皇子と聖女は逆恨みして王女に襲いかかったので軟禁されることになりました
俺は馭者に頼んで皇宮へ向かってもらった。
でも俺はどんよりしていた。
結局、アンジェはエーベルから婚約破棄を言い渡されてしまった。
この一学期丸丸あったのに、エーベルトの関係を修復できずに、アンジェが婚約破棄されてしまった。
「ラフィー、どうしたの? 浮かない顔をして」
俺の隣にアンジェが座ってくれた。
「いや、せっかく姫様とエーベルの婚約をお膳立てしていたのに、婚約破棄されてしまったなと思って」
俺はぽろりとそのままの気分で言ってしまった。
「あのう、ラフィー……私は別にエーベルの事なんてなんとも想っていないからショックも何もないわよ」
アンジェがあっけらかんと笑ってくれたけれど……
変だ。
ゲームではあれだけエーベルに執着していたはずなのに!
何で平気なんだろう?
「それよりも私はこうしてラフィーと一緒にいられる方が嬉しい」
そう言って俺にもたれかかってくれるんだけど……
いや、絶対に変だ。
親と一緒にいる感じなんだろうか?
親離れできていない?
そう言えば反抗期はなかったし……
いや、まてよ……そう言えば反抗されたことはいろいろあった。
口きいてもらえないことも多々あったし……
特にここ最近は多かった。
「いや、姫様、そう言ってもらえると俺もとても嬉しいですけど……」
俺がちゃんと話そうとした時に、アンジェの唇が俺の唇を奪ってくれたんだけど……
「……!」
そのままアンジェの甘い舌が俺の舌を絡め取ってくれるんだけど……
嘘!
さすがに俺は固まってしまった……
頭が真っ白になってしまった。
いや、これは親愛のキスではないよね……
その時に馬車が止った。
トントンとノックされる。
「はい」
あわててアンジェが俺から離れて返事してくれた。
そして、扉を開けた侍従の先には目を大きく見開いたバルトの侍従のハーゲン子爵だった。
「ラファエル様、いかがされましたか?」
「いや、なんでもない」
俺は慌てて、馬車を降りた。
失敗した。アンジェとキスしているところを見られたか?
動揺を必死に隠して、アンジェに手を差し出した。
アンジェが俺の手を掴んでゆっくりと馬車を降りてくれた。
動きもとても優雅だ。
なんかアンジェはとても大人びていた。
でも、俺はキスされたショックが抜けきらずに反応が機械じみていた。
そのままハーゲンが先に立って誘導してくれた。
こんなキスはもう止めさせないと……
アンジェは俺の腕に抱きついてくるんだが……少し近すぎる。
俺達はバルトの執務室の横の応接室に案内された。
「まあ、座ってくれ」
バルトが奥の席に座っていて、その隣の斜め向かいの席を指してくれた。
既に、エーベルとミーナは座っていた。その向かいの席に座らされる。
奥の席のバルトの両横には宰相と外務卿が座っていた。
俺達の横の端の方にはいなくても良いのにフランク王国のベルクール大使までいた。
こいつはニヤニヤ笑ってくれていた。
本当にむかつく奴だ。
「最初にラファエルとアンジェリーナ殿にあのような場でエーベルが婚約破棄を言いだしたことをお詫びしたい」
バルトが切り出してくれた。
「しかし、お祖父様!」
「エーベル。例え何があったとしてもだ。皆の注目を浴びるような公の場でいきなり婚約破棄するなどなどあり得ないぞ。お前の婚約については俺とフランク王がサインしている正式な国と国との契約だぞ。一皇子があのような場で婚約破棄を言い出せるものではないわ」
バルトはエーベルを諭そうとした。
「なるほど。確かに血が上りすぎていて、冷静な対処が出来ておりませんでした。剣聖殿、申し訳ありませんでした」
エーベルは俺に頭を下げた。
「アンジェリーナ殿下にも頭を下げろ」
「しかし……」
「殿下!」
横から宰相が取りなすように言った。
「アンジェリーナにも申し訳なかった」
不承不承エーベルは頭を下げた。
バルトは大きなため息をついた。
「で、今回の件だが、ミーナ嬢が暴漢に襲われた。その暴漢が『アンジエリーナ殿下の為にミーナ嬢を殺す』と言っていた。その暴漢を駆けつけたエーベルが殺したという事で間違いないな」
バルトはエーベルとミーナを見比べて淡々と事実を述べてくれた。
「そうです。私、まさか、アンジエリーナさんに命を狙われるほど恨まれていたとは知らなかったのです」
「怖かったろう、ミーナ」
「はい、エーベル様」
ミーナはブルブル震えてエーベルに抱き抱えられていた。
俺はそれを見てむっとしたが、バルトも目を点にしいた。
「その件だが、何故アンジェリーナ殿下がミーナ嬢を憎む理由があるのだ?」
バルトが理由を尋ねてくれた。
というか、アンジェは何もしていないぞ!
