↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
4/6

第四話 受け取ったもの

小さな焚き火を挟み、丸太に座るアイザム。


微風が通り抜け、木の葉が擦れ合う。


「嫌な音だなぁ…。」


顔を歪め目だけを左右に動かした。


そして——音が止む。


カサッ


ガシャン


「……!!」


身体をビクつかせながら勢い良く立ち上がる。


(聞こえた…。今のは絶対……鎧の擦れる音だ…!)


だが、アイザムは再び丸太に腰掛けた。



(ちっ…茂みの中の枝に引っかかった…。バレたか…?)


鎧の男二人は顔を見合せ、茂みの中からアイザムを凝視した。


「他の二人は寝てるみたいだ…。」


「ああ。」


「あの様子から見張りのガキは俺達に気づいてないぞ。」


「じゃあ…一気に行くか。」


二人は剣に手を伸ばし目に力を込める。



「おい…!居るんだろう?」


突然響いたアイザムの声に二人は剣に伸ばしていた手を引っ込める。


「何っ!?バレてるだと?」


「ど、どうする?」


 

——数年前



「見張りの最中には五感を研ぎ澄ませること。特に夜であれば聴覚じゃ。敵が居ると確信したら、まず見られているということを頭に置くのじゃ。そして、気付かぬ振りをする。」


「何で?」


「油断させる。そして、その後に声を上げること。相手の緊張が解れた一瞬に聴覚を研ぎ澄ませる。敵の位置、数——初めは難しい。敵によっても変わるが、分かるようになってくる。」


森が少し開けた野営地、フェルレが寝た頃ブルクはアイザムへ声を掛けていた。


「お主にも何れ見張りを任せる日が訪れる……。忘れるでないぞ。」



——現在



ガサッ


ガサッ


(あの茂みから聞こえた…!!音がズレてたぞ…てことは一人じゃない!)


アイザムは茂みから音を拾い、思わず武者震いをする。


そして、剣を抜いた。



「剣を抜いた…バレたか…。」


「ああ、しょうがない。ガキ一人だ。行くぞ。」


二人は剣を抜き、茂みから身体を出した。

 


「バレちまったらしょうがない。」


「小人族の生き残り…。ガキだが領主の命により、死んでもらう。」


アイザムは二人に向かい歩み寄る。


焚き火を通り過ぎる瞬間、木に身体を預けるブルク、その傍で眠るフェルレに視線を落とす。


(絶対負けねぇ…。)


そしてすぐに鎧を纏う男二人に視線を移す。

 


(意外と小さい。ガキ一人に慎重になり過ぎたな。)


男達はアイザムを甘く見ていた——。


「殺されても恨むなよ!?」


その言葉と共に、焚き火に燃える木片が大きく弾けた。


一人の男は大きく剣を頭上に掲げる。


(大振りだ…。)


アイザムは冷静だった。


大きく見開く視線の先——男達が振り上げた腕によって露になる鎧の隙間。


鎖帷子が薄く縫い付けられていたが、アイザムは地面を強く蹴り上げ、その隙間目掛けて刺突を繰り出した。


ドシュッ


肉に刺さる感覚がアイザムの手に伝わる。


ギリギリと歯を食いしばり、体重を剣に乗せた。


刺突は鎖帷子を突き抜け、鈍い音を響かせた瞬間、赤黒い血が吹き出る。


瞬く間に地面に小さな血溜まりを作り、火の光に鈍く反射した。


「ぐ、うぎぁぁぁっ!」


一瞬だった。


隣でそれを見ていた男は一歩下がる。


(フェルレを守った時と一緒だ…。身体に刺さる俺の剣…。俺は人を殺して強くなった…。)


アイザムは震え出した剣を握る手を見つめる。


そして、静かに眠るフェルレの顔に振り返る。


ギリッ


強く歯を食いしばる。


(違う…!俺は守ることで強くなれたんだ……!!)


アイザムは男に突き刺さる剣を抜き、男の剣を弾き飛ばした。


男は力が抜け、脇を押さえその場に座り込む。


「俺は負けないぞ…。負けれないんだよ!お前達の命を奪うことも出来るんだ……!!」


強く言い放ち、一歩下がった男に前進する。


「どうするんだ!!今ならそいつは助かるぞ…?」


溢れ出る血は止まらず、男は呻き声を上げる。


「ぐっ…。だが!」


「だがじゃない!!仲間を連れてどっかいけ!俺達小人族に構うな!!」




ブルクは片目を僅かに開け、見ていた——。


カチッ


いつでも抜けるようにしていた剣を納める。



そしてアイザムは剣先を地面に向け、横に薙ぎ払い威嚇する。


「さあ!仲間が失血で死ぬぞ…。俺の気の変わらない内に早くしろ!!」


「わ、分かった…!」


男は剣を納め、血に塗れた男を担ぐ。


「これだけは言っておく。これからもお前達小人族は狙われるぞ…。」


「そんなことどうでもいいさ。俺はお前達を逃がしたが絶対に許すことはない。覚えておけ…!」


そうして、二人の男は引き返す。


アイザムはその姿が見えなくなるまで剣を強く握っていた。


「っふぅ…。やったぞ…じいさん。フェルレ…。」


ドッと疲れが押し寄せ、剣を地面に落とし丸太に腰掛ける。


「少し…怖かった…。」


ブルクとフェルレを見つめる。


(間違う所だったよじいさん。俺は殺すことで強くなったと思ってしまった。あんたに剣を学んで本当に良かった。)


アイザムの瞳から涙が零れる。


「っあ…。思い出した。見張りの時……」


『命を狙われるワシらにとって見張りの時に大切なことは、まずは敵に見つからないように火を消すんじゃ——。』


「一番初めに教わったことじゃんか…。」


アイザムは自分の頬を叩き、焚き火を消した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。