安全なはずのダンジョンの外でゴブリンに襲われました
「えっ!」
俺は翌日朝早くに全班長が集合して渡された班ごとの探索ルートを見て唖然とした。
一年生の探索はクラスごとになると思ったのに、クラスが五等分されてバラバラなルートに振り分けられていた。アンジェは北ルート、ニコが北東ルート、オスカー東ルート、俺が南ルートでヒルデが西ルートだった。
アンジェの班はと俺の班とは全くの正反対ルートになっているんだが……
「先生、これは……」
俺は思わずマイヤー先生に文句を言いそうになった。
「そこの方、クラスは戦える力を考えて、平等に5方面に分けました。何か問題はありますか?」
文句を言いそうな俺をめざとく見つけた聖女が俺を睨んできた。
「北に不穏の予感がするので、出来たら俺の班も北に回して頂けたらありがたいのですが……」
反論は許さないという聖女に対して、俺は無視してそう主張した。
「不穏の影とは何ですか?」
ぎょっとした顔をして学園長が俺を見てくれた。
「俺の勘です」
「それはアンジェリーナさんと一緒にいたいというあなたの希望でしょう。一人の自分勝手な意見を認めるわけにはいきませんわ」
聖女が絶対に認めないと拒否してくれたけれど……
「ほおおおお、聖女殿は私の勘を疑われると」
俺はニコリと笑ってみた。
「勘などそんな非合理的な」
聖女は何故か俺の視線に少し青くなっていたが、あくまでも主張してくれた。
「いや、剣聖殿がそう言われるなら、少しは考慮した方が良いのではないか」
しかし、なんとエーベルが俺の勘を気にしてくれた。
剣聖の一言は力があるみたいだ。そうそう、そこで認めてくれ!
俺は前のめりになったが、
「でも、班の移動を今からするのは大変ですよ」
「組み直すとなると確かに大変だ」
「じゃあ、アンジェリーナさんの班と剣聖殿の班を交代させるか?」
皆の戸惑いの中、エーベルの横にいたヨーナスの声に俺は唖然とした。
それじゃ、意味がないではないか!
「多少のことなら私一人で対処できるからラフィーは必要はないわ」
アンジェがむっとして言いだしてくれた。
未だにアンジェは根に持っているみたいだ。
これも全てバルトが悪い。余計な事を言うから!
まあ、基本は何もないとは思うが、ゲームでは確かダンジョン内も安全と言われていたのに、オーガが突如現れて聖女に襲いかかるのだ。それを助けるエーベルは聖女を庇って傷つくが、それを聖女が癒やし魔術をかけて助けて、二人の仲は更に進展するというイベントだった。
安全と祝われていても何が出るかわかった物ではなかった。百%の安全なんてない。
俺もアンジェと代わりたいわけではない。アンジェの傍にいてもし何かがあれば、すぐに駆けつけたいだけだ。
本来は同じ班なら良かったのに!
俺は舌打ちしたくなった。
こうなったら最後の手だ。
「じゃあ、ニコの班と交代させてください」
「えっ?」
ニコが突然自分の名前を出されて驚いていた。ニコの班はアンジェの隣の北東コースだ。何かあればすぐに助けに行ける距離のはずだ。
「それは」
「何かあった時にここならすぐに駆けつけられますし、問題ないかと」
「そんな、勝手な都合で代えるなど」
聖女が文句を言いそうだったが
「剣聖殿の勘は鋭いですからな」
学園長もそこは認めてくれているみたいだ。
「何もなければ無かったで問題は無いですし、ニコラウスさんと交代しても問題は無いでしょう」
マイヤー先生も頷いてくれた。
「でも……」
聖女は最後まで反対したそうだったが、
「何か問題があるのですか、ミーナさん」
「いえ、皆さんがそれで良いのならば良いです」
聖女はマイヤーに睨まれてしぶしぶ折れていた。
でも、聖女の態度が少しおかしいことにもっと注意すべきだった。
ニコは少し不満そうだったが、後で稽古をつけてやると言って強引に交代を認めさせた。
「では一時間後に出発するぞ」
エーベルの合図で班長は各自全員自分の班の所に帰って行った。
そして、1時間経った。
運動着に着替えた俺達は班ごとに集まっていた。
「まあ、ラファエル様がご一緒ですの」
B組の副委員長のデリアが歓声を上げてくれた。
「まあ、本当ですわ」
C組の副委員長のエルネスタまでいるのだが……
まあ、物見遊山のダンジョン探検だから良いかと最初は俺も思っていたのだ。
入った森は結構うっそうと木々が生えていた。
「ラフィー様」
「ちょっと、あなたたち別の班でしょ。ラフィー様に寄りすぎよ」
ハンネローレ達が俺とデリアの間に入ってくれた。
歩き出して1時間距離で四キロほど歩いたところだ。
ボディタッチしてくるデリア達とそれを防ぐハンネローレ達の間で争いが起こる。
でも、俺はそれ以前に、気になることがあった。
なんか先ほどから不吉な予感がするのだ。
首の後ろがチリチリする。
「全員、戦闘配置!」
俺は剣を構えた。
「えっ、本当ですか」
慌てて我が班の女達はひとかたまりになる。
「キャー」
俺の剣を見て驚いた女達が転ける。
でも、俺はそれどころでは無かった。
森の中からいきなり石槍を構えたゴブリンが現れたのだ。
俺に向かってついてきたそれを躱して俺は剣を一閃した。
ゴブリンの首が飛んでいく。
「「キャーーーー」」
それを見ていたデリア達の悲鳴が森の中に響いたのだった。




