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魔王が勇者〜勇者育成所始めました〜 作者:早坂器乃
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11魔女の時間・平和

魔女は置いといて、カーニャたちは…
「ふぁ〜…」


(何だか暇だよね…。
 外はあんなに天気がいいし、外でお茶なんて、素敵なのにね…)

 先ほどの『炎の球体』の件の前となんら変わらない風景がそこにはあった。
 唯一、異なった部分と言えば、紅茶と、お菓子と、マオの右手に巻かれた包帯ぐらい。



「それで、こちらの敷地の位置確認ですが…」


 と、どうやら、キサラギは平常心を取り戻したらしく、テーブルに広げられた書類の説明を再開しだす。

 カーニャは『マオが取り戻した紅茶』を入れ終え、2人の邪魔にならないようにマオの隣にちょこんと腰をかけている。




 ぽりっ


 と、コレもまた『マオが取り戻してくれたクッキー』をカーニャは口いっぱいにほおばった。

(はわわわ〜ん。やっぱり美味しいよね。このクッキーなんて絶品だよ。
 魔界よりも王都の方が色々あって嬉しいよね。
 ほら、形なんかもさ、コレなんてウサギ?の形だったり。可愛いよね)


 口に入りきらなかったらしいクッキーの残りを左手に持ち、右手にはれたての紅茶。
 暇だ暇だと思いながらも、カーニャは目の前の甘いお菓子たちにご満悦の様子。


 その食べる姿の可愛らしさ。

 世界の全ての幸福を独り占めにでもしたかのような、カーニャの幸福そうな表情…。



「うんうん、子供って可愛いよね」
 と見ている大人もまた、幸せになってしまいそうになるのは、それはある意味カーニャの才能なのかもしれない。


 キサラギもつられ、時折、お菓子に手を伸ばしながら、一口食べるたび、おや?っとそれを確認している。
 よほど気に入ったのだろうか?

 次いで、カーニャの入れた紅茶に口をつけるのだが、

 紅茶から立ち昇る湯気ゆげに眼鏡のレンズを曇らされ、急に視界を失う。
 するとティーカップを戻す手が目測を誤り、

 カシャンッ

 と不器用に音を鳴らすこと数回。


 まあ、とりあえず、
 室内には温かな日差しが差し込み、心地よい紅茶の香りが漂う…。
 …限りなく時間がゆったりと流れ、平和そのものの空間がそこにあった。



 優雅に書類に目を通す黒衣の城主、

 人あたりの良い笑みの白マントの客人、

 そしてお菓子をほおばる金の髪の幼い少女。


 兄が年の離れた妹を(もしくは、父親が愛娘を)傍らに置き、商談の邪魔にならないようにと、お菓子を与えている…、そんな風景。





 しかし実質は―――



 【魔王・勇者・竜】の構図。




 なのだから…、
 …世界的に見れば危機的状況のはず、なのだが…。


「こっちの計画書は?」
「ふむ。問題は無い」
「武器庫なんかは確認しても大丈夫かい?」
「無論だ。後に案内させる」

 勇者は目の前の魔王と、穏かに話し、
 魔王にいたっては、王都の生活に順応しきっている。あまつさえ勇者の資格すら持っている、そんな現状。

 そして2人ともに同じ『勇者の資格』を持っている為だろうか?
 なにやらこの危機的状況のはずの空間には『勇者仲間』といった親近感のようなムードさえ感じられる。


(まあ、いいか、私が竜族だってバレなかったし。マオ様も魔王ってバレて無いみたいだし)
 などど、もうすっかり目の前の眼鏡の勇者にカーニャは警戒心を解いている様子。







「それにしても、一体なんの書類なのかな?」
(あれかな?王都の大通りからちょっと外れているけど、この博物館一帯も観光地にでもするのかな?)



 ひょいっ


 と、それまで大人しくちょこんと腰をかけていたカーニャだが、はやり暇と少しばかりの好奇心が首をもたげたのだろう、マオの手元の書類をちらりと見た。





「………」
 と、書類の多さと内容の複雑さに、早くも戦線離脱。


(べ、別に私が分からなくっても良いよ。きっと私には関係ないよね)


 かなりの量があるけれど…。っと、気付けば、テーブルには書類の山。この眼鏡の勇者はどこに隠し持っていたのだろうかと、思うほどの量なのだ。

 丁度、向かいに座っているキサラギの手元が、カーニャからは書類の山が邪魔をして見えないのだから、
 その高さは、ティーカップを2つ積み上げたぐらいになるのだろう…。



 その書類の山を涼しげに一枚一枚確信しながら、目を通すマオ。
 マオの闇色の瞳は書類から離れる事無く、
 まるで、楽しい玩具おもちゃを見つけたように静に揺らめいている。


