助けた王女は俺に抱きついて離れなくなりました
俺はアンジェに襲いかかった赤竜を怒りのあまり、瞬殺していた。
アンジェに恐怖心を感じさせた爬虫類をただで許せる訳はなかった。
許されるのならば分子の段階まで分解して灰にしてやりたかった。
そこまではできなかったが、まあ、首を落としたのだからそれで良いだろう。
「大丈夫か、アンジェ!」
俺は倒れ込んでいるアンジェに駆け寄った。
「ラフィー、怖かったよう」
泣きながらアンジェは俺に抱きついてきた。
「今まで変な態度取ってご免なさい」
そう言って謝るとさめざめと泣き出したのだ。
俺に抱きつきながら……
「もう大丈夫だから」
俺はアンジェの背中を、幼子に接するようにポンポン叩きながら、アンジェを抱きしめた。
「もう、我が儘言わないからずっと傍にいて」
涙目でそう言われたら俺は頷くしかなかった。
「大丈夫だ。ずっとアンジェの傍にいるから」
「本当に?」
心配そうにアンジェは俺を見上げてきた。
「俺が今までアンジェに嘘を言ったことがあるか? この帝国の学園まで一緒に来ているんだから、ついて来いと言われればどこまでもついていくから。心配するな!」
そう言うと俺はアンジェを抱きしめていた。
抱き締めたアンジェの体はとてもかぼそかった。
俺は俺の胸の中にいるアンジェを思わずかきだいていた。
アンジェは俺の胸に顔を埋めつつ赤くなっていた。
「本当に? 私を見捨てたりしない?」
もう一度心配そうに上目遣いにアンジェは聞いてくるのだが、絶対にこれは犯則だ。
もうかわいすぎて俺は再度思いっきりアンジェを抱きしめていた。
「絶対に見捨てたりしないから」
「約束よ」
「ああ」
ぎゅっと俺の胸の所の服を掴むアンジェを俺は力一杯抱きしめていた……
俺はここが学園主催の行事の一環で周りにいた連中が赤面してこちらを見ているという事をすっかり忘れていた。
「いやあ、さすが剣聖殿は違いますな」
その後で少したってから飛んで来た騎士団の連中は倒された竜を見て俺を褒めてくれた。
「まあ、まだ剣の腕はさびていなかったって事だな」
俺は苦笑いをした。
「ううん。ラフィーは私を護って戦ってくれたのよ。とても格好良かったわ」
俺の左手の上にちょこんと抱き上げられているアンジェが俺に抱きつきながら言ってくれた。
「殿下の護衛騎士という訳ですな」
騎士達はそれを見て苦笑いしてくれた。
「ところで姫様。いつまで抱き上げていないといけないんですか? そろそろ大丈夫でしょう」
俺もさすがに周りの目が気になって言うと
「やだ。まだ歩けない」
アンジェは首を振ってくれた。
あの後アンジェに竜が怖くて腰砕けになっていて歩けないと言われて、そのまま抱き上げたら降りてくれなくなったのだ。アンジェの反応が16歳というよりは、幼児化して下ろそうとすると駄々をこね出してくれたんだが……
「ラフィー様、ご無事で何よりです」
「赤竜を退治されたとか素晴らしいですわ」
広場に帰ってきた俺達をハンネローレ達が出迎えてくれた。
「まあ、まだまだ現役だと証明できたかな」
俺は肩をすくめた。
「もう、アンジェ、いつまでラフィー様の腕の上にいるつもりよ。そろそろ集合の時間よ」
イレーネが文句を言って来たが、
「だってラフィーは私の騎士だからね。誰にも渡さないんだから」
アンジェはそう言うと俺の顔に抱きついて離してくれないんだが……さすがにこれはまずいだろう。
「まあ、なんか小さい子供みたいに抱っこされている令嬢がいらっしゃるんですけど。幼年学校の生徒が迷い込んできたのかしら」
そこにピンク頭のキンキン声が聞こえた。
ピンク頭は相変わらずエーベルの腕にこれ見よがしに胸を押しつけていた。
「ふんっ、ラフィーはこの中でも一番強いんだから、私みたいに軽いと軽々と抱き上げてくれるのよ」
アンジェはミーナを見下ろして言ってくれた。いつもは胸がでかいとか言って怒るんだが、今日は余裕で流してくれていた。
まあ、あと30分くらいは問題ないが、さすがの俺も丸一日アンジェを抱き上げているのは無理だ。
「ふん。そんなのふしだらに見えるから普通の淑女はしないわよ」
「よく言うわね。貴方は私と比べて重いから現実的に無理なのよ」
「な、なんですって!」
アンジェの言葉にミーナは切れていた。
「エーベルは絶対に出来ないと思うわよ」
アンジェが更に言い切ってくれた。
「な、なんだと! 俺はそのようなことははしたないからしないだけで……」
「力がないからでしょ。出来ないからって下手な言い訳は良いわ」
アンジェはエーベルを見下していた。
「おのれ、アンジェリーナ。よくも言ったな!」
「そうよ。私も軽いからエーベル様はすぐにやってくれるわよ」
エーベルはミーナを抱き上げようとしてくれたが、片手で抱き上げるには、実際に力もいるしこつもあるのだ。
体幹のしっかりしていないエーベルでは無理だ。
でも俺が止めたところで止めないだろう。
「よし、ミーナ、いくぞ」
「はい、エーベル様」
エーベルは腕に力を入れてミーナを持ち上げようとしてくれたが、
「えっ?」
「キャッ!」
途中でバランスを崩してミーナを載せたまま、盛大に転けてくれた。
ミーナのスカートがめくり上げられて足が露わになった。
「やっぱり、エーベルでは無理だったでしょう。その点ラフイーは最強よ」
アンジェが自慢してくれた。
「く、悔しい」
「何事ですか? ミーナさん。スカートがめくれ上っていますよ」
地団駄踏んで悔しがっていたミーナはマイヤーに注意されて慌てた。
「ヒィーーーー」
「ギャッ」
慌ててミーナは足をスカートで隠した拍子にエーベルの頭を蹴飛ばしていた。
エーベルが顔を押える。
「アンジェリーナさん。いい加減にラファエルさんの腕の上から降りなさい」
怒り心頭のマイヤーを前にしてさすがのアンジェも渋々俺の腕から降りてくれた。
ただ、俺にぴったりくっついているのは同じてで、俺の服の裾をしっかり掴んでくれていた。
「では班長は点呼を取って報告して下さい」
それを見てマイヤーは呆れていたが、諦めて班長に指示をしていた。
それからも帰る馬車はラフィーと一緒じゃないと嫌だとかラフイーの横でなきゃ嫌だとか、アンジェは目一杯我が儘モード満載だったのだ……








