悪役令嬢視点 私の騎士と私が出来ているとか言う嘘の噂を聖女に流されて、とても迷惑しました
定期テストに向けた、赤点回避の勉強はなんとか順調に進んでいた。
ラフィーが判りやすくこの帝国の歴史を教えてくれて、大まかな流れを頭に入れてくれたからだいぶましになった。
最初は前皇帝陛下の治世についてだが、ラフィーは前皇帝陛下との接点もあったみたいで、陛下の治世について、面白おかしく教えてくれた。
前皇帝陛下は魔王軍の勢力が大きくなって、その戦いとの歴史でもあった。
魔王軍との戦いでは現皇帝陛下やラフィー、私の両親の話もよく出て来た。
まあ教科書には出ていないのだが、カンネイの戦いでは現皇帝陛下がお腹を壊していて全然働かなかったとか、トンポイの戦いではその戦いの前に方針について私のお父様と皇帝陛下が喧嘩して二人の仲を取り持つのが大変だったとか、雑談の余計な知識だけが増えたけれど……
「ラフィー様が教えて頂けた方が余程覚えやすいですわ」
ヒルデがいっていたけれど、ラフィーに教えられたら、帝国の皇帝や我が父のフランク国王の権威も何もあったものではないから、絶対に施政者にとっては教えてほしくないはずだと思った。
現陛下はあれだけ弱みを握られていたら、それは子爵位くらいでラフィーが黙ってくれるなら安い物だと思ったはずだ。そんなラフィーに何も与えていないうちの父はケチすぎるとさすがの私も思った。
最近はエーベルと私にいつも突っかかってくれる聖女のミーナも私の傍に出てこなくなって、私はラフィーとの勉強に没頭出来ていた。とても良い事だった。
それにあれからは邸宅や馬車の中で私はお礼のキスといってラフィーにキスしまくっていた。
「本当に父娘でキスなんてしているのか?」
ラフィーは半信半疑だった。父娘で唇通しのキスなんてするわけ無いじゃない!
私はあの父親となんて絶対にキスしたくない。愛しのラフィーだから、キスするのよ!
でも、ラフィーとキスするのが当たり前になってくると、なんか違うと思うんだけど……
今度はディープキスでもしてみようかと、私は次の段階に進もうと思っていた時だ。
トイレに入った時に、外で話し声が聞こえた。相手は私が個室に入っていると気付いていないみたいだったけど……
「ねえ、ねえ、聞いた。悪役令嬢と老いらくの騎士の恋の話を」
「ああ、あの年老いたラフィーとかいう老騎士と王女の恋でしょ」
「本当に信じられないわ」
「何でも馬車の中とか二人でいちゃいちゃしているそうよ」
「悪役令嬢もエーベル様に相手にされないからって、あんな年老いた騎士と出来るなんて、本当に浅ましいわ」
その言葉にプッツン切れた私は思わず雷撃を放ちそうになっていた。
別にラフィーとうわさされるのは良いのよ。それは、大いに噂をしてほしかった。
私はラフィーの奥さんになりたいし、それは噂になっても良い。
でも、老いらくの恋って何よ!
ラフィーは凛々しいし、強くて、格好良いのよ! そんじょそこらの騎士よりも余程強いのに! 何しろ世界最強の騎士なんだから!
老騎士とか言われたらよぼよぼの騎士を思い出すけど、ラフィーの筋肉もめちゃくちゃ固くて触っていて気持ち良いんだから。ラフィーの腕枕は最高なのに!
エーベルなんてお子ちゃまなんて、私からしたら全く惹かれないんだけど……
と言うか、比較以前の問題よ。
何しろラフィーと一緒にいたら、絶対的な安心感があるんだから。
一人の男として付き合うなら、絶対にラフィーよ。
エーベルなんて魔物が出てきたら私を置いて逃げる未来しか見えないけど、ラフィーは絶対に私を護ってくれるもの。
それは今回の赤竜の時にもはっきりと再度理解したのよ。
ラフィーのどこが老いたる騎士なのよ?
そんなこと言う愚か者は私がこの世界から消してやるわ!
