだろうし、私を通して懐かしくなっただけだと思う。思いたい。
「多分大丈夫だと思いますけど…近々というのはいつ頃…?」
「ご都合がよければ3日後などに……」
3日後ね。別に問題はなかったはず。でもおじいちゃんがいいかわからないから、そこは確認しとかないと。
「わかりました。おじいちゃんに確認しときます。」
「お願いいたします。あの方にはお世話になったのでまた会うのが楽しみです。」
やっぱ、ただただ知り合いだから会いたいってだけだったのかもね。
「お嬢様方、学校に到着いたしました。」
促されて窓の外を見ると、確かに学校の駐車場だった。
荷物を持って降りる。
「それではいってらっしゃいませ。」
他の迷惑にならないためか、すぐにお爺さんは出発してしまった。名前聞いとけばよかったな。後で花奈に聞いておこう。
「さ、早く行こっ?」
彩奈先頭に、私たちは教室へと入っていった。
教室に入ると、少しだけ私に向く視線がある。何故だろう、心当たりなんてないのに心当たりしかない。
「多分だとは思うけど、私を見てる人たちって、昨日放課後残ってた?」
彩奈に聞くと、その通りのようで、
「またたび嗅いで手に擦り寄って、ここで服を脱ごうとしたから、ボクたちが止めたところまで見てるはず。ついでに、どうしようもなかったから、花奈の車に乗せられてるところまで見てる。」
と。
マジかぁ…最悪なんだけど。そんな痴態見られたらもうどんな顔すれば……って思ったけど、昨日の猫語と雪愛の件ですでに痴態に塗れてる気がするから、もう遅いかもしれない。
まぁでも、何も言ってくる様子はなさそうだし、このまま過ごせばいっか。
席について荷物を置く。
「海莉、少しこっちに来い。」
すると、そんな声が聞こえた。狐火先生だ。何か話でもあるのかな?
狐火先生の前まで向かい、そのまま目を合わせる。
「なんですか?」
「昨日は随分とお楽しみだったのかのぉ?」
ニマニマといやらしい笑みを浮かべながら、そんなことを言ってくる。
なぜ、まだ火も消えていないような状況でつついてくるのだろう。花奈の様子がまだ少しおかしいままというか、気の迷いが生じてるのに。
「楽しみも何も、何も覚えてないですよ。」
「そうなのか。またたびか何かで酔ってたかいの?我もたまに酒に酔ってああいう風になるらしい。」
いやそれはどうでもいいけど。なんでまたたびって分かったんだろう?
「顔に出ているぞ。またたびのことを話していないのに何故知っておるのか。それは我が花奈に渡したからじゃ。」
クソ教師だ!狐火先生はクソ教師だ!生徒で遊んでやがる!
花奈も花奈でなんでそれに釣られてるのよ……。
「ふっふっふっ。我特製またたびの効きは相当だったようじゃの?今度雅爪にも使ってみるわい。」
お好きなようにって売りたいところだけど、おじいちゃんが動画内の私みたいになるのを想像するだけで、どうしても怖気がするので、家ではなく他所でやって欲しいよね。
「安心せい。目につかぬところで遊ぶだけじゃ。」
もう遊ぶって言ってるじゃん……やっぱ私も遊ばれてたってことじゃん。
「はぁ〜。もうしないでくださいね?」
重いため息をついて、注意するも、狐火先生はどこ吹く風といった様子で、またやってきそうだ。
というか、流石に妖家の力使ってない間はまたたびは効かないよね?あれは妖家の力的に、猫に寄ってたから効いてただけで。
とにかく、狐火先生は何してくるかわからないから、警戒しておかないと。
「そうじゃ、忘れておった。今日の夜、家に向かうからなぁ、酒といなり寿司の用意を雅爪に頼んでもらってもいいかの?」
涎を垂らして台無しな顔になってたので、とりあえず承知しておじいちゃんに連絡だけ入れておいた。
続き書きました。昨日カラオケで限界超えて喉壊しに行ったせいでものすごく喉が痛いです(阿呆)




