王女の誤解を解こうとしたらキスされてしまいました
俺はアンジェが俺の姓になりたいと聞いて養子縁組をして完全な親娘になりたいということだと思った。
だって俺とアンジェは正確には44も年が離れている。
俺が前世、美奈ちゃんに勘違いして好かれていると思った時も30位は離れていたけれど、今回はそれ以上だ。それにアンジェは俺から見ても絶世の美少女で、前世ならアイドル確実の少女だ。
俺が今まで手塩にかけて護ってきたけれど、いくら剣聖と言えども俺なんかを好きになる事なんて無いと思っていた。というか、前世の記憶もあるから、俺は女にはとても臆病になっていたし、俺には色恋なんて絶対に無理だと諦めていた。
それにアンジェはアンヌが死ぬ前に俺に託してくれた女の子だ。俺が自棄になっていた時に、生きる希望をこのアンジェが与えてくれた。
そう前任者の記憶も述べていた。
アンジェは俺にとって女神その者だった。
俺はここまで、大半は前任者が死に者狂いでアンジェを護ってきたし、俺に代ってからもこの可愛いアンジェをずっと護ってきた。文字通り命をかけて。
その女神というか天使に俺が恋愛感情を抱くなんて許されない。
それに俺はもう60歳で余命も長くないはずだ。
そんな俺がこんな若いアンジェの未来をしばりたくない。
アンジェにはこれから未来のこの帝国を背負うエーベルハルトと末永く幸せに過ごしてほしかった。
そうだ。そうしなければいけない。
アンジェとエーベルは今は上手くいっていないかもしれないが、ミーナさえいなくなれば上手くいくはずだった。
最悪あの邪魔な転生者を亡き者にするか?
あいつさえいなければ、アンジェは幸せになれるはずだ。
いや、まあ、そのために殺人を犯すというのもおかしい。
俺は頭がパニックになっていた。
というか、今はアンジェをどうするかという問題があった。
アンジェは俺に結婚したいと遠回しに言ってくれて、俺は前向きに考えると返事してしまった。
ここは考えた結果やはり難しかったという事で話を元に戻そう。
俺は風呂から出ると衣装に着替えて、アンジェの部屋に向かった。
トントン
とノックする。
「ラファエル様ですか。少しお待ちくださいね」
中でバタバタ足音がして
「どうぞ」
と言って中から扉が開けられて、アンジェは青いドレスに茶色のレースがこれでもかと何重にも飾られていたドレスを着ていた。
その姿はきれいだった。
が、
「キャー」
俺を見てアンジェが悲鳴を上げてくれた。
「ラファエル様。ズボンを履かれていないです」
侍女のマヤが注意してくれて、
「えっ?」
俺は慌てて扉を閉めた。
アンジェの事で頭がいっぱいでズボンをはかずに来てしまったらしい。
「ラファエル様。ぼけられるのもほどがありますぞ」
セバスにまで怒られてしまった。
「少しお待ちくださいと申し上げましたのに」
セバスがズボンのほつれを見つけたので、直していた途中で俺がさっさといなくなってしまったらしい。少し頭がパニックになっていたみたいだ。
その後、セバスに騎士服の盛装でビシッと決めてもらって俺はアンジェの部屋に向かった。
「アンジェリーナ殿下。私と一緒にサマーパーティーの会場に来て頂けますか」
扉を開けると俺は今度こそアンジェの前に跪いて手を差し出したのだ。
「剣聖ラファエル・サンティーニ様自らエスコートして頂けるなんてこれほどの栄誉はありませんわ」
アンジェも芝居かかって返事して、俺の手を取ってくれた。
俺はアンジェの手を取って大階段をゆっくりと降りた。
そう、俺はアンジェリーナ王女殿下の一護衛に過ぎないのだ。
そう、それで人生を終える。
俺はそうすることにした。
階下には使用人がずらりと並んでいた。
その中を俺はアンジェの色を纏った衣装でアンジェをエスコートして歩いた。
「行ってらっしゃいませ。ラファエル様とアンジェリーナ様」
セバスの合図で全員頭を下げてくれた。
「行ってくる」
「行ってきます」
俺はアンジェを馬車に乗せるとその前の席に座った。
「えっ、ラフィーは私の横に座ってよ」
アンジェが不満そうに言いだしたが、俺はアンジェの保護者なのだ。横に座る訳にはいかない。
それに早くアンジェの誤解を解かないと。
「昔、ラフィーによく、『王女と白馬の騎士の物語』読んでもらっていたの覚えている?」
俺の記憶にはあまりなかった。
「どうかな」
「私その時の『あなたと一緒の苗字になりたい』っていう王女の台詞がとても好きだったの。物語で白馬の騎士は王女の我が儘を聞いてくれるのよ。二人が幸せになれるところが私はとても好きだった。さっき、私がそういった時にラフィーが『色々問題はありますが、考えてみますよ』って前向きな返事してくれてとても嬉しかったわ」
夢見るようにアンジェが言い出してくれたんだが……
「いや、それは姫様」
俺はここで訂正すべきだと思った。
「私小さい時からずっと言っていたじゃない。将来はラフィーのお嫁さんになりたいって」
その言葉は確かに俺の記憶の中にあった。
「ラフィーは『大人になったらまた考えも変わりますから』と言って誤魔化してくれていたけれど、私今でもその考えは変わらないわ。だからラフィーが前向きに考えてくれるって言ってくれた今、とても嬉しいの」
やっぱりセバスの言うように完全に誤解している。
「いや、姫様実はチュ」
俺が言い訳しようとしたその口をアンジェの唇が塞いで防いでくれたのだ。
「……!」
ええええ! アンジェにキスされている。
これは絶対に親愛のキスじゃない!
俺の頭はまたまたパニックになってしまった。