私は叫びたかった。
私が出ていこうとした時だ。
「ちょっと、貴方達、ラフィー様を老いた騎士って言っているのが聞こえたんだけど、それは我がハンニバル辺境伯家を敵に回す話だと理解しているのかしら?」
聞きたくもない女の声がしたけど……言っていることはまともよ。
「クラーラ様!」
「いえ、そのようなことは思っておりません」
「ならばそのようなことは話さないことね。我が辺境伯家はラフィー様にとても恩義があるのよ。私がラフィー様に嫁ぎたいと思っているくらいよ。噂を流すなら私とラフィー様にしてほしいわ。それと、貴方達、宜しいこと? ラフィー様は老いらくなんかじゃないわ。今も現役最強の騎士よ。間違わないで!」
クラーラが釘を刺していた。
女達は相手が悪いとすごすごと引き上げて行ったみたいだった。
クラーラもたまには良いことを言うわ。
私も感心したのだ。
でも、私とラフィーの噂は結構広がっているみたいだった。
「貴方はそれでも良いの?」
ハンネローレが聞いてきたけど、
「噂になるのは良いわ。ラフィーが、老騎士と言われるのがムカつくけど」
「そうよね。聖女がそう言う噂を流しているみたいよ。何でも貴方とエーベル様の間を割こうとしているみたいよ」
ハンネローレははっきりと教えてくれた。
ミーナは色々と暗躍しているらしい。
私はもう少し気をつけた方がよかったかもしれない。でも、私は別にラフィーとの噂が広がった方が却って好都合だと思ってほっておいたのよ。
ラフィーがしてくれた模擬テストのあとに私はお手洗いに行ったのよ。
私を見て、ささやく女達がいたから、また、老いらくの恋とか噂しているの?
と私は気にも止めなかったのよ。
それが失敗だった。
何をしたか、わからないけど、個室の扉がいきなり開かなくなったのよ。
こんなの、雷撃したら一撃だけど……また、マイヤーに怒られるかもしれないと私は躊躇したわ。
それよりは探しに来てくれたラフィーに助けられる方が格好良いかもと思ってしまったのよ。
案の定私を心配したラフィーが、飛んできてくれた。
でも、ラフィーが、入った途端に今度は灯りまで消えてしまったわ。
「きゃっ」
私は思わず声を上げてしまった。
昔雷で部屋の灯りが消えたときもラフィーはすぐに飛んできてくれた。
今回も、「少し離れていろ」
ラフィーはそう言うと、一瞬で開かなくなった扉を強引に開けてくれた。
さすがラフィーよ。
私がおずおずと手を伸ばすと、あっという間に捕まえてくれて、その胸の中に抱き込んでくれたのよ。
やっぱり、ラフィーが一番だわ。
もう私の相手はラフィーしか考えられなかったわ。
私は暗がりの中でラフィーの胸にギュッとしがみついていた。
ラフィーの胸の中は本当に安心できた。この状態がいつまでも続けば良いのに!
私が下らないことを考えたからだろうか?
扉が開いたら、聖女と取り巻きが私とラフィーが逢い引きしていたと叫び出してくれた。
そのさきには聖女の腰巾着のカンタローネが、怒髪天でたっていたんだけど。
聖女達は私とラフィーが、放課後のトイレで逢い引きしていたとか叫んでくれたけど、なんでトイレなんかで逢い引きなんてしなくちゃいけないのよ!
貴方とエーベルじゃあるまいし!
私達はやるなら、家でやるわよ!
余程私はそう叫びたかった。
ヒルデとニコとイレーネが、今まで勉強会していて、トイレにアンジェが閉じ込められたと聖女の取り巻きが呼びに来てラフィーが飛んでいった経緯をちゃんと説明してくれたわ。
「でも、私が見たときはアンジェリーナさんが、ラファエルさんに抱きついていたわ」
とミーナが言い出してくれたけど普通は真っ暗な中に放り出されたら、傍に気の合う男がいたら抱きつくわよ! ラフィーは私の騎士なんだから!
何の問題があるのよ!
私はそう叫びたかった。
結局、一時間くらい何故かカンタローネに怒られていたけれど、やっと解放してくれたときは疲れきっていたので今日はそのまま帰ることになったのよ。
せっかく良い感じで勉強できていたのに! 聖女が余計な事したから時間が無駄になったじゃない!
でも、聖女達は今度は、私が婚約者がいるのにラフィーとの間が怪しいとか、二人は出来ているとかいう噂を一気に流してくれたのよ!
本当にムカつくわ。
その噂が事実なら何も言わないけれど、私とラフィーは本当に何もないのよ。何しろラフィーは私の事を自分の娘くらいにしか思っていないんだから。
いっそのことラフィーが私を襲ってくれたら既成事実で責任取ってもらうのに!
その事実もないのに私とラフィーの間に変な噂を広げて私とラフィーの間を邪魔するのは止めてほしいんだけど……
辺境伯令嬢とかデリアとかエルネスタとかもその噂を否定してくれるけれど、彼女らはラフィーを狙っているんだから、完全に当てには出来ないのよね。
結局私とラフィーの噂は完全になくならなかったんだけど、テストの赤点回避だけはなんとかなりそうになったわ。




