第十七話
続きです。
はぁぁぁぁ…疲れた…。
睡魔と闘った結果、ギリギリ勝つことができた疲労感で、机に突っ伏す。
やっぱり、数学の授業は眠くなる……先生年取ってるから、かなり眠くなる声だし。
「ひゃぁっ!?」
目が重くなってきたところで、ふとネコミミをを指で摘まれる感覚が。
その感覚に思わず悲鳴をあげて、体を持ち上げる。
「ちょっと!にゃんで急に耳触るの!」
顔を上げると、すっごい満足そうな顔をしている花奈がいた。
そのそばでは彩奈がカメラを構えて悪い笑みを浮かべている。
……彩奈が焚き付けたわけね。
「あやにゃ!イタズラするのもさせるのもやめにゃ!?」
「ごめーん、眠そうだったから目を覚まさせようと思ってさ。」
声が笑ってる。絶対にやらせたかっただけじゃん。
当の花奈はというと、触れたであろう手に頬ずりしていた。えっこわっ。
そして花奈の顔がこちらに向く。よくみるとその目は不機嫌で揺れている私の尻尾に。
「だみぇ!私の尻尾は触らせにゃい!」
尻尾を押さえながら立ち上がって後ずさると、手をワキワキさせて近づいてくる花奈が。
「いいじゃぁん、減るものじゃないからさぁ。」
減るものだけど!主に私の精神と忍耐力が!というか手をワキワキさせんな!
「ちょっとだけ、先っぽだけ触るだけでいいから!」
「言い方!!言い方やめて!」
なんで花奈はやりたいことを前にするとこんなに知能が下がるのだろうか。あまりにも変態っぽくなる。だから悪い意味で一目置かれるんだからね!?
「へっへっへっ、ほら、最高にトブもの持ってきやしたから。」
なんか変な口調になった花奈が取り出したもの。
取り出す瞬間に彩奈が少し目を剥いたが、それは何故なのだろう。
気がつくと、知らない部屋の空気と知らない天井があった。
両隣には寝息を立てる彩奈と花奈の姿。外ではチャンチュンとスズメが鳴いている。
何より、私の服は制服ではなく、おそらく花奈の私物であろうピンクのネグリジェを着ていた。彩奈はこんな服持ってないし。
上半身だけ起こして、ふと違和感を感じる。
待って、下着もない。今着てない。いつの間にか脱がされたのだろうか。
部屋の端にカバンはある。
しかし、それは開けられた形跡はなく、単純に行方不明な様子だ。
えっ、何があったの?ってか、なんで私は着替えさせられてるの?
というか、耳と尻尾も勝手に出てたのが消えてるじゃん。それはよかった。強制猫語は終わったってことだし。
それよりも!一体これはどういうこと…???
仕方ない。2人を起こして直接聞くしかない。
「花奈、起きて。花奈?」
頬をペチペチしながら起こすと重そうに瞼が上がる。
目を開けた瞬間は一瞬焦点が合っていなかったが、段々と焦点が合っていき、私と目が合う。
すると、花奈の顔が段々と熟れた桃へと変化していく。
そして、布団を口元まで持ち上げて後ずさり、そのままベッドから落ちてしまう。
え、何その反応。え?怖いんだけど。何かやらかした?私。
そしてその物音で起きたのか、目を擦りながら彩奈も起き上がった。
ベッドから落ちた花奈を真っ先に確認した後、私の方を向いて、こちらも頬っぺたをリンゴにして顔を向けないようにベッドに伏せた。
「えっと……2人とも?」
声をかけると、2人ともビクッと肩を跳ね上がらせた。しかし、返事がなく顔をこちらに向けようともしない。
えぇと…彩奈が引くレベルのとんでもないことやらかしたってこと…?
「私昨日何してたの…?」
尋ねてみるにも、やはり2人は答えてくれない。
昨日の放課後からの記憶がないから、2人に聞くしかないんだけど、当の2人は全く話そうとしてくれない。
え?え?やっぱ私変なことした?
