11.辺境伯に帝都まで送ってもらいました
翌朝、俺は頭が痛かった。
昨日飲み過ぎたのだ。
前世の俺自身は酒はあまり飲まなかったのだが、今世のラフィーは酒豪だったみたいで、騎士達との手合わせの後でグスタフ始め皆に飲まされたのだ。
前世の俺の体が今世の体についていけなかったのか、アンジェの守役になってからラフィーはあまり酒を飲んでいなかったので弱くなったのか判らなかったが、何しろ二日酔いで凄まじい頭痛がした。
「もう、ラフィーは飲み過ぎよ!」
頭を抱える俺を見て朝からアンジェの機嫌も悪い。
あの後、アンジェをグスタフに紹介したら、
「あの聖女様と魔術師様の娘御ですか」
感慨深げにグスタフはアンジェを見て、その後俺を哀れむように見てくれたんだが、何故だ?
出来たらアンジェを帝国の学園に入学させるので早く帝都に行きたいと希望を述べると、助けたクラーラも今年から新入生だというではないか。
「孫娘も入学式には間に合わせるように行かせますから、問題はないでしょう」
とグスタフは言いだしてくれた。
でも、留学生のアンジェは一週間前にクラス分けの試験を受けなくてはいけないと聞いていた。
「ラファエル様。学園の学園長は儂が昔助けたことがありましてな。多少は無理を通せますから、前日に着けば問題ないですよ」
そうグスタフに笑って言われてしまった。
豪快に笑うグスタフを見て、まだ心配そうな顔をしていると、
「心配めさるな。儂も責任取って一緒に学園までお供しましょう。それなら問題はございませんよね」
何故かグスタフが一緒に学園まで来てくれることになってしまった。
そこまでしてくれると言われたら、俺としても受けるしかなくて、騎士達相手に汗を流しすしかなかった。
「ラファエル様、参ります!」
「トゥリャー!」
「まだまだ!」
「さすが剣聖様は違いますな」
帝国の騎士達は俺を現役の剣聖としてとても尊重してくれるので、俺としても相手をしていてとても気持ちよかった。
「ラフィー頑張って!」
「ラファエル様、凄いです!」
そんな俺をアンジェとクラーラが黄色い声で声援を送ってくれた。
今までは俺に声援を送ってくれる女なんて、アンジェだけだったから、他の女の子に応援されて俺もまだまだ現役で頑張れると自信に繋がった。
俺が訓練の合間に一息つくと
「ラファエル様、これをどうぞ」
クラーラがタオルを持ってきてくれた。
「あっ、ありがとう」
考えたら侍女以外にタオルを渡されるなんて初めてだった。
そう言えば前世のスポーツアニメで運動終わった後に、主人公が女の子にタオルを差し出されるシーンがあった。俺はタオルを受け取りながらまさか自分がそのようなことをされるなんて思ってもいなかった。
そんな俺をアンジェが睨み付けているような気がしたが、俺は感激していてそれどころではなかった。
騎士達は一緒に飲んでいてもとても気持ちよかった。
皆が「ラファエル様」「ラファエル様」と慕ってくれていろんな話を聞きたがるのでつい過ごしてしまった。
それで飲み過ぎたのもあるのだが……
結局馬車も無くしてしまった俺達は、グスタフの馬車で帝都まで連れて行ってもらえることになった。
金をほとんど持ち合わせていない俺は後で返すからとグスタフの世話になることにしたのだが、
「何をおっしゃるのです。ラファエル様。我々が昔あなた様に受けた恩は山のように高いのです。私も辺境伯、ここは全部出させていただきます」
辺境伯はそう言ってくれたのだが、さすがに全部出してもらうのは悪いというと、
「孫娘を助けて頂いたお礼だと思って頂ければ問題ないでしょう」
そう押し切られてしまった。
「まあ、その代わりと言っては何ですが、道中少し騎士達と手合わせをして頂けたら言うことはないのです……」
そう言われれば、宿代やら馬車代やらをグスタフに世話になっている俺としては何も言えず、道中で泊まる大きな街ではその町の騎士達と手合わせをして夜は飲むしかなかった。俺を知る昔の騎士もたまにいてそいつらとは昔の事を大いに語って楽しかった。
それに辺境伯の娘と一緒に旅することで、俺はアンジェの友達候補が一人見つかってほっとした。
ゲームでは何人もの取り巻き令嬢達と一緒に帝国の学園に入学するはずだったのだが、今回はフランク王国からの新入生はどうやらアンジェだけみたいだった。
グスタフの孫娘ならそのアンジェの友人になってくれるだろう。
俺は期待したのだが、何故か馬車の中の二人はあまり仲が良いようには見えなかった。
「ラファエル様。この街ではこのクッキーが美味しいと有名なのです」
クラーラは街で寄ったスタンドで買ったクッキーを差し出してくれた。
「あ、そうか、じゃあ頂こうか」
俺はクラーラがせっかく出してくれたので一つつまんでみた。
「美味しいな、これは」
俺が素直な感想を言うと、
「そうでしょう。家族もこのクッキーが好きで、お爺様もここのクッキーだけはよく食べられるのです」
「ああ、ここのクッキーは帝都の『菜の花亭』のクッキーを思い出すのです」
「ああ、あの店か。甘すぎず程よい甘さが良いな」
俺は思い出していた。
「おの店は姫様のお母様もお好きでしたよ」
俺がアンジェに教えるも、
「ふんっ」
アンジェは何故かご機嫌斜めだった。
反抗期なんだろうか?
俺は漠然とそう思っていたのだ。
俺達が帝都に着いたのは、辺境伯の言う通り丁度入学式の前日だった。
お待たせしました。
やっと帝都に到着
ここから学園です。




