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11. エピローグ
姫がうつむいたまま、小さな声で不安そうに言葉を繋ぐ。
その言葉に、自分への思いを理解して僕は安心した。
彼女の不安は僕が取り除いてやればいい。
「そんなことでしたか。」
姫の言葉に、僕はきっぱりと答えた。
「大丈夫です、もう覚悟はできていますから。」
車は二人の自宅まで戻ってきた。
僕は初めて出会った日にそうしたように、僕の首に抱きついている姫の頭を軽く小突いた。
「見えませんよ、どいてください。」
「いや!」
姫は抱きついたまま少しだけ体をずらした。
「無茶苦茶ですね。」
僕は苦笑して、難しい体勢で車をバックでゆっくりとガレージに戻す。
「穂積さん!」
シャッターが完全に閉まると、姫はサングラスとストールを投げ捨て、唇を押し当ててきた。
「あら何?ちょっと!」
「姉貴!?なにやってんだよ!!!」
「ユウ!?」
扉の開く音と共に、穂積の母親とユウの弟、そしてマネージャの声がガレージに響く。
ポルシェの中の二人は慌てふためいて、車から転げるように降りたのだった。
end