スマホに何か手掛かりがないかを探ろうとして開くも、おじいちゃんに友達の家に泊まるという旨の連絡をしていたのみで、他に何か良さそうな手がかりはなかった。
ふと、彩奈が手にスマホを持って、その画面だけ見せてきた。それは動画だった。
音声が流れるはずだが、それは消しているようだ。
内容はというと……ぁ〜、そのぉ……簡単に言えば、下着姿の私が花奈のお腹に抱きついて頬擦りしていたり、彩奈に何度もキスをしたりしていた。ほっぺただけど。
そして何より、私が2人の身包み剥がして布団で包み、その上から覆い被さって抱きついていた。
その間もほっぺたに頬擦りしていた。
…………えぇとぉ…私は何がどうなってこんなことを……
昨日確か、花奈が取り出したのは……なんだっけ?
考えていると、彩奈が今度は写真を見せてきた。
それは学校で花奈の腕に擦り寄ってる、ものすっごい笑顔の私の姿が。
花奈の手には小袋に入った茶色い粉が。もしかしてこれって…!
「まさか、またたび!?」
思わず声を上げると、2人ともコクコクと頷いていた。
ええとつまり…?花奈が取り出したまたたびのせいで、私は半ば絡み酒みたいなことして、この状況ってこと?
最悪なんだけど。どうしよう。たしかにこれなら2人に顔向けできない。
どことなく気まずい空気が流れて、チラチラと視線を送ってくる2人と目を合わせないように、部屋を見回す。
10畳近くはありそうなめちゃ広い部屋に、キングサイズのベッド。かなりの豪邸っぽい。
窓から見下ろす景色は、花が色とりどりに咲き乱れ、中央に噴水のある美しい庭で、誰かが手入れをしているようだった。
「えっと…一応聞くけど、ここって花奈の家?」
花奈がコクコクと頷く。
嘘でしょ!?花奈の家ってこんな大豪邸だったの!?
普段の様子から全く想像つかないどころか、お嬢様とか言われてもわからないくらいには、上品さとはかけ離れてるんだけど。
「あ、あの、海莉…さん?わたくし、昨日はそのぉ…とても無礼なことを……」
とか思ってたら、急に丁寧な口調の花奈が出てきた。というか、またたびを出しただけで無礼は違う気がするけど。
「いや、むしろなんか変なことしちゃってたみたいでごめん。」
「そ、そんなこと…!むしろ海莉さんからきてくれて私はとても///」
そこで照れるな。こっちまで恥ずかしくなるだろうが。
「というか、なんでさん付け?」
「それは…未来の殿方かもしれないあなたを呼び捨てにできません。」
頬をポッと染めてイヤンイヤンと体をくねらせる。
いや殿方じゃないし。なんでこんなに好かれたんだよ……って思ったけど、花奈って同性の方が好きだったねそう言えば。
「とりあえず、昨日まで通りに喋って?距離を感じるし、普通に話して欲しいから。」
「わ、わかり…わかった。」
よし、なんとかなった…のか?チラチラと向けられ視線がなんだく熱を持った気がするが、いっときの迷いだとでも思っておこう。
そして彩奈は彩奈で、いつもなら話してるところを遮りそうな勢いで自分以外と話してるのを嫌がるのに、今は止めるどころか、むしろ話そうともしない。
やはり、動画内の私の行動が効いてしまったのだろうか。
コンコンと、まるで玄関のような大きな扉がノックされた。
「花奈お嬢様、猫山海莉様、狼崎彩奈様、朝食の用意ができました。学校に遅れないように早めにお摂り下さい。」
「わかったわ、ありがとう。」
ドアの向こうの丁寧な口調の老人にお礼を言って花奈は立ち上がる。
「さ、さて、早く着替えて朝ごはん食べよ!」
なんか変にドヤ顔していた。何故だ。
続き書きました。今回はいつもより早めに書けました。書きたい展開が浮かぶたびにメモしてるのですが、メモし忘れた時はモヤモヤして、お風呂で思い出しては忘れてしまうとかいうポンコツっぷりを発揮しています。