 ぱらり、ぱらり


 と、包帯の巻かれた右手で、紙をめくる動作さえ楽しんでいるような感じさえする。




(マオ様って普段はこう『面倒くさい』って感じで、だらりとしているのに、こういう小難しい事は案外、好きなんだよね)




 きっとマオは、一文字一句、
 いいやその文字間までも、余す事無くその闇色の瞳に映し出すつもりでいるのだろう、という事をカーニャは今までの経験で理解していた。 



(でも、どうせ人間同士の約束事なのにね

 人間って本当無駄なことが好きだよね。
 あれかな?そのうち眠ったり、息を吸うことにも、約束事がついたりしてね)
 ぽりっ とお菓子を食べながら、カーニャはくすくすと笑った。


 結局、マオは魔王なのだ。
 つまり、どんなに緻密に書かれた契約書であっても、それは人間同士の約束事、
 魔王であるマオには、全く関係が無いことのはず。とカーニャは考えているらしい。




 あっ!


(でも。もしかして。危険な呪いの呪文が書き込まれていたりとか!?それの確認とか!?)


 と、カーニャは急に心配になり、テーブルから目線を移し、同じソファーに座るマオの顔を見た。
 丁度2人の身長差が手伝って、カーニャは殆ど真上を見るような体勢になっている。


 書類越しに、マオの瞳の隅にカーニャが映し込まれた。

 マオはカーニャが自分を覗き込んでいる事に気付き、体勢を動かす事無く、両まぶたをゆっくりと一度閉じ、開く。
 そしてその闇色の瞳を、一瞬カーニャで満たし、すぐさま文字にあけわたした。


 カーニャは、黒一色に埋め尽くされているはずのマオの瞳が、一瞬、黄金に染まった事に、はっとし、

(そうだよ、マオ様のお仕事の邪魔しちゃダメだよね)

 と、反省した。






 ―――思えばマオは、文書を読む事が好きなようだ。

 いや、もっと正確に言えば、『読む事』ではなく『読み解く事』を好む。
 魔界の北の城のマオの部屋の1つには、それこそ、沢山の古文書やら、魔法書やらが溢れんばかりに置いてある。

 人界の図書館のように整然と綺麗に整理された ピシッ とした感じではないのだが、それでも、だらしなく散乱している部屋といった感じもしなかった。
 例えるならば、部屋全体が古い本屋の倉庫といった感じ。

 …そういえば、勇者の仕事で数ヶ月間同じ宿で暮らした時も、いつの間にか、大量の本が部屋の片隅に積み上げられていたような気がする。
 カーニャには全く興味が無く、思い返してみれば、その時、本がテーブル代わりになっていたような気もしないでもない。

 それに、本1つ1つに、『位置魔法』がかけられているらしく、どんなに散乱させても、マオの興味の薄れた本は、翌日には元の場所に戻っていたように思える。




(それにしても…、何で書類って、こう分かりづらく書いてあるんだろうね…。
 こんな無駄に、ダラダラ書く時間があるんだったら、分かり易くする事に時間を使うべきだよ。
 ほら、もっと、絵とか入れてさ!)

 と、自分の理解力の無さを棚に上げ、暇に任せカーニャは書類の存在価値の追求をしだす。


 …のだが、

 そこは食欲旺盛な、そろそろ成長期ですから感のカーニャ、
 どうやら、書類の山よりも、お菓子の山の方がカーニャの視界の占領率は遥かに高い。

 1:99ぐらいの割合、だろうか?

 いいや、すでにカーニャの視界は 0:100 でお菓子に占領されつくしていると推測される。



『カーニャちゃん。私を食べてね。お口がとろけるぐらい美味しいわよ』
『私の方が美味しいわ。ふわふわ〜のさくさくよ〜』

 などど、カーニャの耳には、テーブルに盛られたお菓子の言葉が聞こえているにちがいない。
 その誘惑に耐える事も無いカーニャは、誘惑に魅了されるがまま。



(あのクッキーにしようかな、
 あっちの綿毛みたいなマシュマロもいいな。うふふふ〜)

 しまりの無い顔で幸せそうに微笑み、既にお菓子の国に入国済みのようだ。

ゲーム作りに時間をとられ、前話からだいぶ時間がたってしまいました(すみません)
さて、本来なら、前と今回と次話までが、10話の「魔女の時間」のはずでしたが、
とりあえず、3分割ということで…。

さて、お菓子の国に入り込んでしまったカーニャ姫を勇者マオは救い出すことができるか!?(えっ?そんな話でしたっけ/笑)

狐の森
作者のゲーム作成サイト
「魔王が勇者育てました(仮)」経営ゲーム作成中です

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