魔王の治めていた国の国王夫妻として王女と一緒に向かうことになりました
アンジェはゲームのようにあっさりと婚約破棄されたけど、破棄した皇子と聖女があっさりと軟禁状態になってしまった。
えっ、これで終わり?
全然ゲームみたいでないんだけど……
俺は皇帝と宰相と外務卿を見た。
魔王を倒した時と比べて、バルトは白髪が増えたし、宰相は髪が薄くなり、外務卿は髪が増えていた……
えっ、増えてる?
増毛したのか?
後でアンジェに聞いたらカツラでしょってあっさり言われてしまった。
この世界でも増毛はないみたいだ。
こいつら見ると本当に俺も年取ったと思えてしまった。
「で、アンジェリーナ嬢。君には悪いことをしたな」
皇帝が謝ってくれたが、
「おいおいバルト、謝って済む問題じゃないだろう。どうしてくれるんだよ?」
俺が一言文句を言った。
言ってなんぼだ。
「ラフィー、私も悪いところ遭ったと思いますから、陛下の紹介に期待しています」
アンジェはそう言うが、バルトの紹介か?
まともな者がいるのか?
「仕方が無い。俺の所に来るか?」
皇帝がいやらしい目でアンジェを見てくれた。
日々アンジェがこの皇帝の慰み者になる。
そう考えただけで俺の頭は沸騰した。
「何を言っているバルト! アンジェを貴様には絶対にやらん」
その瞬間俺は凄まじい殺気を放ったらしい。
「「「ギャッ」」」
その殺気を受けた宰相と外務卿が倒れそうになるし、後ろの近衛が二三人倒れていた。
次の瞬間、
「陛下、以下がなされました」
近衛達がなだれ込んできた。
「何でもない。気絶した奴を後ろに下げて貴様らも下がれ」
バルトが近衛に手を振った。
「何もなければ良いのですが……」
近衛達は不肖不肖下がってくれた。
「しかし、凄まじい殺気だな。何故この年で未だにこれだけの殺気を放てる?」
「ふんっ、貴様とは鍛え具合が違うのだ」
俺はバルトに言い返していた。
「冗談だ。アンジェリーナを貴様から取り上げたら、殺される未来しか見えんわ」
「と言うか、魔王が降臨して帝都壊滅ですな」
「帝都の壊滅どころか帝国が壊滅します」
「下らんことを貴様等が言うからだろうが……」
俺が怒った。
「まあ、冗談ではすまぬな」
バルトがお手上げだと肩をすくめてくれた。
「ラフィー、そこまでアンジェリーナ嬢に執着するならアンジェリーナを娶れ」
「何を言う。俺は引退した老騎士だぞ。姫様が俺で納得するわけは無かろう」
「アンジェリーナ嬢はそれでも良いと言っているが……」
「ラフィー、私、ラフィーのお嫁さんになりたい」
「いや、しかし……」
俺はアンジェの保護者だ。
そんな訳にはいかない。
俺は首を振った。
「ほう、貴様そのような事を言っているとまたアンヌの時みたいに横からかっ攫われるぞ」
バルトは嫌なことを思い出させてくれた。
「ラフィー、ドリーム王国を知っているか?」
いきなりバルトが話題を変えた。
「魔王が治めていた国だろう。今はお前の腹違いの兄が治めていたのでは無いのか?」
俺は訝しく思いながらバルトに答えると、
「そうだ。実はその国王とアンジェリーナ嬢の婚姻の話が持ち上がっている」
「何だと、相手は俺よりも年寄りではないか」
俺は激怒した。俺が今まで手塩にかけて育てたアンジェをそんな年寄りの配偶者になるために育てて来たのではない!
「その話にダニエルがとても乗り気だ。そこの大使もそうもうしておる」
「左様でございます。王妃様もシャルロッテ様もとても喜んでおられました」
大使のガマガエルがニヤニヤと笑ってくれた。こいつは俺に殺されたいらしい。
「ダニエルの奴!」
俺はあのダニエルを思い出していた。アンジェノ父なのに何を考えているのだ。
こんな可愛いアンジェを老人のところにやるなんて許されない。
でも、アンジェはなんか達観した顔をしている。諦めたのか?
