王女にプロポーズされたのに全く気付きませんでした
「皆さん、皆さんの頑張りでこの学園始まって以来、初めて最下位のEクラスが平均点数でD組に勝ちました。これは皆さんの頑張りのお陰です。本当におめでとう」
ホームルームでマイヤーはとても喜んで皆を褒めてくれた。
いつもは半数位が赤点持ちになって補講に出なければいけないのが今年は10人にも満たないそうだ。
マイヤーが喜ぶのもよく判る。
それとなく俺とアンジェの方を見てくれた。
俺とアンジェがいるので色々と苦労が絶えない一学期だったと思う。
そんなマイヤーも俺もアンジェが赤点取らずにほっとしたのは事実だ。
クラスの皆は喜んで大騒ぎしたかったが、取りあえず、今夜のサマーパーティーで騒ごうを合い言葉に、準備があるので慌てて家に帰っていった。
俺もアンジェと屋敷に戻ることにした。
「姫様。全科目赤点回避おめでとうございます」
馬車に乗り込むや俺はアンジェを褒めた。
「有難う、ラフィー。それもこれもラフィーのお陰よ。本当にありがとう」
アンジェが改めて俺に頭を下げてきた。
「いや、当然の事をしたまでです。そう言えば、ご褒美の俺への希望ってなんですか?」
俺は聞いてみた。
まあ、アンジェは大したことは望まないと思うけれど、想像だにしていないことだと準備に時間がかかるかもしれない。
俺は少し身構えて聞く姿勢を取ると
「えっ、ああ、私がお願いしたいこと? それはね……」
アンジェが少し言うかいうまいか少し戸惑っているみたいだった。
「えっ、どうされました。口にしにくいことですか?」
俺も戸惑った。
普通はダンジョンに潜りたいとかどこどこの店に行きたいとか、あるいは他の国に行きたいとかすぐに出てくるかと思ったんだが……
少し赤くなって下を見ているなんだが……
「あのね……」
自分の手を握りながら言うかいうまいか考えている。
アンジェの顔を見たが、アンジェは目をそらしてくれた。
「そんなに大変なことなんですか?」
「私にとってはとても大変なことなのよ」
「姫様にとって大変という事は俺にとっても大変なことなのですよね!」
「そうなの。頭ごなしに駄目って言わないでね」
今度は俺を下から覗き込んでくれた。
「余程危険なことだったら判りませんが、頭ごなしには駄目だとは言わないようにします」
「約束よ」
アンジェは俺の小指と小指を結んでくれた。
「あのね。私の苗字をサンティーニにしてほしいの!」
アンジェが真っ赤になって頼んで来てくれた。
「えっ?」
俺はすぐにはその意味がわからなかった。
それって俺の養子になりたいって事か?
別にそれは構わないけれど、帝国の皇太子の第一皇子に嫁ぐにはフランクのままの方が良いと思うけれど……
でも、頭ごなしに断るのは止めてほしいと言われてしまったし……
「駄目?」
下から俺の顔を覗き込んでくれるんだが、その顔がとても可愛かった。
さすが俺のアンジェだ。
本来はもうそう言うアンジェを家に閉じ込めておきたいほど可愛く感じた。
いかん、いかん、そんな事を考えては。
アンジェは俺の娘だ。そう娘なのだ。
「いや、別に駄目という事は無いですが……」
「じゃあ、良いの?」
「色々問題はありますが、考えてみますよ」
俺は頷いたのだ。
「有難う、ラフイー!」
そう言うとアンジェは俺に抱きついてきた。
俺はそのアンジェを軽く抱きしめていた。
学年で70位になったのだ。少し位甘やかしても良いだろう。
俺の本当の娘になれるのがそんなに嬉しいんだろうか?
チュッ
とアンジェは今度は俺の唇にキスしてきたんだが……
うーん、父と娘のキスか?
「嬉しい、ラフィー、有難う」
そのまま手を俺の指に絡めてくれた。
なんか父と娘というよりも恋人同士のような気がするのは俺だけか?
元々ボデイタッチが多かったアンジェだけど、更にそれが最近酷くなったような気がした。
俺達は屋敷に戻るとすぐに食事をして、まずアンジェが風呂に入った。
「セバス、アンジェとの養子縁組するのは可能かな」
俺は待ち時間で執事に尋ねてみた。
「はい? アンジェリーナ様をラファエル様のお子様になさるのですか? 奥様になさるのではなくて?」
俺はそのセバスの言葉に飲んでいた紅茶を噴きだしていた。
「な、なんでアンジェを俺の妻にするんだ! アンジェはアンヌの娘だぞ」
「別に誰の娘でも妻には出来ます」
慌てた俺の言葉にセバスは淡々と応えてくれた。
「いや、小さい時から俺が手塩にかけて育ててきたんだぞ」
「だから妻にしてはいけないという法律はございませんよ。東洋では小さい時から自分好みに少女を育てて妻にするという大ヒット物語もある位です」
「しかし、40以上離れているではないか」
「そんなの王侯貴族では当たり前ではありませんか? 辺境伯令嬢様も最近良く釣書が送られてくる令嬢方も皆様40位離れていらっしゃいます」
「はっ? 釣書? そんなのは知らないが」
俺は驚いた。
「ご興味おありにないと思いましたので、倉庫にしまってありますが、お持ちしましょうか? 段ボール箱4箱位になりますが」
セバスは平然と答えてくれた。
「いや、良い」
俺は目眩がした。
本来ならば喜ぶべき事かもしれないが、40も離れた妻を持つのもどうかと思うのだ。
「俺の事は後回しだ。取りあえず、アンジェからはサンティーニの苗字がほしいと言われたのだ」
俺はセバスに説明した。
それを聞いてセバスが頭を抱えてくれたんだが、周りの侍女達も頭を押えているし……
「どうした、セバス、やはり王女殿下を養子にするのはおかしいのか」
「あのう、ラファエル様、おそらくアンジェリーナ様は婉曲にあなた様の妻になりたいとおっしゃられたのです」
「はい?」
俺はセバスの言うことがとっさに理解できなかった。
「いや、しかし、アンジェを育ててきたのは俺だぞ。その俺と結婚したいなど言う訳は無いだろう?」
俺は理解できなかった。
「アンジェリーナ様のあなた様を見られる視線は保護者に対するものというよりも、恋する乙女のそれですよ。というか、そのアンジェリーナ様に対してなんとお答えになられたのですか?」
そう言えばあの後喜んでいたし俺にキスしてきた。
あれはそういう事なのか?
俺は頭が回らなくなった。
「いや、善処すると答えたが……」
「お受けになられたのですな」
セバスが言ってくれたのだが、いや、ちょっと待て、それはその……
俺はその瞬間、頭の中が真っ白になってしまったのだった。








