聖女視点 悪役令嬢をやるために最終打ち合わせを暗部の者達と行いました
「な、何故エーベル様が悪役令嬢と一緒にいるのよ!」
私は思わず叫びそうになって、ガーベラに口を塞がれた。
そう、エーベル様が私に隠れて、アンジェリーナに接触した瞬間を遠くから見て、私は切れてしまったのだ。
そんな馬鹿な!
「なんとも変った味だが、食べようと思えば食べられるな」
その上、その亜悪役令嬢が作った料理を食べて美味しいと言ってくれたのよ、エーベル様が!
「許されないわ。エーベル様が私に隠れて悪役令嬢に会って、その作った料理を褒めるなんて!」
私が作った料理は一口口をつけただけで止めたのに……なんで悪役令嬢の作った料理は食べられるのよ!
私にはもう許せなかった。
「いや、あれは褒めていないと思いますけれど」
三年C組の教会から派遣された私の取り巻きの一人ガーベラが私を庇ってくれたけれど、私の時は一口しか食べなかったのに、二口も食べているじゃない!
前世私は料理なんて殆どやったことはなかった。
飯は男に奢らせるものだし、餅田とかいう人の良いキモオタ爺からも奢ってもらっていた。
でも、一年生のダンジョン探索で自分でご飯を作らなければいけないと知って唖然とした。
何で貴族の皆がご飯なんて作るのよ!
あり得なかったわ。
教会でも聖女様の私は他の侍女達に作らせて食べるだけだ。
この国の聖女はそれでなくてもやることは多いのよ。
教会に援助してくれる貴族の食事会や、パーティーに出て愛想を振りまかないといけないし、未来の皇后になるのだから、当然多くの貴族が私と交友を求めてきたわ。
ご飯作る練習なんてする暇はなかったわよ!
仕方なしに一年の時は肉を焼いてみた。
半焼けだったけれど、火が通っていたら良いのよ。
「まあ、食べようと思ったら食べられるな」
エーベル様はそう言って食べてくれた。
私はほっとしたのだ。
二年の時は宰相の息子で何でも器用なユリウスが作ってくれた。
私はほっとした。
でも、今年はユリウスは別の班になってしまったのだ。
だから今年は私も大聖堂のコックから一週間かけて誰でも作れるシチュウの作り方を教えてもらったのよ!
「聖女様。これでなんとか出来るはずです」
大量の食材を無駄にした後にやっと食べるに足りるシチューが出来たのよ。
でも、旅の途中でメモをなくしてしまって記憶を頼りに作ったら、全然別のものが出来てしまった。
ヨーゼフとかは必死に食べてくれたが、エーベル様は一口食べて、
「ミーナ、今日は体調が悪いのか? 少し味が変だよ。明日に備えてもう休んだ方が良い」
と体よくベッドに追いやられてしまった。
私は教会の暗部と会う都合上良いから私も喜んでテントに入ったのよ。
そして、別クラスのガーベラと一緒に暗部のいる森に行こうとして、一年E組の横を通る時に目撃してしまったのだ。
エーベル様もエーベル様よ。何も私を追いやって悪役令嬢の所にくるなんて!
信じられなかった。
私とエーベル様は真実の愛で結ばれているのに!
私とエーベル様は赤い糸で結ばれているのに、その周りの祖父の皇帝とか父の皇太子がどうしても老騎士のことを気にしているらしい。
悪役令嬢も無駄なあがきをさっさと辞めれば良いのに!
あの悪役令嬢のしぶといことと言ったら無いわ。
でも、悪役令嬢もこれで終わりよ。
私ももう我慢の限界よ。
私に逆らったらどうなるか思い知れば良いわ。
でも、その時はあなたの終わりの時だからもう後悔しても遅いけれど……
私は聖騎士に守られて暗部のいる森の奥に入った。
森はうっそうと木々が茂っていて、いかにも魔物が出てきそうだった。
「ここから50キロ先に翼竜がいると言われています。普段はここまで飛んでくる事は無いのですが、この竜を呼ぶ笛によって呼ぶことが出来るのです」
暗部の男は誇らしく説明してくれた。
「丁度、老騎士と悪役令嬢は別の班です。上手く、悪役令嬢の班だけになった時に竜を呼び寄せられたら言うことはありません」
「これで確実に悪役令嬢はやれるわね」
私はほっとした。
婚約者が死ねば、エーベル様も皇帝も皇太子も諦めてくれるだろう。
ゲームではダンジョン探索で私が魔物に襲われたところをエーベル様が庇って助けてくれるイベントがあるのよ。エーベル様は魔物は倒すが、私を庇った拍子に魔物に傷つけられて、エーベル様はその場で倒れてしまうの。
でも、そのエーベル様を私が癒し魔術で治して、更に私とエーベル様の真実の愛が確固たる物になるのよ。
その裏側のダンジョン外でライバルの悪役令嬢が竜に襲われていなくなれば言うことは無いわ。
まあ、私を苦しめた悪役令嬢が竜に食い殺されるのをその場で見られないのが残念だけど……
「これで私とエーベル様の真実の愛が完結するのね」
「左様でございますな」
私は暗部と聖騎士達と共に高らかに笑ったのだった。