俺はそう言いたかった。
「私とエーベル様の間に真実の愛が生まれて、自分がないがしろにされてこのままでは婚約破棄されてしまうと危惧されたからですわ」
「そうです、お祖父様。完全な逆恨みです」
ミーナとエーベルはアンジェを鬼の仇のように憎々しげに見ていた。
「外務卿。これについてどう思う?」
「そもそもエーベルハルト殿下の婚約者はアンジェリーナ様です。真実の愛が何かは知りませんが、そのような理由で婚約破棄は出来ません」
「「えっ?」」
外務卿の言葉にミーナとエーベルはキョトンとしている。
おいおい、こいつらは常識は無いのか?
俺はあきれ果てた。
「エーベルハルト殿下。はっきり申し上げますが、婚約者でもないのに、公の場はもちろんのこと私の場でも婚約者以外の女性と触れ合われるのは避けていただきたい。何度も愚息を通して注意したと思いますが……」
宰相ははっきりと言い切ってくれた。
「はい? 俺達は真実の恋で」
「真実の恋など小説の中だけの話です。法律上どこにも入る隙間はありません」
宰相がはっきりと宣言した。
「エーベルハルト、お前は帝国を代表してアンジェリーナ殿下と婚約したのだ。その婚約者をないがしろにするなど言語道断だ。アンジェリーナ殿下から損害賠償請求された場合逃れる訳にはいかないぞ」
バルトが指摘してくれた。
「既にいろんな貴族から俺の所に苦情が上がっている。『剣聖様が育てられた婚約者のアンジェリーナ様をないがしろにしているのはどういう事ですか?』とな。『そのような方が帝国を背負うのは難しいのではないですか?』とまで言われているのだぞ」
「そんな、誰が言ってきているのです?」
バルトにエーベルが不満そうに聞くと、
「過半数の公爵家と侯爵家、伯爵家も過半数だ。子爵家と男爵家は統計を取っていないが多いと思うぞ」
バルトは首を振った。
「しかし、今回ミーナがアンジエリーナの意を受けた暴漢に襲われたのは事実です」
エーベルが言いだした。
「違うぞ、エーベル。アンジェリーナ嬢の名を語った暴漢にだ」
バルトがはっきりと訂正してくれた。
「はい? 一番怪しいのはアンジェリーナでしょう」
思わずアンジェに掴みかかろうとしたエーベルだが、俺がずいっと前に出た。
「確かに状況証拠ではそうかもしれないが、今回の件で一番得するのはミーナ嬢だ。アンジェリーナ殿下としては全くプラスになる要因が無い。心のない貴族など『殿下の自作自演ではないのですか』と言いだしているのだぞ」
バルトが指摘した。
「そんな事は一切しておりません」
「ミーナ嬢を襲おうとした暴漢だが、元々は教会の養老院に世話になっていたそうではないか? 暗部からは教会が噛んでいる可能性が大きいと書類が上ってきている」
「そんな訳は……」
「なんて事なの! 悪役令嬢アンジェリーナ。貴方また私を嵌めたわね」
そう言うといきなりミーナがアンジェリーナに掴みかかろうとした。
俺はアンジェを抱き上げると後ろに飛んでいた。
「ちょっと、待ちなさいよ!」
「止めろ、ミーナ!」
エーベルが押えようとしたが、慌てた近衞騎士がミーナを取り押さえる。
「アンジェリーナ。貴方こそ、エーベル様という婚約者がいながら、そこの騎士と出来ているじゃない!」
ミーナは俺達2人の息の良さを指摘してきたが16年間一緒に修羅場を乗り越えてきたのだ。
息が合うのも当然ではないか。
「貴様と一緒にするな」
俺は思わず反論していた。
「ええい、離しなさいよ」
「ミーナに触れるな」
半狂乱になったミーナとエーベルがこちら来ようとして取り押さえられた。
取りあえず、取り押さえられた二人は、落ち着くまで別室に軟禁されることになった。








