10.騎士に訊問されていたら旧知の辺境伯が駆けつけてくれて助けてくれました
騎士達が奥から出てきた。
俺達はあっと言う間に囲まれてしまった。
まあ、今回は俺も帝国の騎士達に喧嘩を売るつもりはなかった。
「いやあ、フランク王国内で盗賊を退治したんだが、そいつらが持っていた物だ」
俺は正直に白状した。
「お前、盗賊が持っていたって、それを盗ってくれば立派な窃盗罪になるだろうが!」
騎士は至極当然のことを言ってくれた。
「やはりそうなるのか? バルトは元々盗品なんだから盗賊から取ったら盗賊を倒した者が使っていいと言って、使っていたぞ」
「バルトって誰だ? そのようなどこの馬の骨ともわからん者の言うことを聞くなんてお前は馬鹿か?」
騎士が言い出した。
「いや、バルトはお前の所の皇帝なんだが……」
そう、魔王退治の旅の途中で盗賊に教われたことがあって、簡単に撃退したのだが、その時にバルトが盗賊どもから金品を巻き上げて使った時の言い訳の言葉だった。
「高弟ってお前の剣術道場の兄弟子か何かか?」
騎士は俺が言っている言葉が理解できなかったみたいだ。
理解してもらっても仕方が無いかもしれないが……
「まあ、取りあえず、お前らはここで拘束する」
騎士が宣言した。
「いや、少し待ってくれ。俺は別に拘束されても構わんが、アンジェは困る」
「何言っているのよ。ラフィー。ラフィーが捕まるなら私も捕まるわ」
俺の言葉にアンジェが反対しだしたんだが……
いやいや、待った。
学園始まる前に第一皇子の婚約者が窃盗で捕まったら、ゲームが始まる前に婚約破棄が決定してしまうではないか!
それは絶対に避けないといけなかった。
これは不味い、どうしたら良いだろう? 俺の記憶から言うと皇帝は俺に好意的だったと思う。最悪バルトの名前を出せば何とかなるとは思っていたが、同じ国のダニエルですら変わったのだ。
バルトもどう変わっているか解らなかった。
「クラーラ、大丈夫だったか!」
そこに、頭は白髪に変わっていたが、よく見知った顔の大男が飛び込んできた。
グスタフ騎士団長だ。
確か、ハンニバル辺境伯だったと思う。
「お爺様!」
駆け寄ったクラーラが、
「あちらのお方に助けられたのですが、騎士達から窃盗の疑いをかけられていて……」
クラーラが俺達を指してくれた。
「窃盗の疑いか、それは良くないな」
グスタフはそう言うと俺を見て目を見開いた。
「なんとラファエル様ではありませんか!」
グスタフは俺のことを覚えていたみたいだ。
「辺境伯様はこの男をご存じで?」
騎士が慌てて確認していた。
「何を申しておる。こちらのお方は剣聖ラファエル・サンティーニ様だぞ。そんなことも知らんのか!」
知ってて当然と言う顔でグスタフが言ってくれるが、もう大分前の話だし、今では知っている人間などほとんどいないだろう。
「剣聖ラファエル様ってひょっとして、あの魔王を倒された」
しかし、俺を尋問していた騎士はお目の名前を覚えているみたいだった。
「そうだ。この世界の恩人だ」
「も、申し訳ありませんでした」
俺の周りにいた騎士達が慌てて一斉に俺の前に跪いてくれたんだが……
「いや、そのようにかしこまらなくてもいいんだが」
「いえ、剣聖ラファエル様のお陰でこの世は平和になったと聞いております。そのお方にあらぬ疑いをかけてしまって申し訳ありません」
騎士達は平身低頭してくれたのだが……
「そうじゃ。ラファエル様が魔王を倒さなかったら、今もなおこの世界は魔王に怯えて暮らしていないといけなかったのだ。ここにいるもの半分はここにいなかったであろうよ。そんなあなた様対して、丁重になりすぎることはないですぞ」
「いや、グスタフ殿、大袈裟すぎます。魔王を倒せたのはバルトやダニエルやアンヌが頑張ってくれただけで」
俺はグスタフの言葉に首を振った。記憶を辿ると、たまたま俺が魔王のとどめを刺しただけだ。凄いのは俺の周りにいた者達だった。
「何をおっしゃっているのです。陛下はいつもおっしゃっていますぞ。最後の魔王の威圧で陛下もフランク国王陛下も動けなくなった所を、ラファエル様一人が勇猛果敢に魔王に斬りかかって、魔王を倒されたと」
「あの時は無我夢中だったんですよ。魔王はバルトとダニエルを警戒していたから、俺はダークホースだったんです」
俺はグスタフの言葉に首を振った。
「そうご謙遜なさるな。能ある者は爪を隠すとはよく言ったものです。陛下はいまだに俺達がこうして生きていられるのはラファエル様がいらっしゃったからだとおっしゃっていらっしゃいますよ」
「バルト様とおっしゃるのは我が皇帝陛下の事でしたか」
グスタフの言葉に俺を尋問していた騎士は更に青くなっていた。
「剣聖ラファエル様が魔王を倒していただけなかったら、この世界は魔王に全て支配されていたと聞いております。そんなお方にあのような態度をとってしまい誠に申し訳ありませんでした」
騎士達がほとんど平伏してくれているのだが……
「いや、騎士殿はちゃんと任務を遂行していただけでしょう。盗賊どもから失敬してきたのは事実です。出来たらそれを全てお返しするので、盗まれた方にお返し頂けたら有り難い」
「それで忘れて頂けるのでしたらいくらでも」
騎士達はにこやかに頷いてくれた。
俺はアンジェが窃盗で捕まるなんて事にならなくてほっとした。
少し行程も遅れているので、これで帝都に急げると俺は思ったのだが、その後に「是非とも手合わせしてくれ」と頼まれて、結局国境の地でその日は泊まることになってしまったのだった……




