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8.王女をおぶって、食べさせて、抱き付かれて眠りました

 俺は黒こげになった男達の懐から金目の物を取り上げた。


「ちょっと、ラフィー、何しているのよ? 盗賊からの盗みも一応犯罪よ」

 アンジェが、強盗達を一人で退治した張本人が注意してくれたが、こうなったら背に腹は代えられない。

「姫様、一応帝国までは旅しないといけないんですから、先立つものは必要ですよ」

 俺はそう言うと、アンジェの攻撃で半壊した馬車から俺の荷物を取り出した。

 ダニエルの命で襲われたのだ。

 帝国に用意された住居も使えないと思った方が良いだろう。

 まあ、いざとなったら、帝国内の知り合いに金を借りれば良いとは思うが、借りは出来たら少ない方が良いはずだ。


 いざとなればアンジェを婚約者の皇太子の第一皇子に預ければ良いとは思うが、確か、この新年度から聖女がこの学園に通うはずだ。

 それがどう転ぶか判らない。

 第一皇子と聖女との仲を邪魔して、第一皇子とアンジェの仲をいかにうまく取り持つかが俺の役目だ。

 出来たら、聖女と第一皇子の接触を出来る限り無くしたい。

 そのためには入学式から出来るだけ色々と動かないといけないのだ。

 金策している時間はない。

 元金は多い方が良かった。


 俺は出来る限り金目の物をかき集めて、ザックのなかに入れた。


 そこからはアンジェと二人で、山沿いに帝国の国境に向かった。


「二人でお出かけなんて、久しぶりね」

 アンジェは最初は自分の父親や王妃についてぶつぶつ文句を言っていたが、途中から何故か機嫌が良くなった。


 こんなおっさんといるよりも若い奴と一緒の方が余程楽しいと思うのだが、俺にダニエルの替わりに父親を見ているんだろうか?

 それだけ俺の前の宿主のラファエルがちゃんとアンジェの面倒を見てきたという事だろう。


 俺なんて女の子の扱いなんて碌に出来ないのに、アンジェの面倒を見て良いのかと思わないでもなかったが、亡くなったラファエルの代わりに俺が面倒を見ないといけないとは思ってはいた。


 まあ、前の宿主のラファエルが亡くなったかどうかは判らないが……今もって出てこないということはそういう事だろう。


 ラファエルに成り代わった俺が付いていながら、アンジェを婚約破棄なんてさせる訳にはいかないし、修道院送りにして魔王にさせるなんてとんでもなかった。


 そもそも第一皇子もこんなに可愛いアンジェを見て無碍にはしないだろう。

 俺が後20年も若かったら絶対にアンジェに首ったけになったであろうことは確実だった。


 まあ、確かに聖女も可愛かったが、親の欲目を差し引いてもアンジェの方が可愛いはずだ。


「ラフィー、疲れた?」

 歩いていたらアンジェに言われた。

 そう言うアンジェも可愛い。


「そろそろ休憩にするか?」

 俺が聞くと

「おんぶ!」

「えっ?」


 おいおいいくつのつもりだよ。

 俺は呆れたが、昨日俺のベッドに潜り込んできたのも16歳の淑女の行動ではなかった。 


 礼儀作法に煩いマイヤーがいなくなって好き勝手にしていると言うよりは、少しショックを受けて幼児化しているのかもしれない。

 まあ、俺がマイヤーの代わりをすることは出来ないが、アンジェを甘えさせることは出来る。


「少しだけですよ」

 俺がザックを前に担ぎ直して、背をアンジェに向けると

「ヤッター!」

 そう言って、アンジェが俺の背に乗ってきた。

 まあ、アンジェは女の子だから軽いはずだ。


「はあはあはあはあ」

 でも、30分も背負うとさすがの俺も疲れた。


「えっ、もう疲れたの? 昔はずっと背負っていても問題なかったのに」

 少し、アンジェがむくれてくれた。


「少し待ってくれ。昔はもっと軽かっただろう!」

「まあ、ラフィーは私が重くなったと言うの!」

 俺の言葉にアンジェがこの世の終わりみたいな顔でショックを受けているんだが……女性には体重の話は禁句だったか?

 でも、何て答えれば良かった?


 五歳の時ならば何時間でも背負えたが、流石に16才の女性を長い間背負うなんて無理だ。

 完全に体が慣れれば出来るかもしれないが……いや、ザックも重いから無理だ。

 下手したらアンジェ二人分を背負っている状況なのだ。


 でも、この状況はどうしたらよい?


 結局俺は、その日の夜の食事を丸々アンジェに食べさせることになったのだ。

「ラフィー、そのお肉が欲しい」 

「はいはい」

「あーん!」

 俺がフォークに突き刺した肉をアンジェの口元に持っていくとパクリとアンジェが食べてくれた。


「美味しい!」

 そう微笑むアンジェは天使だった。 

 若い女の子に食べさせなんてしたことのなかった俺がこんなことをして良いのか?

 と思わないでもなかったが……

 アンジェをいらないって第一皇子のぼけが言ったなら、別にアンジェをやる必要なんてないんじゃないかと思わないでもなかった。

 そんなことを考えながら俺はかいがいしくアンジェの給仕をした。


 そうしながらアンジェがドンドン幼児化しているみたいになのだが、これでいいのか?

 と思わないでもなかったが……


 その日も野宿した。

 アンジェは当然のように俺に抱き付いてきてくれた。


「姫様、学園に行かれるようになった姫様が俺に抱き付くのはさすがにどうかと……」

 俺が遠回しに注意すると、

「ラフィー、酷い。こんな寂しいところで私に一人で寝ろというの?」

 アンジェにそう言われたら俺はそれ以上何も言えなかった。


 マイヤーが知ったら絶対に俺も許さなかったと思う。

 まあ、マイヤーが戻ってくることはないから良いのだが……


 俺はまたしても抱き付いてきたアンジェのことが気になって眠れない状態になってしまった。


 アンジェがさっさと親離れしてくれて、第一王子と上手くいってくれれば良いがとこの時は俺は心の底から願っていた。


 

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