「アンジェ!」
俺はそんなのを許したくなかった。
というか、アンジェをそんな奴に渡したくなかった。
「このまま行くとアンジェリーナ嬢とドリーム国王の婚姻が決まるぞ」
「はああああ! そんなのは俺は許せん」
「許せなかったらどうする? アンジェリーナを連れて逃げるか?」
「アンジェが嫌がったらそうする」
「二人しての逃亡は大変だぞ」
「覚悟の上だ」
俺はアンジェを見た。アンジェが俺を見上げてくれる。
別に2人で生きていこうとすれば行けるだろう。
俺は腹をくくった。
「ダニエルは早くも玉璽を押した結婚証書をここに送ってきた」
バルトが書類を見せてくれた。
「左様にございます。もう、剣聖殿が何を言っても遅いですぞ」
大使はニヤニヤ笑っていた。
俺が切れて殺されたいらしい。
「こんなのが許される訳はなかろう」
俺は激情した。
「反対するのか」
「当たり前だ」
「でも、アンジェリーナ嬢が賛成したらどうする」
「はあ、そんなのはあり得ないが、アンジェの意志は尊重する」
「もし、アンジエリーナ嬢がお前に一緒に来てほしいとお願いしたらどうする」
「あんな危険なところにアンジェを1人でやる訳には行かんから俺も行こう」
「二言はないな」
「剣聖の名にかけて」
「アンジエリーナ。どうする? ドリーム王国に行くか」
「はい。私はドリーム国王に嫁ぎたいと思います」
「あ、アンジェ」
俺は唖然とした。アンジェが老人の元に行く?
そんなのは許せなかった。
おれはとても動揺した。
「ラフィー、それで良いのか」
「いや、しかし……」
「ラフィー私と一緒にドリーム王国に来て」
「いや、行くのは全然構わんが、ドリーム国王に嫁ぐというのが気に入らん」
「じゃあ、ラフィーが私を娶ってくれるの?」
「いや、俺は」
「私が頼んだら私と一緒になってくれる?」
「いや、それは」
「なら私はドリーム国王に嫁ぐわ」
アンジェが毅然として言い出してくれた。
「はっはっはっ、こうなっては剣聖様も形無しですな」
大使が笑ってくれた。
「アンジェ」
俺は唖然とした。
目の前が真っ白になった。
「実はの、ドリーム国王から引退願いが出ているのだ」
突然バルトが言い出した。
「何故だ?」
「あの国は魔族もいるし中々治めにくい土地柄だ。もう止めたいらしい。まあ、そこに大魔術師と聖女の娘のアンジェリーナが王妃として行くのは現地も歓迎すると思うぞ」
バルトが淡々と言ってくれた。
「後はその息子達が継ぐのか?」
「その息子達もいやだと言ってきた」
「なんだそれは?」
「帝都にいる方が気楽なのだそうだ」
「何たる軟弱。」
「で、現地から行ってきた国王候補の名前があってな。そいつが認めてくれたらアンジェリーナ嬢の配偶者になる」
「誰なんだそいつは?」
俺はぎょろりとバルトを見た。
「そいつが断ったら俺が国王代理になるか? アンジェリーナ嬢を側妃として娶ることになるか」
「それだけは許さん」
俺がバルトを睨み付けた。
「では、その男をラフィーが頑張ってやらすように持っていくことだな」
「誰なんだそいつは。俺が認めない限りアンジェリーナはやらんからな」
俺が叫んでいた。
「ならばもう良かろう。良いなラファエル・サンティー二。貴様を第二代ドリーム王国国王に任じる」
「はい?」
俺はバルトが何を言っているか一瞬理解できなかったのだ。








