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31  言葉の通じない人

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イヤイヤ、弟の遙君とはそこまで関係悪くない、はず?


「何なんだ、お前たちはまともな神経じゃない!」


「お父さん! やめて!」


 香さんが慌てて止める。


「香! お前もコイツらの仲間なのか! おかしな事ばかり喋ってる気違いの集団じゃないか!」


「父さんいい加減にしろよッ!」


 遙君も御園父を止める。


「いい加減にしろとは何だ! 親に向かってその口の利き方はッ!」


「お姉ちゃんや僕に文句を言うだけならまだしもお世話になっている人達に失礼な事言うなよ!」


「気違いを気違いと言って何が悪い! 本当の事だろう! コイツらは自分達以外の何万人の人間が死んでいるのに平気な顔をしているんだぞ! 洪水で何人もの人が流されたのをお前たちも見ただろう! なのにコイツらはおかしな事を言ってヘラヘラ笑っているんだぞ! お前は何とも思わないのか! 人としてそんな事で良いのか!」


 どんどん興奮して大声になっていく御園父と香さんと遙君間に挟まれてオロオロしていたわたしの前に原田家父原田浩志さんが割って入ってくれた。


「御園さん、そうやって私達を糾弾すれば貴方は満足なんですか?」


 浩志さんはとても穏やかな方でこれぞ治癒師という感じの方だ。


「こんな事は糾弾等ではない事実だ! あんた達は他の人間を見捨てたんだ! あんたらの親や兄弟はどうした! 会社の人間や、学校の友達、近所の人達はどうした! 見捨てたんだろ!」


「見捨てたさ、それがどうした」


 抑えた声に冷ややかな怒りを感じる。


「ムラ・・・」


「それ見ろ認めたぞ! お前のようなのを人でなしと言うんだ!」


 御園父は勝ち誇ったように村崎君を指差す。


「人でなし? 俺と妹が親にボコボコに殴られてても誰も助けてなんてくれなかったぜ? 家で飯が食えなくて給食が唯一の飯でも給食費払って無い奴は食う資格がないってクラスの奴らに床にぶちまけられたけど? 教師だって黙って見てたぜ? そんな奴ら見捨てたからってどうだって言うんだ?」


 村崎君の怒りを感じたのか紫ちゃんが村崎君の腰にしがみつく。


「ムラもういい、お前が傷つく必要はないよ。紫ちゃんも怖がってる」


 紫ちゃんの様子を見て村崎君はそれ以上は言わなかった。言動は荒っぽいけど良いお兄ちゃんなんだよね。


「親がろくでもないと子供もろくでもないな、大人に対する口の利き方すら知らないとみえる」


 フンッと鼻で嗤う。


「御園さん大人が言って良い事と悪い事の区別も付かないのですか?」


 浩志さんはそんな御園父を嗜めるが


「事実だ、私は本当の事しか言ってない」


 と聞き入れない。浩志さんはため息をついた。


「解りました、では私達も本当の事を、貴方が目を背けている事実を理解していただく。子供達には聞かせたくない話だが聞くかね? 聞きたく無いなら離れていた方がいい」


 静かな口調でそう言われたが誰もその場を離れようとはしなかった。


 


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