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9.辺境伯令嬢を助けましたが、荷物から盗品が出て来てしまいました

 そして、翌日の夕方に俺達は国境に着いた。


 ここを通りさえすれば帝国だ。


 しかし、帝国に入る前に、フランク王国の国境の関所を通らないといけない。


 ダニエルの送り込んだ刺客を壊滅させてしまったから、王女のアンジェがいても無事にフランク王国の国境の関所を通れる自信はなかった。


 まあ、帝国に入れば最悪なんとでもなるとは思うのだが、王国の関所を通るのに頑張って変装しても身分証明書が必要だし、偽の身分証をすぐに手に入れる当てもなかった。


 仕方がないから俺とアンジェは関所のない、国境の山間部を通ることにした。

 関所近くにある森を五キロほど東に入った。


「ようし、ここから行ってみよう」

 俺は抜けられそうな所を選んだつもりだった。

 しかし、俺の選んだところは少し行くと下草と木々が密集していて藪漕ぎが大変になった。


 木を手で退けて、なんとか抜けようとするが、ちょっと油断すると、


 バシッ

「痛い!」

 木が反発して跳ね返って顔を打つ。


「申し訳ありません。姫様。通るルートを間違えました」

「ううん。私達を襲ってきたお父様達が悪いのよ。もう絶対に許さないんだから」

 アンジェはこんなルートを俺が選んだのもダニエルが悪いと決めつけてくれたけれど、ルートファインディングに失敗したのは俺だ。

 アンジェのきれいな顔にも木の擦り傷が所々出来て、俺は申し訳ない気持ちになった。


 まあ、あのぼけなすが俺を襲わせなかったら、こんな目に遭わなかったのは事実だが……


「キャーーーー!」

 女性の悲鳴が聞こえた。


「姫様!」

「ラフィー!」

 俺達は駆け出した。

 もう藪漕ぎもくそもない。

 一気に剣で邪魔な木を切り払い、強引に藪を突き抜ける。

 藪を抜けると広い道に出た。


 そこでは盗賊に襲われている貴族の馬車があった。


 馬車の周りには騎士が二人、既に切り伏せられていた。一台の馬車を守る騎士も二人しかいずに、それに20人くらいの盗賊が襲いかかっていた。


「姫様、馬車に当てないように雷撃を」

 俺はそう叫ぶと、

「ウォォォォォォ!」

 わざと大きな叫び声で注目を受けるようにして斬り込んだ。


「何だ?」

 その声に驚いてこちらを振り向いた盗賊達にアンジェが雷撃を仕掛けた。


「「ギャーーーーー!」」

 半数の盗賊がアンジェの雷撃を受けて黒焦げになる。

 ピクピク震えて倒れた。


「ドリャー」

 俺はこちらに向かってきた盗賊の一人目に斬りかかった。

「ギャー!」

 男の右肩から斬り捨てて、二人目は真横からなぎ払った。

「ギャッ」

 二人の男は吹っ飛んでいた。


 あと一人は今度は馬車を守っていた騎士が斬り捨てていた。


「やばい!、逃げろ!」

 残った男達は慌てて逃げ出そうとした。

 俺達に背を向けて必死に駆け出す。


 でも、それが墓穴を掘った。


「甘いわ!」

 俺達を避ける必要がなくなったアンジェが手加減なしに雷撃を放っていた。


「「「ギャーーーー!」」」

 生き残った盗賊達も黒焦げになって倒れていた。




「私はハンニバル辺境伯が娘、クラーラと申します。助けて頂いて有難うございました」

 馬車の中から令嬢が現れて礼を言ってくれた。

「私はアンジェ、彼がラフィー。私達は冒険者なの。たまたま通りかかっただけだから、気にされなくても良いですよ」

 アンジェが打ち合わせ通り、偽名というかニックネームで誤魔化した。

 まあ、いずれはばれるとは思うが、ばれないに越したことはない。


「そうですか。でも、あれだけの働きをされるということはさぞ名の通った冒険者の方なのですね」

 年配の護衛が大きく頷いてくれた。

「しかし、ラフィー様と申されましたか? どこかでお会いしたことがおありでしたか?」

 男が尋ねてきた。ハンニバル辺境伯は昔会った記憶があった。とても元気な騎士団長だった。今はもう年で騎士団長はしていないと思うが……その配下にいた男だろうか?


「あなた様は?」

「これは申し遅れました。今はクラーラ様の護衛騎士の取り纏めをしておりますローマンと申します」

 男が自己紹介をしてくれた。


「他人のそら似ではないですか?」

「まあ、さようかもしれませんな」

冷や汗をかいた俺の言葉にローマンは首を振りながら頷いてくれた。


なんとか誤魔化せたかと俺はほっとした。


そのまま近くの騎士団の所に報告に行くとのことで、当事者という事で国境の駐屯所までそのまま連れて行かれてしまった。時間がないので出来たら急いで王都に向かいたかったが、状況の報告のために是非ともとローマンに頼まれて断り切れなかったのだ。


そんな俺達が騎士団の駐屯所に入って事情聴取された。


「ハンニバル辺境伯令嬢のお話しはよく判りました。ところでそちらのお二方は帝国にお住まいなのですか?」

事情聴取していた国境の騎士団の駐屯地の目の鋭い男が尋ねてきた。


「いや、俺達は旅の冒険者だ。元々はフランク王国出身だ」

俺は誤魔化した。


「フランク王国ですか?」

男の目が一瞬光った。


「昨日はどちらに宿を取られていたのです?」

「なんだ、えらく突っかかってくるんだな。俺達はそちらのお嬢さんを助けたんだぞ」

少しむっとした俺は少し強気で話してみた。


「そう言われても、こちらも仕事なんでね。確認しなくてはいけないんだ」

取り調べ口調で男が聞いてきた。


「すみませんが、この方々は私の命の恩人です。そういう言い方は困ります」

辺境伯の令嬢も少し機嫌を損ねたようだ。フォローしてくれようとした。


「辺境伯令嬢。今は最近国境の関所を通らずにやってくる密入国者が多いのですよ。皇宮からも取り締まりを強化するように言われていまして」

 令嬢に言われても男達はびくともしなかった。

 帝国の騎士達はきちんと教育されているらしい。


「ラフィーさんとアンジェさんでしたか? 荷物を見せて頂けますか?」

「荷物か、別に構わないが」

「ちょっとお待ちください。我が辺境伯家の恩人にそんな事までするというのは」

「お嬢様、ここは騎士達にお任せした方が、良いかと。お二方も何やら曰くありげな様子ですが、ここはきちんとお話しされた方が身のためですぞ」

令嬢が文句を言ってくれたが、その護衛騎士のローマンは俺達を密入国者だと疑っているみたいだった。

俺が断る前に係官が俺の荷物を調べだした。


「隊長。この男の荷物の中から盗品が出て来ました」

 係官の言葉に俺は頭を抑えた。

 そう言えば盗賊から金目の物を奪ってきたのだ。

 その中に盗品があったのだろう。


「どういう事か、説明してもらおうか」

 騎士の目がぎろりと光った。

 俺は絶対絶命のピンチに立たされたのを知ったのだ。

ピンチに立たされたラフィー達の運命やいかに?

続きをお楽しみに

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