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荷馬車の移動に皆大変な目に遭いました

 ダンジョン探索当日がやってきた。


 俺達一年E組は五台の馬車に分乗した。馬車は平民が良く使う幌付きの荷馬車だ。これで片道五時間かかる。近いと言っても移動だけで大変だ。荷馬車の移動は俺は昔から慣れていたから問題ないが、スプリングがきいているわけでもなく、床も硬いし、慣れないものには大変だろう。

 家からクッション持参が必須だった。


「キャー、ラフィー様と一緒の馬車で嬉しいです!」

「本当に!」

「皆でカードゲームでもしませんか?」

「あ、それ良いわ」

 最初は喜んでいたハンネローレたちだった。


 が、数時間経った時にはもうぐったりしていた。


「ラフィー様、お尻が痛いです」

「後どれくらいですか?」

「もう死にそうです!」

 荷馬車の揺れに最初は何故か俺に抱き付いてきていたハンネローレ達だったが、今は流石にその元気もなくてぐったりしている。


「よし、最後の休憩だ。あと1時間で着くぞ」

 俺は皆に宣言した。


「ええええ! まだ1時間もあるんですか?」

「そんな!」

「お尻が痛くてもうだめ!」

「もう死にます!」

 ハンネローレ達はもう息も絶え絶えだった。


「それもあと1時間で終わりだ。休憩時間は少しは地面に降りた方が良いんじゃないか?」

「あっ、待ってください」

「私もおります」

 なんとかふらふらして覚束ない班員を手伝って全員降ろす。

「ありがとうございます」

「良かった。やっと揺れていない地面よ」

 ハンネローレ達は降りた途端に地面にへたり込んでいた。


 休憩場所はとある村の外れにある広場だ。

 ダンジョンに向かう馬車は大体ここに止まって休憩するみたいで、たくさんの馬車が止まっていた。

 それ目当ての屋台などもたくさん出ていた。


 隣の馬車はアンジェの馬車だった。


「はい、皆、シャキッとして」 

 元気なのはアンジェだけみたいで、後の皆は死んでいた。

「なんで、他国の王族のアンジェだけが元気なの?」

 イレーネも死にそうな顔をしていた。

 イレーネは侍女とはいえ、平民の中では恵まれた存在らしい。

 平民は移動に荷馬車を使うと俺は思っていたのだが、この学園にいる生徒達は平民でも商会の会頭の娘とか王宮の文官の息子とか娘で、結構裕福な家の者が多いらしい。

 家にはまともな馬車を所持しているらしい。

 その子らに荷馬車での移動を経験させるのもこのダンジョン探索の一環だと俺は悟った。


「何でって、王宮から抜け出す時は荷馬車をよく使ったし、ラフィーとダンジョンに潜る時はいつも荷馬車だから」

 平然とアンジェが答えていた。

「うーん。私は平民なのに、王族のアンジェの方が平民慣れしている」

 イレーネ達はショックを受けていた。

「俺等ももっと耐えられるように鍛えます」

 モーリッツ等が情けなさそうな顔で答えていた。

「そうそう、経験するのは大切だ」

 俺は彼らを見た。

 将来この帝国を背負って行く若者達だ。もっと切磋琢磨して頑張ってほしい。

 何しろ彼らは俺がいなくなった後もアンジェを支えてくれるのだから。


 休憩所に教師達は揃っていたが、皆少しげんなりしていた。

 教師の馬車は普通の馬車なのだが、それでも長時間乗るのは疲れるらしい。


「ラファエルさん。どうかしましたか? 皆は大丈夫?」

 俺を見つけたマイヤーが尋ねてきた。

「いえ、何もないですよ。皆は取りあえずなんとか大丈夫ですね。多くは馬車酔いも酷いようですが」

「あの子らは荷馬車ですものね。よく耐えられますわ」

 珍しくカンタローネ先生が俺に反発するでもなく話してきた。

「まあ、良い経験にはなると思いますよ」

 俺は頷いたが、

「荷馬車に乗る訓練なんて二度とすることはないのだから要らないと思うのですけど」

 カンタローネはぶつぶつ文句を言っていた。

「カンタローネ先生。これは初代の学園長が決められたことですから仕方がありませんよ」

「判っておりますわ」

 学園長に指摘されてカンタローネ先生は諦めていた。

 先生らも荷馬車にすれば良いのに!


 俺はそう思ったが、懸命にも黙っていた。後でバルトに話しておこうと思ったのは秘密だ。

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