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12.学園長に無理言って入試を受けさせてもらって、この年で学園に合格しました



 俺達はそのまま辺境伯の馬車で学園に向かった。

 学園は由緒正しき古い学園みたいで、門のフェンスには蔦が絡みついていた。


 建物は木造で壁には漆喰が塗られていて色あせたそれは相当古そうだった。


「ラファエル様。ここまでご一緒出来てとても楽しかったです。また、よろしくお願いします」

 降り立った俺達に向かって馬車の中からクラーラ嬢が挨拶してくれた。

 クラーラ嬢はもう組み分けのテストも終わっているとのことでここまでだ。

 彼女は本当に礼儀正しい良い令嬢だ。

 最近はフランク王国でいい加減に引退しろとか、年老いた役立たずじじいとか、王妃やシャルロットやその取り巻き達に散々馬鹿にされていた俺は、クラーラ嬢がとても素晴らしい令嬢に見えた。


 まあ辺境伯令嬢なのだから当然なのだが……


「いや、ここまでとても世話になった」

 俺は令嬢を見送った。



 しかし、アンジェと仲良くしてくれたら良いなと思った俺の思惑は外れて、二人は何故かあまり仲良くなかった。

 あんなによい子なのに何故なんだろう?


「痛い!」

 俺がそう思って馬車を見送っていると思いっきりすねを思いっきり蹴り飛ばされていた。

「な、何をするんですか?」

 俺が蹴ってくれたアンジェを見ると、

「ふんっ!」

 といってさっさと前を歩いて行ってくれた。


「剣聖殿も中々大変ですな」

 その横でグスタフが笑ってくれたが、蹴られた俺は笑い事ではなかった。



「これはこれは、辺境伯様、ようこそお出で頂きました」

 学園長室に通された俺達を学園長が迎えてくれた。


「いやあ、学園長。久しぶりだな。明日から娘がお世話になるがよろしく頼むよ」

「お任せ下さい。さすが辺境伯様のお嬢様ですな。クラス分けのテストもとても優秀でしたぞ。ところでそちらの方々は」

 学園長は俺とアンジェを不思議そうに見てきた。


「その方もこちらのお方は存じ上げているだろう。剣聖ラファエル・サンティーニ様だ」

「おお、魔王を倒された剣聖様ではありませんか。お目にかかれて光栄です」

 グスタフの紹介に学園長が俺に手を差し出してくれた。

「こちらこそ。お世話になる」

 俺も学園長の手を握り返した。


「それでそちらのお嬢様は?」

「こちらはフランク王国の第一王女殿下のアンジェリーナ様だ」

 俺が紹介すると学園長の目が見開いた。

「一週間前に到着してほしいとお願いしておりましたのに、いらっしゃらなかったので、もういらっしゃらないかと思っておりました」

 学園長が急に冷たくなったのだが、

「いやあ、学園長。それは儂が剣聖殿を連れ回して遅くなったのだ。なんとかならんか」

「そうおっしゃられても……」

 グスタフは鷹揚に学園長に頼んでいたが、学園長は腕を組んで考え込んでいた。


「閣下、少し宜しいですか?」

 そう言うと学園長は部屋の隅にグスタフを連れて行ったのだ。


 俺はこれはまずいのではないかと思いだした。

 グスタフの言うことを聞いてきたが、グスタフは元騎士団長だ。これが騎士学校ならなんとでもなったと思うが、学園は基本はアカデミックな事を学ぶところで、剣術も魔術もあるが基本は座学だ。脳筋のグスタフの口利きも限界があるのではないだろうか?


「いや、しかし学園長。相手は第一皇子殿下の婚約者様ですぞ」

「しかし、皇子殿下からも来ないのならば仕方が無いだろうとのお言葉を頂いてまして」

「そこをなんとかしてもらいたい……」

 扉の向こうから少し揉めている声が聞こえてきた。


「姫様、申し訳ありません。中々難しいかもしれませんな」

 俺が青くなっていると

「本当よ。ラフィーが遊んでいたから入れないかもしれないわ」

「いや、本当に申し訳ありません」

 俺がアンジェに謝ると、

「えっ、別に冗談よ。私としてはラフィーと二人で冒険者になっても良いと思っているから」

 そう言ってアンジェは屈託なく笑ってくれたが、そういう訳にも行かない。


 俺は学園に入ってアンジェと第一皇子の仲を取り持たないといけないのだ。

 ここでアンジェが学園にさえ通えないとなると、アンジェがいつ魔王になるか判ったものではなかった。

 それに俺は(前の宿主が)アンヌからアンジェの将来を託されたのだ。

 それをかなえてやりたかった。


 いざとなったらバルトに直訴しようと俺は心に決めたのだ。


「仕方ありませんな」

 学園長の声とともに、二人は戻ってきた。


「辺境伯様のお顔を立てて今回だけ特別に再テストをさせていただきます。アンジェリーナさんも今後は学園の規則に従って下さいね」

「はい、判りました」

 学園長の声にアンジェは殊勝に頷いてくれた。


「それで学園長。俺もその試験を受けさせてもらいたいのだが」

「はい? 剣聖様が何故試験を」

 学園長はキョトンとした顔で俺を見てくれた。


「実は俺は平民出でこの年まで学問というものを志したことがなかったんです。そこで一度しっかりと勉強したいと思ったのですが」

「し、しかし、剣聖様ほどの方が今更学問など」

 学園長が躊躇してくれたが……


「学園の規則では年齢制限はなかったはずです。それに初代皇帝陛下は身分年齢如何に関わらず学びたいものには門戸を解放せよとおっしゃったじゃないですか」

「それはそうですが……」

 俺は強引に頼み込んでなんとか試験を受けさせてもらったのだ。


「最低点数に達していなかったらいかに剣聖様でも入学は認められませんよ」

 学園長に念押しされてしまった。




 そして、2時間耐久テストが始まった。

 俺にはクラス分けのテストが入試問題を兼ねることになってしまった。


 最初は簡単な計算問題だ。


 前世日本人の俺にはお茶の子さいさいだぜ。


 3桁の足し算引き算かけ算割り算、分数の計算まであった。

 その後の応用問題は旅人算とか鶴亀算とかの応用問題も出て来たがなんとか出来たはずだ。

 地理も魔王退治の為に世界各地を旅して歩いた俺には楽勝だった。

 帝国内の領地もある程度は頭に入っていた。

 理科は多少は苦戦したが、なんとか合格点は獲得出来た自信はあった。



 その後採点後に、俺は何故か青くなって頭を抱えた学園長に合格を告げられたのだった。

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